大エルミタージュ美術館展

東京都美術館で大エルミタージュ美術館展を見てきました。しばらくぶりに再会した友人とともに。
といっても、ちょっとした都合上、閉館間際の1時間になってしまいましたが。その分、作品を絞ってかえってじっくり見てくることができました。
さて、印象的だった作品を挙げてみます。言うまでもないことですが、私の主観で選んでいるので、セレクトが面白いかも、そうでもないかも。

  • ルノワール「扇子を持つ女」
    • 人物画でもっともぽや〜んってきた。このぽや〜んさって、やっぱり本物じゃないと分からないと思う。いいよなあ……この方は。扇子のグラデーションも印象的。非常に幻想的。言葉に書くことができないんで、是非、会期中に会場でご覧下さい!(24日まで!)
  • マリー・ローランサン「アルテミス」
    • キリッとした筆致に何とも言えない色合い。線の力、面の力に加えて、妙な剛(つよ)い色気がある気がする。なんだろう、オリジナル路線を行ってる者が、知らず知らずのうちに周りに与える空気みたいなもの。そういうのを色気と呼んで差し支えがないならば、本展で最も美人と言えるかも。
  • パスカル・アドルフ=ジャン・ダニャン=ブーヴレ「ルーヴル美術館の若い水彩画家」
    • 絵を描いている人の絵っていうシチュエーションがスゴく面白いですね。なんというのかな、一生懸命に描いている彼女のいじらしさにほだされてしまった感じ。自分も今、何かを一生懸命に探したり作ったりしているところなので、共感しました。この絵の彼女はもう120年以上前の人ですが、描くことに対して頑張ってる全ての人に、エールを送ってくれている気がします。ということで、画家・クリエーター志望の方は、この絵に元気をもらいに行ってみては?
  • フランソワ・フラマン「フォンテンブローの森でのナポレオン1世の狩り、1807年」
    • この絵、シチュエーションがどうだとかナポレオンのファンだとか絵画のタッチがいいからとか、そういう意味で選んだんじゃないです。絵の左手にいる、ナポレオンの部下の方が狩猟ホルンを吹いているから!(すいません、とことん吹奏楽好きかもしれない)このホルンがすっごく大きくて。一抱えもありそうな大きさのを、右手だけで掲げて後ろにベルを向けて吹いているんですよ。しかも馬の上で! 私、馬の上でトロンボーンは絶対吹けません。器用だなー。それに、当時の狩猟ホルンって、こうやって使ってたのねえと。狩猟ホルンファンの方、是非会場で……(しつこい?)。
  • レオポルド・シュルヴァージュ「風景」
    • なんとも摩訶不思議でCGっぽいんです。すっごく。ポストカードだと色合いが落ち着いてしまって残念。立体的な風合いがある本物はやっぱりスゴい。だまし絵じゃないんですけど、空間魔法みたいな感じです。
  • アンドレ・ドラン「水辺の家」
    • 線の使い方、面の使い方がキリッとしてるのに柔らかい不思議な絵。つかみどころのなさが印象的でした。夢の中で見る街とかって、こんな感じじゃないかなあって。
  • オスヴァルト・アヘンバッハ「ナポリ湾の花火」
    • 本展覧会を通してもっとも見入ってしまって離れ難かった作品はこれです! 湾岸の街で花火をしている絵なんですが、光の表現がノヴァ(超新星)の爆発を思わせる迫力で驚きました。光の部分自体は、絵の中で非常に小さな面積なんですが、それが故にかえって輝きがよく伝わって来るみごとなもので。会場のキャプション(うろ覚え)によれば、この花火を見て驚いて絵を描いたことが人生の転機と言うか、人生の開拓につながったらしいです。自分の人生を切り開く力に満ち満ちているのが、日本人の私にも良く分かりました。一番うれしかった絵です。


ピカソゴーギャンとかも来てくれていましたが、私はものすごく有名すぎる作家さんよりかは……。っていうか、ピカソゴーギャンのタッチがなんか好きになれないだけかもしれないですが(偉人だとかそういうことじゃなくて)。
でも、それぞれにいい物を残してくれてる。絵を描くこと、創ること。
絵は文化の記録であり、画家の感性の息吹であり。こういう風に時を越えて大切にされ続けた作品の陰で、埋もれてしまった作品が沢山あると思いますが、両方とも大切だと思います。
今、いろんな場所で、いろいろな手段で絵を描いている人たちがいると思いますが、その人たちの全てにエールを送りたいと思っています。どうか、自分だけの筆致を大切にして下さい。