安井算哲の熱い人生『天地明察』

本日はレディースディ。おまけに、シゴトもお休み。というわけで、久しぶりに映画を見てきました。
前々から見たかった『天地明察』。江戸時代の天文学者・安井算哲(のちの渋川春海)の物語。被災地・福島県出身の偉人でもあります。
江戸時代の天文学。聞いただけでも、手作りの雰囲気が想像できてわくわくしていましたから。


まず、地方を巡って北極星の位置を観測する旅が前半の山場。
その旅で示した才覚から、その当時使われていた暦がズレている問題を解決する大任を授かります。これが後半のメインテーマに。


当時の暦は現代以上に生活そのものであり、日食は不吉なので儀式などをおこなわないとか、吉日に結婚の祝言をおこなうとか、いろいろなイベントが暦から決められていたのです。
そんな中、中国発祥の暦が800年も使われてきましたが、なぜか微妙にずれていました。
その微妙なずれが積もり積もり、日食の日が数日レベルでずれていたりしていました。そうなれば、政治にも影響が出ます。
たとえば、冒頭、将軍の御前で算哲は囲碁勝負をしますが、この勝負も突如始まった日食で中止になりましたし。


今まで使われてきたうち、代表的な暦だけでも3種類ありましたが、どれを使っていても外す時は外してしまう。
そして、いくら観測と計算を重ねても、どこかでハズレが出る。安井算哲がある事実に気がつくまで、何年もそんなことの繰り返しでした。
9分9厘が合っていても、1日はずしたら台無しです。暦はどこまでも正確でなければ、みんなが困るのです。
たとえば観測データがまるでずれていたので、今日が2012年10月17日水曜日ではなく18日だったら?
ああ、わたし、こんなところで日記を書いてないで出勤しなくちゃ!!(笑)……ってことになりますからねえ。


何度観測と計算を重ねても、ダメな時はダメ。彼がもうすべてが嫌になってしまってからが、この映画の本当に面白い所かもしれません。
どうやって立ち直れたのか、そして、ほんとうに外さない暦を作るために必要だったデータとは……。
ヒントは、今までの暦が中国発祥だったこと、そのものでした。つまり、算定根拠のデータが日本のものではなかったから、です。


多難を経てなんとか和暦ができあがりましたが、それを朝廷に採用してもらえるまでがまた難物。
暦は生活のタイミングをすべて司っていましたから、安易に変えるわけにはいかないし、暦利権のようなこともありました。
でも、天地は嘘をつかない。
天地のタイミングにどの暦なら合うのかを、民衆の元でつまびらかにすれば、おのずと採用すべき暦は明らかになる。この大勝負が、本当に最後の山場。
もしも外してしまえば、今度こそ算哲の命はありません。朝廷に今の暦が間違っていると進言することは、帝にたてつくことになりますから。
腹を切る覚悟で挑んだ観測結果は……?


主演は岡田准一さん。そそっかしいながらも数学や天文が好きでまっすぐ、そんな好青年として、安井算哲を好演していました。
宮崎あおいさんは算哲をささえる妻・えん役。自分自身の意見を持っているタイプの女性です。算哲がどうしても完全な暦が出来ずに投げ出しかけたときに、叱咤するシーンが特に印象的。


さて、このストーリーの中で、何度も出てきた日食。今年は、金環日食が大きなイベントでしたね。天文観測は今でも重要なことは、いうまでもありません。
もしも安井算哲がIIS国際宇宙ステーション)で宇宙観測する任を任ぜられたら、どんな成果を上げてくれたでしょうか。
いいえ、天を見つめ地に学び、本当の暦を明察した彼から、頭はクールに心は熱い、そんな志を引き継いだ人たちが、今も働いているのでしょう。
映画の内容や描写がどこまで史実に基づいているのか、少しネットを検索しただけでも異論反論があるようですが、安井算哲が常識に挑戦し改革を成し遂げた熱い男だったということは、本当だと思います。
そんな日本人がいたということ。素直に誇りに思います。