第47回福島県吹奏楽コンクールの結果(高等学校1部のみ)と午後の観戦の感想

はてな吹奏楽クラブの皆さんも、良かったら以下のエントリを読んでみてくださいね。
昨日の日記で書きましたが福島県吹奏楽コンクール、高校大編成の部門の午後の演奏を聴いてきました。新しくできたばかりだ、といういわきアリオスホールはピカピカの新品、もとい、新建物でしたよ。
さて、我が旧友の言う通り、福島県は本当にレベルが高くて驚きました。それから、最後の2校が昨年の全国金賞校と、昨年はおととしまでに3連全国金賞をやってのけていたためにお休みしていた学校が連続するのは、べつに運命のいたずらでもなんでもなくて、そのようにプログラムを組んだのだそうです。
東京都と他地区のコンクールでは若干システムが違っていて、東北地方などでは「支部大会」があります。東京都では、都大会予選→本選→全国大会、なのですが、福島県など東北地方の場合は、支部大会→県大会→東北大会→全国大会、と、東京に比べて1回多いのですね。そのため、ある程度の実績を昨年度までに残している優秀な団体にはシード権があるのだそうです。今回の場合、昨年全国大会で金賞を取った湯本高校と、おととしまで金賞を連発して昨年度は特別演奏だった磐城高校は、東北大会にコマを進めるシード権を獲得しての参加だったようです。だから、最後の2校がこの学校だったのですね。シード権という仕組みは、少なくとも私が参加していた頃の都大会にはなかったため、新鮮に思えました。


さて、注目の結果を以下に列記したいと思います。会場で結果発表を聞きながら書き取った物です。多分間違いはないと思いますが、正式な発表は福島県吹奏楽連盟のサイトで後日ご確認ください。
なお、今日聞いた午後の部は、相馬高校以降の団体になります。人名の敬称は省略させていただきます。
賞の記号:C=銅賞、S=銀賞、G=金賞ゴールド、G代表=金賞ゴールド+東北大会推薦

学校名 人数 指揮者 課題曲 自由曲 作曲者 編曲者
C 尚志学園尚志高等学校 45名 横田 薫 課題曲IV 吹奏楽のための交響詩「ぐるりよざ」より 伊藤 康英
C 福島県須賀川高等学校 36名 富樫 恭子 課題曲II Jalan-jalan 〜神々の島の幻影〜 高橋 伸哉
G 福島県立福島東高等学校 53名 矢澤 和美 課題曲IV 前奏曲 変ホ長調 J.S.バッハ 田村 文生
S 福島県立磐城桜が丘高等学校 52名 馬目 行雄 課題曲III ハンガリー民謡「くじゃく」による変奏曲 Z.コダーイ 森田 一浩
C 福島県立あさか開成高等学校 41名 金澤 勝敏 課題曲IV 交響組曲第2番「GR」より 天野 正道
S 福島県立郡山高等学校 55名 杉岡 英樹 課題曲IV 舞踊組曲「仮面舞踏会」より A.ハチァトゥリアン 仲田 守
C 福島県立喜多方高等学校 45名 山岸 善行 課題曲IV シャフト〜一筋の光〜 成田 勤
S 福島県立葵高等学校 51名 新田 友喜 課題曲IV ドラゴンの年 P.スパーク
S 福島成蹊高等学校 53名 中島 賢司 課題曲IV 交響詩「ローマの祭り」より チルチェンセス、主顕祭 O.レスピーギ 藤田 玄播
G 福島県立安達高等学校 55名 工藤 幸恵 課題曲IV 科戸の鵲巣〜吹奏楽のための祝典序曲 中橋 愛生
G代表 福島県立相馬高等学校 55名 今野 貴文 課題曲IV 「交響三章」より 第3楽章 三善 晃 今野 貴文
S 日本大学東北高等学校 55名 植田 健司 課題曲I シバの女王ベルキス」より O.レスピーギ 木村 吉宏
S 福島県立安積高等学校 49名 富樫 輝信 課題曲II 楓葉の舞(コンクール・エディション) 長生 淳
S 福島県立保原高等学校 46名 尾形 秀重 課題曲IV 交響詩ドン・ファン R.シュトラウス 森田 一浩
S 福島県立郡山東高等学校 49名 浅間 秀幸 課題曲II 第三交響曲より J.バーンズ
G代表 福島県立原町高等学校 55名 小山田 浩 課題曲IV 交響詩ティル・オイレンシュピーゲルの愉快な悪戯」 R.シュトラウス 齋藤 淳
G 福島県立福島南高等学校 55名 斎藤 靖敏 課題曲IV 「交響的舞曲」より 第3楽章 S.ラフマニノフ 佐藤 正人
G 福島県立安積黎明高等学校 55名 星 英一 課題曲V 歌劇「ばらの騎士」第2・3幕より R.シュトラウス 星 英一
S 福島県会津学鳳高等学校 45名 古川 徹 課題曲IV ペドロの奇跡の夜 樽屋 雅徳
G代表 福島県須賀川桐陽高等学校 55名 田母神 貞子 課題曲IV ディオニソスの祭り F.シュミット
G代表+県知事賞 福島県立平商業高等学校 55名 橋本 葉司 課題曲V 交響曲第3番より 第1楽章 D.マスランカ
S 福島県立白河高等学校 54名 古川 聖 課題曲IV ハンガリー民謡「くじゃく」による変奏曲 Z.コダーイ 森田 一浩
G 桜の聖母学院高等学校 41名 伊藤 巧真 課題曲II 無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番ニ短調BWV1004より第5楽章シャコンヌ J.S.バッハ 森田 一浩
S 会津福島県会津高等学校 55名 井関 友和 課題曲IV 組曲「ハーリ・ヤーノシュ」より Z.コダーイ G.C.ベイナム
シード+G代表 福島県立湯本高等学校 55名 藤林 二三夫 課題曲IV 交響曲より 矢代 秋雄 篠崎 卓美
シード+G代表 福島県立磐城高等学校 55名 根本 直人 課題曲IV ディオニソスの祭り F.シュミット


