スウィングガールズ余話。

音楽、特に吹奏楽ファンにはたまらない映画、スウィングガールズ
昨日の記事(id:Yuny:20040923)で、3か月ほどで演奏会のシーンをできるまでになったと書きました。
映画上では東北学生音楽祭の日程がハッキリしませんが、野球の試合のために準備開始したのが7月の夏休みはじめ、イノシシをやっつけたのが11月アタマ、10月の末、スーパーの前での演奏成功が秋、応募動画撮影が雪深い冬、と考えると、おそらく作中での練習期間も3か月というところ。しかし、夏の特訓にてある程度鳴るようになった、というのが重要です。

2004/09/25追記
id:sinfoniaさんより、映画館で確かめて来られたそうです。多謝!

  • 10/31(日)午後〜 松茸狩り
  • 2005_2/19(土)第20回東北学生音楽祭に出演


2004/09/26追記
同じくid:sinfoniaさんより、追加情報です。
>矢内監督の原作本では、音楽祭は12月
>私の見間違えで実は12月19日(日)という可能性も
ううむ! これがホントだとすると、かなり厳しいかもしれません!!


さて、この短期間でどこまでいけるのだろうか、というのを、関口香織役・本仮屋ユイカさんがマスターした楽器、トロンボーンに限定して考察してみます。自分がやっている楽器だからですが。基本的に作中事実に基づき、あのペースでの上達は可能なのか、という点での検証です。
中学時代の練習を思い出してみると、たしか、4月に入部して、8月のコンクールでマーチとクラシック1曲はこなしていました。
吹奏楽器は最初の3か月がもっとも伸びると思います。


まず、バズィング(唇を震わせること)やマウスピースが吹けるようになるまでですが、高校時代、N響の方からコツは『唇を閉じて、ブドウの種飛ばしの要領で「Pu!」と発音する』と習いました。スープを冷ます時のような勢いのある息ですね。
吹奏楽器は息が重要ですが、腹式呼吸についての基礎訓練を中村拓雄くん(平岡裕太さん)の指導でみっちりと受けていて、関口さんは肺活量が優れている、ということでした。基礎練習で、息の吐き出しや吸い込みを分けて行っていましたが、長時間の吐き出しには深い呼吸が必要なので、あれはなかなか有効な方法かも知れません。(私はああいったことはしませんでしたが)


呼吸に関しては、私は吸い込み2段・吐き1段、で練習していました。メトロノームテンポ60で、6拍吸って2拍止め、また6拍吸って2拍止め、最後に8拍で全部吐き出す、という練習でした。これをやると、限界ギリギリまで息を吸い込んだ状態が分かるようになります。いい音には余裕のある息の量が必要です。ともあれ、関口さんが特別に肺活量があったというより、最初から肺の使い方がうまかったのではないかと考えています。なお、映画パンフによると、本仮屋さん自身はあまり肺活量が続かず、苦労なさったとか。(最初は吐き出しが8秒持たなかった)


数日で音階をマスターしていましたが、性格が素直なこと、おそらく、練習熱心だったこと、なども考えあわせると、これはできない話ではありません。とりあえず音が出るくらいまでなら。(創作楽器の展覧会で手作りホルンを出したことがあります。大型なのでトロンボーンのマウスピースを使いましたが、お客さまの中には金管楽器が初めてなのに5分もしないでマウスピースが吹けた方もいらっしゃったので、コツがつかめてしまえば難しくないです)ただ、あのゆっくりとしたリズムでも、パート練習や曲ができるかとなると、ちょっと疑問が出て来なくはないですが……。
私の場合、BbからFのリップスラーができるようになったのって、中一の6月くらいだったような。


最初にやっていたのは、「A列車で行こう」ですね。スコアは未見ですが、おそらく中音のDくらいの音までは使うのですが、これが鳴るのには、早くても2か月位いるんじゃないかって気もします。ただ、早いヒトだと最初のうちから高音が鳴ったりするので、なんともいえません。曲として通せるようになるかどうかは疑問が残ります。


