まさか、フォーチュンクエストが終了するとは

全然別件で検索していて偶然知ったのだが、あの『フォーチュンクエスト』が足かけ30年の最終巻を今月刊行したという。
何を検索していたのか、もう本題はそっちのけ。
『新フォーチュンクエストII』は全く読んでいなかったことに改めて気がついて、勇んで電子書籍にて購入、全11巻を一気に読んだ。
私が今で言うラノベ、ジュニア向けライトノベルを一番熱中して読んでいたのは、高校のころだったと思う。フォーチュンのファーストクエストをどうして手に取ったのか、今では定かではないが、『ロードス島戦記』『フォーチュンクエスト』『指輪物語』は、読んでおいてよかったと思える作品だ。主人公たちの背景に、彼ら彼女らの生きる世界があり、小さな等身大の勇者達が大きな世界の中で精いっぱい生きている。ファンタジーのそんな感じが好きなのだ。
指輪物語のフロド・バギンスだってそう。今思うと、あの世界ではかなり普通のヒト(まあ、ヒトというよりホビットだが)。特別というより、その辺にいるようなひとが、訳あって世界を左右する指輪を正しく処分するために、大いなる旅に出る。たくさんの人たちに助けられながらも、最後まで歩けたのは結局、フロドのちっぽけな勇気があったから。
ロードス島戦記の自由騎士パーンだって、その辺にいるような若者の一人だった。まあ、ロードス島戦記の場合、元はTRPGから始まっているので、主人公たちの一般人っぽさがより強く感じられるのかもしれない。
そして、フォーチュンクエストのパステル・G・キング。彼女もまた、一般人でありながら、最終的には勇気ひとつで世界を災厄から救うことになった。まさかこんなことになるなんて、ファーストクエストのときには思いもしなかったが。ルーミィだけは絶対守る! それだけであんな奇跡を起こしてしまうとは。勇者パステルと呼んであげたいところだ。それに、彼女がラスボスを説得するところは、他のどんな物語のラストバトルにも負けない名シーンだと思う。スマホで文章を追いながら、自分の中の高校生の自分が、パステルを応援していた。屈強なる勇者が、大魔王を必殺の剣で倒す物語も良いが、彼女のような普通の冒険者が、小さな勇気ひとつで破壊の元凶と話し合いを試みるのもまたヨシだろう。
フォーチュンクエストの最後は、何となく学校からの卒業を思わせるものがあった。作者様の意図ではないと思うが、パステル達が偶然からパーティーとして集まり、数々のクエストをこなす過程が、本当の自分の人生を歩めるようになるまで、学校というところで仲間たちと過ごすことにかぶって見えた。それは最終11巻の前書きを、今までのと比べてみれば明らかだ。
読者として幸福だったことは、この長い長い物語のエンドマークを見届けられたことかもしれない。
作品が売れず、本当の意味でのエンドマークを打つことができなかった数多の長編小説。作者さまがなくなられた場合など不可抗力によるものも多いが、作品が売れず、あるいは出版都合などにより終われなかった物語は枚挙に暇がない。
それを考えたら、30年にも及んだ物語をきちんとたたまれたことは、偉業であろう。
本当に気持ちよく終わっていて、でも、今後にも何かありそうで、良いエンドをしばらくぶりに読んだと思う。
ちなみに、作者様によれば、このあとは番外編などをウェブマガジンで発表されるらしい。

取り残した伏線はほとんどないと思うが、クレイのあのクエストは知りたいところだ。いつか、あかされるだろうか。