各校ごとの全講評などはちょっと手に余るので書きませんが、中学生のコンクール時代を思い出しました。一生懸命だったあの日々。
それに、終盤の11校はいずれも甲乙付けがたい演奏でした。和声をしっかり研究していて、サウンドバランスも良く、全体を通じても納得の出来で。


以下、いくつか印象的な団体についてのみ記録します。
安積黎明高校の演奏は自分好みのオルガンサウンド、きれいにしっかり響かせてくれました。きれいで力のあるリヒャルト・シュトラウスでした。惜しくも東北大会には出場できなかったのですが、今後も吹奏楽を楽しんでください。
会津学鳳高校は55名の出場者を揃えた金賞団体に挟まれての難しいプログラム順での演奏でした。しかし、重厚なサウンドとともにさわやかな高校生らしい演奏だった印象があります。重厚なサウンドを目指すあまり鈍調になることがありますが、この高校はそうではなく、ひとつのまとまりを聞かせてくれたと思うのです。ステージから風が吹いて来た気がしました。
平商業高校は、ちょっと面白い曲を演奏してくれました。最初、全員ユニゾン長調の上昇音階を全音符で響かせて、その上昇音階を主題とした変奏曲として様々な表情を見せてくれます。いきなり音階練習かと思ってびっくりしましたが、ありそうでなかった音階そのものを主題としたシンフォニーなわけです。シンプルなだけにコラールで魅せるのは本当に難しいけれど、あの伝説の関東一高の「カンタベリー・コラール」に匹敵する演奏が出来る可能性を感じました。まだまだ荒削りで、和音が合い切っていない部分も感じましたが、上を目指す生徒さんたちの気持ちがそのまま乗り移ったような上昇音階で、聞いていて気持ちがよかった。今回の最優秀賞である「福島県知事賞」も授与されましたが、それだけ美しくて感動的だったということです。そう、上を向いていい音を出せるように日々努力すること、それが吹奏楽コンクールの楽しみなんだろうなあと。本当にいい演奏を聞かせていただいて、感謝しています。東北大会ではさらに磨きのかかった音で、東北地方の他県の皆さんを「アッ!」と言わせてくださいね!
桜の聖母学院高校は、ミッションスクールなんだそうです。たしかに、こういうバッハはある程度キリスト教への理解というか、祈ることの意味を体感的に知っていることが重要なように思えます。神様に心を込めてお祈りをすることの難しさと美しさと厳しさは、私もミッションスクールの大学出身なので、大学時代にシスターのみなさんから感覚的に教えていただきました。そういう空気が良く伝わってきた素晴らしい演奏でした。東北大会への椅子がもう一個あったら……! でも、大学時代の気持ちを思い出させてくれて、本当にありがとう。これからも楽器を楽しんで欲しいな。
会津高校の「ハーリ・ヤーノシュ」は、実は自分も中学3年のときの自由曲だったので、懐かしく聞かせていただきました。やっぱり、この曲中の「ウィーンの音楽時計」は楽しいですよね。木管冥利に尽きる名曲でしょう。終盤のファンファーレは金管がしっかり元気に鳴らしてくれてうれしかったです。
湯本高校は何とも不思議な課題曲IVを聞かせてくれました。どう言ったらいいのかな……ふわりと柔らかくて優しいものに包まれたような上質なサウンドだったのですよ。自由曲も、緻密さと内に秘めた熱を兼ね備えたうまさで、別格の貫禄が感じられました。
磐城高校は湯本高校と同じ課題曲IVだったのですが、対極的に「熱い」サウンドでした。しかし、荒っぽい感じはしなくて、ホール全体を楽器にしちゃった感じでした。冗談抜きにステージ上に炎が見えた気がします。自由曲もすごかった……。


