「赤の神紋」読み直し

赤の神紋〈第13章〉Angelos Glow (コバルト文庫)

赤の神紋〈第13章〉Angelos Glow (コバルト文庫)

とりあえず、最新刊をリンク。
いい天気に誘われて洗濯等を終わらせたあと、改めてこの問題作をじっくり読み直して1日を過ごしました。
シゴトが始まったらゆっくり読書をする気持ちにもなれなくて。休日が1日多いだけでこれだけゆっくり出来ますか……。


それにしても、ティーンズ系文庫とはいえ、最近の作品は成人向けの小説にはない勢いと面白さ、ストーリーで引きつける作品も多いのです。この作家さんの作品は他には読んでいませんが*1作品を創り上げるということのドロドロさと神聖さを改めて教えてくれます。
まあ、演劇が必ずしもこういう葛藤から生まれているわけではないでしょうけれども。って、稽古方法の奇矯さは某ガラスのなんちゃらにも負けない感じです……あれ以上かも。「ガラかめ」の竹ギブスよりも「神紋」の噴水に飛び込んで野良犬のまねをする方が絶対大変だと思う*2


こういう演劇物の作品だとたいていあるオリジナルの劇中劇。観てみたくなりますね。「ガラかめ」なら「石の微笑」や「ふたりの王女」そして「忘れられた荒野」「紅天女」あたりが気になります。まあ、「紅天女」はお能になったので、以前観てきましたが。
「神紋」の場合はタイトルでもある「赤の神紋」そして「メデュウサ」という重要作品の他、「熱狂遺伝子」あたりもかなり面白そうで……。
作家さんとしても、面白そうな話の面白い部分だけを書いていいからきっと面白いんだろうなあ……。戯曲としての「ふたりの王女」や「メデュウサ」をいつか読んでみたい物です。


個人的に、モノを創っている友人が多い物で(幸いにも)、こういうふうにあがいてあがいて天を目指す、という感じじゃなくても、何かを追求するのであれば、一種の熱や狂気状態になるんじゃないか、という気がしています。
そういう人に限って、普段は穏やかだったり常識をわきまえていたりするんですよね。
逆に、そういうことで社会的な自己を保ち、自分の世界を護っていると言いますか。作中の劇作家も小説家も俳優さんも、みんなそれぞれなりに「狂気」を抱えているくせに、社会的な場面では常識的。
そういうギャップがある人間ほど、深みがあって面白いです。一番の魔物役者さんの好物がふ菓子で、しかもあんな緊迫した場面の小道具なんですからねえ……。


あと1冊で最終回*3らしいので、こわごわ待っています。
結局、自分自身にとって「表現すること」とはなんなのか、という苦悩から脱出するヒントにはなっても、当然ながら答えは自分で出すしかないのですな……。
ともあれ、読むと何か演劇の公演を見に行きたくなるような気がする小説でした。アクターっていいなあ。

*1:というよりも怖くて手を出せない、というのが正直なところ。某戦国ファンタジー小説とか……

*2:読むべきところはそこじゃない!

*3:多分……天に上がりながらもコントロール可能なハミル像ってヤツに目覚めて葛川くんの勝ちじゃないかなあ? で、連城と仲直りするとか