少女漫画円熟期の傑作の舞台裏

改元ですが。
正直、妙な祝賀ムードには馴染めないものも感じてはいます。
まあ、時代の切り替えを前向きに捉えるキッカケになっているのは、悪いことではないと思いつつ。改元って、ただでさえ色々とたいへんなことなのに、後ろ向きになっちゃうよりは良いんじゃないかな、と。
ともあれ、せっかくのお休みなので、普段読めない長編漫画を読み返していましたが、手持ちの読書だけではもったいない。
今日は友人と立川駅前の図書館に行ってきました。漫画の図書館ではなく、普通の公共図書館なのですが、漫画についての本も探せばあるわけで。
改元がらみであえて書きますが、「昭和の少女漫画の代表作を何本か挙げてください」と言われたら、多くの人が名前を出しそうな作品は?
やはり『ガラスの仮面』(一応、現在進行中)と、『ベルサイユのばら』(こちらは完結)は出てくるでしょう。
それぞれの著者自身が作品について語る本を短時間でざっくりとですが読んできました。

美内すずえ先生の『ガラかめ』は、まだ完結していないのですよね。他でも読みましたが、作者さん的には話のオチは決まっているものの、そこに至ることで難儀されているとか。たしかに、49巻までの流れを見ていても、典型的な物語だったらさっさとマヤを紅天女役にして、真澄様と結ばれて終わりでしょうけれど、そう簡単には行かなそう。何よりライバルの亜弓さんがかわいそうになってきちゃっていますね。この辺りのこととか、舞台化、能、『ガラスの仮面ですが』でのパロディについてなど興味深く読みました。
文化としての漫画と歴史 (ブックレット生きる)

文化としての漫画と歴史 (ブックレット生きる)

池田理代子先生の『ベルばら』。本書によればフランス衛兵隊がバスチーユ監獄の戦いのときに市民の側に付いた、という史実があり、あのオスカルはその衛兵隊長を描くために生まれたキャラクターだそうです。ただ、男性をしっかりと描く自信が当時の池田先生になかったので、苦肉の策でいわゆる男装の麗人にしたのだそう。世の中、何が幸いするか分からない。史実通りに男性キャラクターとして描いていたら、今も続く『ベルばら』人気はなかったのではないでしょうか?
ただ、たしかに骨太の作品ではありましたし大人気ではありましたが、あくまでも『ベルばら』は歴史を叩き台にした架空のお話。少女漫画としての枠内で書けなかったことが多々あったり、池田先生が描きたいことについて編集部から反対されたことがあったり、現地取材なしで描いたためにあとから見たら描写不足だったりもしていたとか。その辺りを含め、新人時代の池田理代子先生の事情が語られたエッセイでした。
ちなみに。連休中に読み返していたのは、紫堂恭子先生の『辺境警備』をはじめとする一連のサーガなのですが(『グラン・ローヴァ』『辺境警備』『東カールシープホーン村』そして最新作の『逃げる少女』)。こちらも作者さんの新人時代、それもデビュー作からスタートしており、少女漫画なのに怪物が出たりなどは編集部からは反対意見があったりもしたとか(『辺境警備』の作者あとがき)。
描きたいことがあって漫画家になるものだとは思いますが、やはり譲れないものがあるって強いですなぁ。悪霊や獣虫が出ない『辺境警備』、デシ&ダシが出ない『グラン・ローヴァ』なんて有り得ないですもの。
こうなると、作者さんが長い目で見たサーガとして描いているものを読みたくなる。例えば『ベルばら』つながりでの『オル窓』などの一連の池田先生の歴史漫画シリーズ(未読の『聖徳太子』も含めて)を読み返したくなってしまうなぁ。そんなの、10日もお休みがあっても全然足りない! 他にも予定があることですし。
漫画を単なる絵物語の枠を超えた一大ロマンスを描ける大きな媒体に育て上げた先生方には感謝しています。手塚治虫先生然り、和田慎二先生然り。
そうそう。図書館には『妖精国の騎士』の中山星香先生が手掛けられた『妖精キャラクター事典』もありました。
妖精キャラクター事典

妖精キャラクター事典

ファンタジーRPGなどでの定番キャラクターも多数収録され、何より中山星香先生の生き生きとして美しいイラスト。漫画だけでなくこんなお仕事もされていたとは知らなかった。
古い本と出会える図書館って良いものですね。立川駅前にはあの『ファーレ立川アート』もあり、久しぶりにそちらの作品もざっとですが見てこられて、良い一日でした。