さて、全演奏が終わっての審査待ちの間に、1日頑張った高校生たちへのサービスとして、「高等学校文化連盟演奏会」として東京のパーカッションアンサンブル「Funcussion(ファンカッション)」のミニライブが行われました。非常に楽しい。何がどう楽しいかは以下のYoutube動画でお楽しみください。
http://www.youtube.com/watch?v=oYb-l2n5YaI
http://www.youtube.com/watch?v=kbkgrItFI78
その他にもたくさんyoutubeに上がっていました。「Funcussion」で検索すると見つかります。実際、今日のステージでyoutubeで演奏が聴けてそれが話題になっているってPRしていたのですが、本当に面白いライブでしたよ。堅苦しいコンクールのあとにこういう楽しみを設けてくださるなんて、福島県吹奏楽連盟はイキですね!


東北大会に進めなかったり、思ったような賞を取れなくて悔しかった人たちもいると思うし。
次の大会に向けて気持ちを新たにした人たちもいると思います。
でも、みんな、楽器の仲間。ひとりひとりがそれぞれの思いを込めて演奏してくれて、本当に楽しかった。東京から来た甲斐がありました。
本コンクールに関わったすべての皆さん、ありがとうございました。

2009/08/08 午前5時追記

いろいろすごいと思ったこと。

  • コントラバスがある学校ばっかり。多い所だと3人いたりするのだが、3人を擁する学校が何校もあった。チューバ3+コントラバス3もちらほら。この組み合わせなら色彩豊かな低音を作ることが可能になるけれど、本当に吹奏楽熱が高いんだなあと。
  • ピアノ、チャイム、ハープ、チェレスタなどの特殊な楽器も割と当たり前だった。ハープふたりとかも。県とかの吹奏楽連盟が吹奏楽の講習会を開催して、そのときにハープの扱いについても習えるとか。福島の子どもたちに、東北大会を抜けて全国に行かせてあげたい、という連盟側の親心が感じられる話。
  • コントラバスクラ、コーラングレなんかも普通だったり、オーボエパートが3人いたり……。いやはや。
  • ホルンの人数もすごい。5、6人いたりする。あんなに難しい楽器なのになあ。
  • トロンボーンはテナーバス〜バストロまでの4人を揃えていて当たり前、5人とかも結構あった。
  • このように、楽器も演奏者も人数を揃えていて、55人編成を組めることが東北大会進出の鍵になっている、ということはあるようです。少人数でもすごい演奏が出来るのは事実ですが、しっかりと人数を集めてきっちり作り上げるスタイルがいろいろな学校で定着しているんじゃないかと思いました。金賞を受賞した所は、どこも50名以上だった。というか、1校だけ53人でしたが、あとの金賞校はみんな55人。東北進出した学校はすべて55人。
  • この会場「アリオスホール」の地元でもある「いわき支部」所属の団体が金賞校には目立つ。あと、あの名門、原町二中の卒業生が良く進学するという原町高校もうまかったし金賞だった。
  • 音を聞けば納得できることだけれど、銀賞や銅賞の学校も、音楽的な知識をある程度学ぶことができる環境でやれているようだ。楽器学だけではなく、ましてやスポコンでもなく、小中学生の頃からきちんと学びながら練習できるシステムが福島県全域に整っているのでは。

2009年9月2日追記

岩手県吹奏楽連盟のサイトに、東北大会・高校の部の審査結果が発表になっていました。
福島県の代表校の結果を以下に引用します。

いやはや、福島県勢のレベルの高さは素晴らしいですね。惜しくも全国大会に出場にならなかったみなさまは本当にお疲れさまでした。
また、全国にコマを進めた湯本高校と磐城高校のみなさま、ぜひ、あの全国大会のステージを全力でエンジョイしてくださいね。