昭和のにおい

この間の新幹線旅行のときに、新幹線で旅行するなら新幹線的な本を持参すべき……と思って買い、結局読み終わらず……。気になってはいたので最初から読み直しました。
新幹線、大阪万博、電話交換手、芸能プロ、スター、都会の砂漠、……。昭和の香りが漂う推理小説です。携帯電話が普及した現代では、本書のようなトリックそのものが成り立たないのですが……。今だけは昭和期へ。
ちょうど、食べるものに困らないという豊かさから、娯楽や快楽に困らない豊かさへと、「豊かさ」の定義が移り変わろうとしていた時代だったのだと思います。タイムマシンにでも乗ったつもりになれば、本書は非常に興味深いものでした。
時代に求められるがままにスターを生み続けた芸能プロ、いつしか、自分たちが時代に応えているのか、自分たちが時代を作っているのか、わからなくなっていってしまったのかもしれませんね。
本末転倒というか、事業が進んだがゆえに目的が分からなくなって企業体そのものが倒れてしまう、個人をも身をつぶしてしまう……ということであれば、現代でも現在進行形で多々の事件、問題が発生しています。
リーダーは、何を目指しているのかをきちんと末端まで提示すること。技術や権力におぼれないこと。これは時代が変わった平成の世でも、大切なことなんじゃないかと思います。