学校配布のタブレットでいじめ?

冒頭に参考記事を羅列したが、町田市の小学校でChromebookを配布したら、Google Chatを利用してのいじめが発生、児童が自殺したとの報道があった。
あまりにも痛ましい。お子様のご冥福を祈りたい。
いうまでもなく、テクノロジーの活用はユーザに委ねられる。教育目的であるならなおさらだ。まだ右も左も分からない子どもたちに実質的に無制限の端末を与えるのは、あまりに危うい。
子どものための通信環境で安心して過ごせる場所の提供がいかに難しいことか。小中学校がここ10年ほど対応に苦心してきたプラットフォームはLINEであろう。また、かつては学校裏サイト問題などもあった。そうしたオンラインの場所での問題を解決する絶対的な方法はおそらくないままでここまできている。人によって、学校によってのケースバイケースということだと思う。
各社の報道から透けて見えるのは、学校におけるICT教育でのサポート態勢のうすさだ。この町田市の学校同様にChromebookを与える学校に子どもを通わせる友人に聞いてみたことがあるが、何か問題が起きた時にサポートしてくれる専門部署のようなモノはないとのことだった。いじめのような人間同士の問題は担任の教員が対応すべきかもしれないが、テクニカルサポートについても先生を通すことになっているらしい。学校によりけりだろうが、先生への過剰な負担になっていないか心配だ。先生だって、機器関係が得意な方もいれば苦手な場合だってあるだろうし。
また、プレジデントでの報道では、身に覚えのないイタズラ書き込みを疑われたためにパスワードの変更を申し出たが、先生に却下されたという信じられない事例もあったらしい。
たまたま、端末を使っていない時にまた当該児童のアカウントでイタズラが発生したことで潔白を証明できたとのことだが、それまで再三疑われた続けた児童の心のキズが心配である。
子どもが先生に身に覚えのない疑いを掛けられることがどれだけショックなのか。
自分にも未だに忘れられない覚えがある。
あれは幼稚園の時だった。
私たち一家は父の海外赴任について行っていた。そのため、私は海外の幼稚園に通っていた。その幼稚園では日本人は日本語を禁じられた。英語か中国語なら許されたが、数ヶ月前まで日本にいた5歳児がそんなモノを話せるわけがない。もしも幼稚園内で日本語を使ったことが先生にバレると体罰があった。それは殴られるようなものでは無かったが、口にガムテープを貼られたり、タイガーオイルというきついハッカのかゆみ止めを塗りつけられたりする。当時は分からなかったが、子どもの心をキズつける分には充分に暴力的であった。
このルールも理不尽ではあったが、本当に日本語を話したことがバレたときよりも、同級生からのいじめで日本語をしゃべったことにされて先生に言いつけられて体罰を受けたことのほうがはるかに多かった。
当時思っていたのは、大人なんか信じない。それだけでなく、自分なんかも信じないということだった。
自分自身の自己肯定感が今でもどこかしら壊れているのは、この時の体験に原因がある気がする。帰国してからの日本でのいじめでも自殺未遂を起こしていたし、今でも自己肯定的かというとそうとは思えないし。
ともあれ、子どもの時に身に覚えのないことで先生に疑われたらその子どもの人間不信につながってしまうとは、誰でも容易に想像できるであろう。教育者が絶対にやってはいけないことのひとつではないだろうか?
報道で感じたのは、この学校のスタイル、教育方針の危うさだった。子どもたちに何度でも失敗させて覚えさせるためにタブレットの利用を自由にしていたとか、パスワードをなぜか全員同値にしていたなど、放任を通り越して無責任と言わざるを得ない状態だっただろう。
ただでさえ、今の子どもたちは大人なみに疲れ、ストレスがたまっている。
それは、ひとつには年齢にそぐわない程の情報過多であることも原因なのではないかと思う。
そんな状況で、自由に使えるタブレット、パスワードは共通値なんて環境を与えてしまったら、無法地帯になるのは自明の理だったのではないだろうか。
また、パスワードの適切な管理と運用を学ぶのも情報運用における基礎のひとつだと思うが、この体制では学びの機会を子供たちから奪ったといえる。
基本的にパスワードは全員個別に発行し、何があっても他人のパスワードを聞き出したり使い回したりしないのは、インターネットの大切なルールのひとつだ。これを学校自らが破っておいて、GIGAスクール構想推進校とかいえるのだろうか?
このニュース、読めば読むほど怒りを感じずにはいられない。自分が大学における教育の場でのパソコンサポート屋だから、仕事柄というのとはあるかもしれないが。何にしても、小学校におけるICT教育実践校でこの状況では、他の現場も心配である。
自分に何ができるでもないが、思いつくままに書いておくと。
タブレットを一人1台貸与されるような学校側に子どもを通わせる場合、その運用方針をしっかりと学校に確認して欲しいと思う。もしも、情報端末利用で何かあったときのサポート態勢に不安を感じるようであれば、直ちに学校に確認が必要だろう。それはハードウエア面(落下で画面が割れた場合など)、ソフトウェア面(オンライン授業を受ける上での設定方法など)、運用面(家で何時まで使用許可を出すか、学校からどんな課題が出るか、今回のような対人トラブル時の対処について、パスワード管理について等)それぞれについて確認が必要だろう。
これからタブレットが全国の学校現場に広まるだろうが、同様の問題が起きても解決出来るようになっているだろうか?