TRUE REMEMBRANCE 〜記憶のかけら〜

ゲームといっていいのか微妙。どちらかというとサウンドノベル的(選択肢がないので本当に小説)。メーカーではビジュアルノベルと言っていましたが。さらに、3DS配信なのに3Dではない。それでいて、3DSでダウンロードしにいったらかなり評価が高いので、いったいどういうことだろうと思いましたが、やってみて納得です。
もともと、Windowsフリーソフトとして発表され、好評だったものを3DS化したのですね。


原作の公式サイトはこちら。


トラウマ……と、言ってしまえば身も蓋もないのですが。
イヤな思いをして、その記憶に縛られてしまってうまく動けなくなってしまう……人生を前に進められなくなってしまう。そんなことって、誰にでもありうると思います。
たとえば、理不尽にもいじめられたりとか。それで人を憎みたくなんか無いのに憎んでしまったりとか、そんな自分が嫌いになったりとか。下手をすれば自殺してしまったり。


この物語の世界では「記憶封士」という存在があって。そういうイヤな記憶に縛られてしまった患者さん*1をしばし憩わせる治療専門の街を国家プロジェクトとして作っており、封士がカウンセリングの上でイヤな記憶を完全に消去するシステムになっている....という設定のようです。
その「記憶封士」を生業とする青年と、一人の患者さん(女の子)の過ごした日々の物語。


...最後の方でのどんでん返しには驚きました。
それに、昨日は雪が降っていましたから、この作品内でもよく雪が降るので雰囲気がぴったりでした。


その記憶と向き合って戦って勝つ、そんな生き方もあると思いますが。
忘れるのが一番、ということもあるでしょう。
そういう切り口のストーリーは新鮮でした。そして、忘れると言うことがどういうことなのか。忘れると言うことは、自分の構成要素を殺す、死なせるということ...。それでも忘れた方が幸せになれる場合もあるのかもしれないし、そうではないのかもしれない。どちらなのかなんて、結局はわからないけれど。


一度、こういう思いを抱えてしまうと、何をしても、自分はダメな存在だと思い続けなくてはならないようで、とても苦しい。
だれも義務なんて負わせていないし、すべては自分の思い込みであり、自分で克服するしかない。
そんなことは分かっている。
向き合って改革を実行して切り開くしかないだろうと。
結局、そこで道を切り替えることが出来るか、スパイラルに陥るか...。


本作とテーマが似ている気がしたのは、紫堂恭子先生の『癒しの葉』。

癒しの葉 (1) (あすかコミックスDX)

癒しの葉 (1) (あすかコミックスDX)

自分を苦しめる自分と、どう向き合えばいいのかをテーマとした、ファンタジーコミックでした。
こういうテーマは非常に現代的なんだろうな...。


自分自身、正統派に楽になる方法をずっと探している気がします。
たぶん、答えは見つけていて、それが怖いから逃げているんだと思う。
その答えについては、ある友人を象徴として心の中に表象していて、たまにそのヒトに苦しめられる夢を見ます。
夢の中の登場人物は、自分の中のそのヒト的な要素なんだって、何かで読みました。
たとえば、明るくて活発なヒトが夢に出てきたら、そのヒトのことは、自分の性格の中の明るくて活発な部分なんだと。その人自身のことを必ずしも語っているわけじゃなくて。
的を射ていると思います。夢が深層心理から来るものだとすれば。


『果てしない物語』みたいに、自分のことを鏡に映すのが怖い。
そういう自分を罵倒しているだけでは、何も解決しない。


でも、封士(の、ような存在、現実でいえば催眠療法士や臨床心理士かな、と)に頼ってしまったら、それもまた逃げだとは思う。
かっこつけたいだけじゃないの?
バカじゃないの?
苦しんでいるポーズだけしていれば何も努力しなくていいから、楽でいいよね。
そういう自問自答ばかり繰り返しています。


自分はずるいな...。

*1:作中では「セツナ病」と言っていますが、現実でいえば「うつ病」の一種のようなものではないかと。自殺してしまったりする設定なのは現実と同じ。