講談社のウェブコミックサイト「MiChao!」終了

講談社運営のウェブコミック連載サイト「MiChao!ミチャオ)」が、母体である講談社ポータルサイト「MouRa」の終了により、来年1月初頭に閉鎖されることになったようです。

  • MiChao!ミチャオ)」今後のスケジュール(同サイトの案内より要約)
    • 2009年11月27日(金)更新終了
    • 2009年12月1日(火)新規メンバー登録・退会の受付終了
    • 2010年1月7日(木)サイトの公開最終日


有名作家による新作コミックを、連載形式でサイトに一定期間掲載し、ある程度原稿がたまってきたらコミックス化して販売するビジネスモデル。なかなか面白い試みで、私も時々訪れていました。


ウェブの良い所は、ユーザにとっては雑誌のようにかさばることなく、自分のペースで様々なジャンルの作品を読むことができること。
サイト提供者にとっては、ログイン形式をとってユーザの履歴を知ることで、今の読者に人気がある作品や、読者層の意外なつながりを発見できること。アンケートハガキよりシビアに読者レスポンスを知ることができるのは、出版社に取って魅力的な媒体だったのではないでしょうか。
さらに、作家に取っては自分のサイトをリンクしたり、オンラインアンケートの意見を届けてもらえることで、読者の声をよりリアルタイムに拾うことができます。


講談社が誇る漫画家さんの中でも、大御所的な方々も参加していて、サイト自体は非常に面白い物でした。ですから、非常に残念です。ウェブコミックサイトはいろいろありますが、たいていはコミックス化した作品のデジタル化ということが多く、完全新作を読めるのは貴重な存在でしたから。


また、漫画家さんにとっては、連載形式のサイトはシゴトがやりやすい可能性があります。
ある少女漫画家さんがコミックス書き下ろしのときにコメントなさっていたのですが、まとめて200ページ(コミックス1冊分)を描いて行くのは精神的にも大変な負担になるようです。描いても描いてもゴールが見えないようで。連載形式であれば、40ページとか32ページとか24ページとか……ともかく、ある程度のページ数を仕上げるための締め切りが、定期的にある。だから、ゴールが見えて描きやすいと。
連載1話分は、ひとつの長い長いお話の一部分であると同時に、そこだけでも起承転結のあるひとつのストーリーです。読者さんに次号も読んでもらうためにも面白いヒキ(いわゆる「続きは次号」のコマ)を用意しておきますが、この部分を描くということは、つまりその回のクライマックスを盛り上げるということになります。長いドラマがうまい作家さんは、まずこの毎回のヒキがものすごくうまい。だから、その個々の回の積み重ねである大河ドラマもうまいのでしょう。


気が付いたら20巻30巻読んでしまっている漫画は、1回1回が面白いのです。雑誌連載が初出で、今も読み継がれている古典的名作は、たいていそういう側面があると思います。


つまり、連載形式でのメディアがあることは、漫画界の命だと言っても過言ではないのです。


MiChao!」については「連載途中の掲載作品につきましては、携帯コミック配信にて順次完結の予定」とのことですが、連載サイトというある種の共通の発表の場があったこと、そして通信料がそれなりにかかる携帯コミックスよりも、常時接続で読みやすいPCサイト掲載であったことは、やはり読者離れにつながってしまう気がします。少女マンガのついでに少年マンガも読める。この手軽さは失われてしまう。


サイトの閉鎖は本当に残念ですが……。
雑誌が売れない時代、出版各社はどう生き残るか必死でしょう。
MiChao!」事業はひとつの試みとして成果はあったと思いますが、メディアとしては短命に終わってしまいました。これをケーススタディとして、より面白く長続きするオンラインマガジン事業が生まれてくることを、ひとりの読者として願いたいと思います。