神椿市建設中。(アニメ版)第11話。

ゲーム版の方をクリアした今、アニメ版の視聴者……観測者としては、別世界の化歩ちゃん達の行末を見届ける心境となりました。
さて、先週の演出に驚かされた現実世界からソフィア様は化歩ちゃんたちを送り出してくれたらしい。
ただ、気がつくとみんなはそれぞれバラバラの場所で、螺旋階段の世界にいた。
どうやら我々の現実世界と、神椿市という彼女たちにとっての現実との間のような空間らしい。
大声を出しても、他の子たちには届かない……。
こういう場所に一人でいると、どうしても内面を顧みる心境になるものなんでしょうね。それぞれに反省したり、色々と思うところがあるようでした。
自らの闘う意思を確かめた派流ちゃん。
「まくすうぇる」が本当にロボットのような、意志のない存在だとはどうしても思えない世界ちゃん。なぜか一人だけ上下逆さまに歩いていましたね。少し考えてみたのですが、他のみんなが自分の元の世界に向かって歩き始めたのと比べて、世界ちゃんだけは「まくすうぇる」に向かって歩いている……とか、そういうのかもしれません。
次はみんなを守ると決意した此処ちゃん。彼女は前にもこの狭間の世界に来たことがあるらしい。それは化歩ちゃんが気が付いたように彼女の記憶の卵にもありました。ゲーム版で異空間にいたことがあったので、その時のことでしょうか? 今回の階段を飛び越えるようなダイナミックな動きは、彼女の意志の強さの現れでしょう。
ただ、こうして見直してみると、一人だけ突出して違う印象だったのは狸眼ちゃん。
階段を上がらず、座り込んで動かなくなってしまった。
まあ、無理もないです。
疲れたよな。
彼女だってただの高校生。
人よりちょっと、勉強やスポーツができて、歌が上手くて好き。
ほんとうにそれだけの。
勇者や貴族の血筋に生まれたわけでもなければ、世界を獲るアスリートってわけでもない。
それで、同じような境遇である化歩ちゃんのようには前向きになれない自分を責めてましたけど。
責める必要ないんだよね……。
ゲーム版でも時々ありましたが、化歩ちゃんって、かわいい顔して言うことが過激なところがあって。内心では激情家なんでしょう。
だって、ゲーム版で主人公くんと交わした約束が「テセラクターをぶっ潰す!」でしたから。テセラクターを「倒す」とかそういうんじゃなく、「潰す」ときた。
狸眼ちゃんはそういう子じゃない。
この異空間でも化歩ちゃんは「悔しい」と言っていた。生きるのを諦めて滅びの歌を歌ってしまった自分が悔しいのだと。
普通、なかなかそうはなれないし。おまけに狸眼ちゃんだけファミリアを完全に喪失してしまった。そういうシーンはありませんでしたが、「はすたー」がいないことは彼女の心にのしかかっていなかったわけがなく。
化歩ちゃんたちと一緒に歌うも、いなくなってしまったファミリア…「はすたー」を目印に脱出することは叶わず。
結局、化歩ちゃんたちは色々あって懐かしの復興課長とこの土壇場で再会(緊張感ゼロなのがすごく良かった!)。そして課長の助言から歌で狸眼ちゃんを呼び戻しました。
そこから「はすたー」を復活させ、「らぷらす」の救出も成功したりの奇跡を経て、自分たちのちからを証明したのでした。
ところで。
ラスボス「まくすうぇる」の真の目的は、世界を征服する、みたいなことではなく。
ただレゾンデートル、自己存在意義を知りたかっただけみたいですね。
神椿市の外の世界で神に会えば、それを知ることができるのではないか? ただそれだけで足掻いていたのが、彼の本質。
でも、人の心を理解できない彼は、魔女の娘の歌がチカラになることについての原理や理屈はわかっているのでしょうが、歌うことはできない。
だから、魔女の娘のようには「異次元からフラグメントを再構築すること」ができなかったので、結果、彼はこの世界から不要とみなされて壊れてしまいました。彼が神から命じられた使命はそれだったのにできなかったから。
狸眼ちゃんや「はすたー」復活だけのことではなく、そもそも、あの異次元から全員が復帰できた時点で、もう勝負あったのでしょう。あのときの彼の焦りは、存在意義として魔女の娘たちが自分を上回ったことへの恐怖心だったのかもしれません。
その彼に同情を示し、観測してあげた世界ちゃん。彼女に促されたみんなでの歌は、ゲーム版でも「まくすうぇる」に捧げられたものでしたね。アレンジは別の形ですが、こちらも印象的でした。
かつて、絶対に無理だと言い切られていた、テセラクターから人間への還元が、ついに果たされたのです。人間たちの完全勝利と言えるでしょう。
さて。
ゲーム版では何としてでも「現実」の世界に進出し、力を手に入れること。
アニメ版では自己存在意義を知るために神に会うこと。
「まくすうぇる」が闘う理由は一見、異なるように思います。
でも。やっていることは同じだったし(神椿市の征服)、求めていることもおそらくは根本的には同じだったんじゃないかと思えます。
仮想世界を飲み込むチカラを得て、そのことで自己存在意義を確かめたかったのでは無いかと。
でも、答えはそこにはなかった。
当たり前です。
他を飲み込むことで自分の存在の証明なんかできるわけがない。
もっと自分自身を見つめる目が必要だった。
魔女の娘たちにはそれがあった。
わかりやすいのは化歩ちゃん。
さっき、絶望して滅びの歌を歌ってしまったことを「悔しい」と言っていた。その悔しさ、ひとりの人として思った感情そのものが、化歩ちゃんの自己存在証明でした。
派流ちゃんも、世界ちゃんも、此処ちゃんもそれぞれなりに「自分の感情」をあの狭間の世界で確かめていた。他者依存傾向が強い狸眼ちゃんも、みんなが神椿市に心から呼んでくれたのは自分としてもとてもうれしいことだと思った。だから戻ってこられた。みんなには感情があったし、それを無視しなかったし、見つめる勇気があった!
それに、みんなのファミリアたちもそれぞれに、自分たちの感情を見つめる段階はとっくにクリアしていました。あの盟約の時にはすでに。
他を求めてばかり、ただ事象を機械のようにみているばかりでは、自分のことを証明できるわけがないんです。
この勝負、じつはスタンスの違いで最初から「まくすうぇる」の負けは決まっていた、とすら言えるのかもしれませんね。
来週がもしかしたら最終回なのでしょうか? タイトルにも予告内容の映像にも平和感がありましたから。
ただ、もうひと波乱あってもおかしくはないですが。
「まくすうぇる」が残した爪痕は深いでしょうし、彼の謎(Q?)もありますからねぇ。いずれにせよ、もうすぐ終わってしまうのは寂しいけれど、観測‥‥見届けたいと思います。