それから、9月くらい(?)に、アルバイトをしていますが、この時、パート譜に書き込みをするシーンがあります。初心者のうちは、楽譜へのポジション(指使い)書き込みは必須です。ただ、独特のへ音記号を読みこなせるまでには1年くらいはかかる気がしますね。おそらく、メロディーの流れを押さえるのが限度という所。しかし、楽器なしの時期に楽譜を研究しておけたのは、とても大切なことでしょう。あれだけ短期間で曲をマスターしたのには、この「楽器なしの状態での読み込み」も、大きな力になったはずです。


練習再開したのは、楽器を手に入れた11月のこと。
おそらく数学の小澤先生(竹中直人さん)は、自分が知らない分、教本などを使って、知識的な面を熱心に指導したのではないか、少なくとも、大量にある音源から、選りすぐりのトロンボニストの音を聴かせて教えたのではないか、という推測がつきます。見えは張っているし下手はできない、という性格ですから、おそらくヤマハトロンボーンの先生(谷啓さん)から、お勧めの本をその場で選んでもらったことでしょう。教室通いが中村君にバレるシーンで、ヤマハの1階から2階へ上がるところが写りますが、店内に教則本が沢山あったのは見逃せません。


こうして、音源で、また、知識で、音のイメージがハッキリしていると、上達の速度は確実に上がるものです。それに、関口さんが、信号機の音からスウィングを思い付くくらい、リズムセンスがあるヒトなので、スコアよりも音で教え込まれた方がいいはずです。信号機の曲を除けば、やった曲はスタンダードナンバーばかりなので、音源は腐るほどあったでしょうね。
ところで、信号機の曲はだれがアレンジしたのでしょうねえ。映画のためにアレンジャーさんが付いているのは知っていますが、そうじゃなくて、作中では。別料金でトロンボーンの先生がやったのかも。


音をイメージしながら音階練習をきっちりと重ねるのは重要です。今回、トロンボーンはハイBbまでは要求されていなかったと思うので、音域は3か月くらいでもト音記号下から2本目のFくらいまでは行けるから、問題は無いかと思います。で、スコアを読むというより、レコードで聴いた旋律通りにポジショニングをして曲をつないで行く、という形での読み込み、演奏は、練習次第で可能だと思いますね。そういえば、映画のバンフに、本仮屋さんのコメントで「しばらくしたらシングシングシングの最初のファとソとレが出た」というのがありました。アレくらいの音域は難しくないですね、たしかに。


さらに、クラシックではなくジャズであった、という所も重要。音を割ってしまって構わないし、微弱奏はあまりないし、多少ズレてもクラシックほどには目立たないジャンルだったりするので、(だから指揮者なしでも通せる)その辺も助け舟になっていたのではないかと思います。吹奏楽器では強奏より弱奏の方が難しいのです。


トロンボーンよりも疑問なのはトランペットの斉藤良江さん(貫地谷しほりさん)がやっていた、「シング・シング・シング」のハイBbです。作中、ネズミが出て来てびっくりした拍子にできるようになったのですが、これはどうでしょうねえ。物事は弾みでできてしまう(自転車に突然乗れるようになる、みたいな)ことがありますから、きっとそうだったんでしょうか。


さて、主人公はどこへ? になってしまっていますが、鈴木友子さん(上野樹里さん)が志したサックスはどうだったんだと。……正直、木管楽器は分かりません。とくにリード楽器は。(すみません!)
サックス経験者の方からコメントを頂ければうれしいです。


ということで、(夏の練習で、1週間でパート練習や下手ながらの通しが出来てしまったことのみ疑問があるものの)音源でしっかりとイメージを固めて、集中して練習すれば、できないペースではない、というのが私の結論です。
ポジショニングにさえ慣れれば、そんなに難しい楽器ではないんですよね、トロンボーンって。
詳しくははてなのキーワード『トロンボーン』も見てみて下さいね。では。