ヱヴァ・こころを歌う

ネタバレで……。「破」のとある演出が心からなかなか離れてくれなくて、くっついてくれちゃっているので。
映画を見ていないひとが、検索とかで万が一うちのダイアリーを開いちゃったらつまらなくなってしまうので、改行をたくさんいれておく。念のため。





























これくらい空ければいいかな。
後半の方で、とんでもない能力を持つ使徒が2種類出てくる。


ひとりめの使徒は、外国から送られて来た新しいエヴァに潜んでいた。まるでパソコンのトラブルのひとつ「トロイの木馬」のように、味方のように見せかけていて、実は、というパターンでシンジたちを襲って来たのだった。
新しいエヴァはちょうど使用テスト中。ある事情で自分のエヴァを休眠させておくことになったエヴァパイロットが志願して、使い勝手とか性能とかを調べてみようとしていたようだった。その実験走行(?)中のトラブルだった。
仕方がない、闘うしかない……ということで、シンジは命令を受けたものの、彼と同じ立場のパイロットが搭乗している。しかも彼女はクラスメイトでルームメイトで新しい友達だ。14歳の少年には酷な命令、当然、出来ようはずがない。
使徒に乗っ取られてしまったエヴァを止めるには、人間の子どもがパイロットでは無理な状態だった。そこで、司令部が下した判断は、心の動きに左右されずに機械的にシンジの乗っているエヴァを操縦できるシステムを起動し、機械にこの「使徒」(というかエヴァというか)を倒させることだった。


この戦闘シーン、使徒に乗っ取られてしまったエヴァとの戦いで、ある合唱曲が流れる。


シンジは「闘えるわけがないよ!」と抵抗し、機械的に作動させられたエヴァの操縦桿をめちゃくちゃに操作して「止まれ! 止まれ!」と呼びかけるが、いつもなら彼の意のままに動くエヴァが、今回は受け付けてくれない。
そんな残酷な戦いのシーンのBGMがある合唱曲、日本人なら誰でも小中学校で一度は歌っただろうあの曲なのだ。


戦闘に合唱曲を使う手法はもう一度対比的に使われている。


ふたりめの使徒、今作最後の使徒との闘いのとき。今度はエヴァが乗っ取られているというよりは、もうひとりのエヴァパイロット自身が使徒に、まるでコンピュータウイルスのように侵食されてしまう状況だった。違いはあるけれど、状況はかなり似ているといえる。
もう友達を失いたくないシンジは、今度こそ取り戻すために、彼自身の手でエヴァを操縦しての闘いを挑む。そして、彼女を取り返すために、奇跡を起こす……。
この闘いでも、BGMとしてまた違う合唱曲が使われているのである。


ひとりめの使徒との闘いでは、闘うことができなかったシンジが、ふたりめの使徒のときは自分なりの方法で闘い、そして、勝利を得た。
似た手法で闘いを挑んでくる相手に対して、1回めではダメだったけれど、2回めのときは。
非常に対比的なシーンだったのだ。



この二度の酷な戦闘で彼は急成長した。その成長の背景に、合唱曲があった。
もしかしたら中学二年生のシンジが、今、学校の音楽の授業で歌っているのかもしれない、私はそう思った。
真面目な彼のことだから、無意識のうちのこれらの歌をBGMとして選んでいて、きつい闘いの頭の片隅のどこかでうたっていたのかもしれないな、とも。


こころの中で祈りを捧げるとき、ひとは、意外と単純な音楽を選ぶのかもしれない。