「IPAX2008」で、学生さんと経営者側がディスカッションしたらしい……んだけれども。

はてなブックマークでいろいろ突っ込まれていますが、「馬車馬のように働き」「泥のように眠る」ですよね、これ。ある意味で名言というか。企業側のコミュニケーション能力に多少疑問を感じました。
さて。大学を職場としている人間から見ると……今の学生がそんなにおかしいとは思えないのですよ。
むしろ、今の企業社会を作ってくれた(というか作ってしまったというか)側の方が、おかしいと思われることがたくさん世の中で起きています。偽装事件多発、自殺者の多さ、格差社会……国会も社会もどんどん歪んで行っているのが悲しい。
企業側は本当に、学生の「今」を見てくれていて、それでこのような発言の雰囲気になって行っているのでしょうか?


私は就職支援業務等には就いてはいません(1・2年生が中心のIT教育支援業務です)が、1年生のうちからしっかり勉強している学生さんは、今はかなり多いと思いますよ。学食に行くとノートを広げて勉強している人をちょくちょく見かけますし、日々の質問対応の中で、**をやってみたいけれどもそこにたどり着くところが分からないので教えて欲しい、というような前向きな雰囲気を感じています。
何をしたいのかも分からないから全部教えて、というような質問は少ない。無くはありませんが。


そういう雰囲気の中で仕事をしているので、この企業経営者の皆さんが描いている学生像がそもそも歪んでいるのではないか? という危惧を覚えました。あまりにも私自身の実感と離れ過ぎていて……。
これではいずれ社員になってくれる若い人たちと、経営する側とのギャップは激しくなるばかりではないでしょうか? それはお互いに不幸のような気がします。


まじめな話、一度、何日もかけて近隣の大学の学食でゆっくりお食事してみたり、大学近辺の書店でどんな本が売れているのか調べてみたりしてはいかがでしょうねえ。学生になったつもりで。自分の眼鏡で学生さんをちゃんと見てからお話ししていただきたい。
自分がやりたいことをしっかり探している人、もう見つけてしまって勉強や実践に励んでいる人……それぞれですが、みんなそれなりにしっかりやっているので、そんな学生さんたちに失礼ではないか、と思えて仕方がありませんでした。


IT系の仕事は、数年しっかりやっていれば独立も可能な場合もあります。建設的にしっかり取り組めば。そして職場の雰囲気や人との出会いに恵まれれば。ただ、そういう可能性の種が撒かれてすらいないのが、今の日本のIT企業のスタンダードなのでしょうか?
いずれにせよ、10年は馬車馬のように働くというのは、危険な発想です。ヒトの人間性や創造力を上からつぶしてしまうかもしれません。理不尽だと思います。そういう方が企業側にもしも多いとすれば……先が見えている気がしてなりませんでした。
変わらなくてはならないのは、むしろ企業側ではないですか?