パソコンソフトウェアの学び方

なんでもそうだと思うのですが、何かをやりぬこう、というときには、適切な最終目標設定とロードマップを書くといいと思うのです。で、ロードマップにはマイルストーンをちょこちょこ置いて、段階的にチェックできるようにしておく。
それから、何か技術を習得するときには、作例集と事典があれば良いわけです。


こどものころに、掛け算九九を習ったときを思い浮かべるとわかりやすいですね。
81個の数式を、いかに暗記するか。
私は学研の『学習』の付録だった『モコお姉さんの掛け算九九の歌』で覚えましたが、まあ、方法はともかくとして。
最終目標は81個の数式暗記。
ロードマップは1の段、2の段、3の段……と、段ごとに暗記し、最終的に9の段までクリアすること。
マイルストーンは一つの段を暗記できたと思ったら、なにも見ないでも言えるかとか、親や友達に問題を出してもらって、ランダムな順番でも言えるかをテストすること。


なんの話かっていうと。
パソコンソフトウェアをいかに学ぶかを正面から考えていたら、最初に浮かんだのが料理技術の習得、次に浮かんだのが掛け算九九だったのでした。


料理を覚えることはパソコンソフトの習得によく似ています。
最初はかんたんなものをともかくやってみる。サラダあたりが定番でしょうか。サラダに良い野菜を買ってきて、水洗いして、手や包丁で切り、皿にもりつけ、食べる直前にドレッシングをかける。最初はトマトとレタスとキュウリあたりの簡単な素材でしょう。ドレッシングもできあいのもので。


料理において、サラダを作れるようになれば、基本的な料理のワークフローを制覇できます。それに、もっとも基本的な調理用具である包丁+まな板の基礎を覚えられますし、おいしそうな盛り付けのコツ、新鮮な野菜の選び方、調味料をかけるタイミング、栄養バランスについてなど、基本中の基本知識が詰まっていると思うのです。


目標の料理は簡単なもの(Plan)で、まず達成感(Do)を得る。それから振り返って(See)できていないところを見直す。さらに、知識や技術を得る。


包丁の基本的な使い方が分かれば、たとえば「たこさんウインナー」とか、ゆで卵を飾り切りするとかの応用テクニックに発展できます。サラダ調味料の基本は酢と油と塩。塩の代わりにしょうゆにするとか、米酢ではなくワインビネガー、油もごま油に変えてみるとか、アレンジは無限です。それが料理の楽しさですよね。


そういったアレンジをするには、レシピだけでは解決できない知識が必要になります。
で、料理事典があると便利です。どういう素材があるのか。塩ひとつとっても、化学的なものから、海水を利用して塩田で作ったもの、岩塩など、本当にさまざまな種類があります。さらに、塩は今日の料理の味を決めるだけではなく、人類の歴史においても重要な役割を果たしたようです。そういったことは、やっぱりレシピではなく事典から学べることだと思うのです。
レシピをひとつ覚えたら、料理事典や八百屋さんの店頭などで素材について知ったり、類似素材にはなにがあるか覚えたりする。
こういうことの繰り返しで、レパートリーと技術と知識が増えていくものだと思います。

パソコンソフトの習得もそっくり。
Photoshopを覚えるには、まずは簡単な写真加工をしてみる。暗く写った写真を明るくしたり。思い出の写真をセピア調にしたり。
そういったかんたんなレシピをこなしていくことで、基礎的なホワイトバランスやRGB(光の三原色)のことを知り、またPhotoshopのツールとメニューの配列などをリファレンスで知り。
それからだんだん難しい技術に入っていけばいいわけですね。


ただ、問題なのは、どこまでやれば「習得できた」と言えるのか。
人によってそれぞれだろうなあ……こればっかりは。
それこそ、Adobeの検定に合格すれば習得できた、といえる、と思う人もいるでしょうし。年賀状に入れる写真が作れれば習得できた、とする人もいる場合もあるでしょうし。
最終ラインは自分で引くしかないし、引かないでずうっと学び続けるのも良いでしょう。

ちなみに。私自身はパソコンソフトに関して、最終ラインを引いていない気がします。学生時代一応CG系の資格はそこそこ取っていますけど、あれも結局は過程だったなあと、今では思えますし。勉強しているときは夢中だったんですが、今では「だから何?」みたいな観点で見ていたり。


最近のモヤモヤした感じは、落としどころというか最終目標が決まっていないせいなのかもしれません。
自分にとってパソコンはやれば学べるシロモノで。
問題は……だから何?
あんたはどうしたいの?


大学のころから引きずっている疑問に、そろそろケリをつけなければ、前に進めなくて、内心ものすごく焦っています。
社会的な地位とかはけっこうどうでもいいと思っていますが。
なんだろうなあ。死ぬまでに何か残したいというか。人間、いつ死ぬかわからないからなあ……。