たぶん、良い人過ぎたのだろうな

あの作曲家さん騒動……。本物の作曲者さんの記者会見をニコニコ動画で全編拝見しました。
http://live.nicovideo.jp/watch/lv168278903
この作曲家の方、きっと良い方だと思いました。全面的に謝罪とご説明を誠意を持ってしてくださっていて、すごく言葉を選んでいらっしゃって、この告白は大変なことだったと思うのだけれど……。
それにしても、記者の皆さんってルール無用なんですね。ご質問は1人1問に限るんだっていうのに。
会見の質問は音楽ジャーナリズム関係の記者さんからなかったのも意外でした。テレビ放送関係、新聞関係、あとフリージャーナリストさん。芸術というより、一般芸能ニュースと同じくくりで扱われている感じがしました。


たぶん、若い頃にちょっとした頼みからやってあげた的なことが、ズルズルと来てしまったんじゃないかなあと。それが、雑用や作業ではなく、作品が残るジャンルだったからこういうことに。


作曲をしても、それが演奏されなければやっぱり意味がないわけで。
絵画や写真もそういう所があるかと思いますが、表現はやっぱり見てもらえなければ死んでしまうものですが、作曲というジャンルは、書いた人がいただけではダメで、書いた楽譜を読んで、本当の音にしてくれる人がいなければ成り立たない所があります。自分の心の音を書き取ったら、やっぱり、実際に楽器が出来る人にリアルに音にして欲しい。そういう機会を得られるというだけでも、ゴーストライターであっても、喜びというか嬉しさはあったんでしょう。
特に、クラシックの作曲家はそれなりに楽器が出来る人、それから数がいないと楽譜を再現できない場合が多いので。普段の顔(ご専門は三善晃さんのお弟子さんで現代音楽系ということだそうなので)ではできない表現を、ゴーストであればできる、というところはあったのではないかなあ……と。
息抜きというか。
まあ、その作品レベルがそこはプロなので、しっかりとした形になっているあたりがすごいんですけれども。
音楽関係の記者さんに、その辺りを質問して欲しかったなあ。


ゴーストライターであるならば、ゴーストライターとして、正体は明かすべきではないという意見も他のメディアで散見されました。
しかし、黙っている訳にいかなくなった事情があったようです。
ひとつは、音楽家としての良心の問題。
ひとつは、会見でおっしゃっていた、ソチ五輪での高橋大輔選手が彼の作品を採用すること。
ひとつは、あの義手の少女バイオリニストとの問題。支配的に無理難題を……って何があったのかは詮索しませんが。よほどのトラブルがあって、彼女を守るためにも告白をしたのでしょう。たしか、「彼」を紹介した以前のNHKの番組で、「彼」のために片手で作った千羽鶴を渡すシーンがあって、番組を見てすごいなあと当時印象的だったのですが……それをも裏切ったことに。普通、折り鶴、片手で折れますか。出来なくはないけど難し過ぎる。それを1000羽。そういう気持ちも。
ひとつは、会見後にAmazonさんで見つけたのですが、音楽作品内容や「彼」の態度そのものから、何かおかしいぞ、とした評論が記事になったこと。これはkindleiPhoneアプリもある)で読めます。記事そのものは去年の秋、kindle版は先月発売だったようなので、タイミング的にも。
http://www.amazon.co.jp/gp/B00HD73JSI/
あと、もしかしたら。師匠である三善晃さんが亡くなられたのが去年の秋なので、そこで何か思う所とかもあったのかも……。


ネットを見ていたら、タイミングが悪いという意見もありましたが。高橋選手の試合にギリギリですが間に合うし、それにあの少女を早く守らなくてはいけないし。たしかに、高橋選手のことを考えたら、シーズン開始前、じゃなくてもあと半年くらいは早く言えれば良かったのでしょうけれど(結果論としては)。
ただ、曲の採用はTV報道で知ったとのことなので、もう振り付けとかもされてからってことだったことになりますし……。
五輪を終わってからでは遅過ぎたのは明白ですし。
ベストではなかったのでしょうけれど、ベターな選択だと私は思います。ギリギリですが良かったと思うのです。


氏は本当に勇気がいることをなさいました。
著作権を放棄する、とおっしゃっておられ、お金のために告白なさったんじゃないというのもよく分かりました。


今後の作品の取り扱われ方が気になりますが。吹奏楽曲もありますし。
2006年の全日本高等学校吹奏楽大会で演奏した柏高校(同大会で総合グランプリ)の先生のコメントからは。
http://mainichi.jp/select/news/20140207k0000m040094000c.html
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20140206-OYT1T01081.htm
和楽器を用い、難易度の高い良曲のようです。
和楽器を使う吹奏楽曲、というだけでも面白そうなんですけど。日本の高校の吹奏楽部はレベルが非常に高いですし、柏高校も有名校ですね。その彼ら彼女らが大会で取り組むに値する曲だったというだけでも、クオリティは分かります。
学生にはいきさつ上の問題で不向きでも、一般市民バンドだったらやってみたいウィンドバンドさんはあるんじゃないかなあ?
せっかく作ったのにもったいないなあ。ネット公開してくれたらいいのに。


というか。
こういうややっこしいことになっちゃうから、ゴーストライターじゃなくてユニットでやっていれば良かったのになあ。


あと、そもそもの始まりを「本人」に説明して欲しいものです。
物事には順番がある。つまり、最初の仕事があったはずなので、どういう経緯で引き受けたのか。
というか、作曲が出来ないのになんで依頼が来たのか? 勝手に名乗って仕事を始めたのか。
ゴーストライターさんは本分を充分ご説明なさったと思いますし。
障がいを偽った疑惑も……こういう人が居ると普通にまっとうな障がい者さんが変な目で見られたりするかもだし。