イマキュレートハート作品展終了!

おかげさまで、無事に展覧会を終わることが出来ました。
美術系学科の卒業生制作展ですが、絵画、陶芸、キルト、イラスト、造形など、多ジャンルある懐の深さがこの展覧会の魅力です。だから、音楽系学科卒業の私が楽器を作って持ち込んでも違和感がない。
とりあえず、自分の展示のご紹介をして、報告と致します。





これが「風の笛Ver.2.0」です。今回はC,C#,D,D#,E,F,F#,G,G#,A,A#,B,Cの13本を製作しました。
1オクターブ作るのは初めてでした。チューニングが甘いですが、今後何本も作って行くうちに、コツがつかめるようになるでしょう。また、漆を塗るとピッチが狂ってしまうみたいで、その辺も要練習でしょう。もしも今後も、チューニングを重視した笛を作るのならば。
何度も書いていますが、この笛には指穴がありません。しかし、管尻から指を差し込むことにより、驚くほど多彩な音を作り出すことが出来ます。いずれ、MP3ファイルなどで、音をご紹介したいと思っています。
笛はかなり好評だったようです。会場でウェットティッシュを備え付けておいたのですが、その消費量や来場者数から考えても、かなりいろいろな方が吹いて行って下さったようです。受け付けの当番だった方に聞いてみても、「みんな吹いて行ってくれた」とのことでした。20名以上はいらっしゃると思います。





さて、今回はインスタレーションという形を取りました。場所を設定し、そこに意味付けをするような展示方法と私は理解しています。大筋は間違っていないと思います。
インスタレーションになったのは、この鏡を設置したからです。当初の予定では楽器を展示して終わりにするつもりでした。材質はステンレスシート。それに和紙をつかって装飾したものです。「己観鏡」(おのがみのかがみ)という作品名です。
この鏡は、表面がぼこぼこ曲がっていたり、もともとの鏡面反射率が悪かったりして、自分自身がハッキリ写りません。沢山の面がある状態なので、自分が沢山写ったり、ぼやけて見えます。自分の姿ってそんなにハッキリと見えるのでしょうか? 鏡の前で楽器を吹いて、でも、自分自身がつかめない。今の自分の心境がまさにこんな感じです。ハッキリ見えない自分自身という聴衆のために、演奏をするという体験型の展示を行いました。いってみれば、鏡が絵の額のようなものなのです。


鏡を置こうというのは、材料の買い足しで新宿のハンズに行った時の発想です。もともと、なんとなく鏡のようなものを置いて、演奏する自分を観察する展示にしようと思っていましたが、どのような材質がいいか、すごく悩みました。大学でサンダーマシン(雷の擬音がする打楽器)として金属板を使ったことがあり、そのときにステンレスは写りがいいことを体験しました。その記憶が、私をハンズの金属板コーナーに走らせたのですが、……高い! まともなステンレスは高くて重かった。
しかし、拾う神はいるもので、それが今回用いた0.1ミリ厚の接着剤付きステンレスシートです。安価で軽かったのです。開けてみると、意外に表面がくすんでいましたが、それを逆用してみたら、自分がいいたいことがハッキリした展示になりました。ですから、今回は素材からの発想という感じが強かったですね。


今回の反省点は、鏡のこの意味まで伝えきれなかったかもしれないこと。楽器が面白いだけで終わってしまったきらいがあります。まあ、内向的なメッセージですから、分かる方にだけ伝わればいいという気もしますが、もう少し工夫をしたい所でした。その辺は企画意図を説明する冊子を置いたりしてみたんですが、もっと作品からストレートに伝わるようにしなくては。
収穫としては、人工ものとは言え漆を使えたこと。これによって、制作後1年で割れていた今までの「風の笛」の耐久性をのばすことができるかもしれません。また、演奏方法に、単音だけでなく指を使っての変化が加わり、瞑想楽器のみならず演奏楽器としての可能性が出てきたこと。それから、インスタレーションアイテムとしての可能性を発見したこと。さらに、前回よりも、皆さんからの好感触を得たこと。楽しんで行って下さった方が、前よりもずーっと多かった気がします。これは展示室を設けていただいたことが大きいかもしれませんが、やはり楽器の完成度が上がったことが一因です。少しずつ楽器制作者としての自信が出来てきました。


なお、今回、ネットでの宣伝の勝手が分からず、展覧会情報を発表するのが当日始まってからになってしまい、それは申し訳ないと思っています。次の機会に、ご来場頂ければと思っています。詳細未定ですが、楽器に関しては、秋くらいに毎年恒例の野外展示の予定があります。これはまだ本年度の詳細が決まっていないのですが。参加することになりましたら、今度は早めにしたいです。
懐かしい旧友との再会もあり、また当日、別会場で友人が吹奏楽の演奏会をしていてそれも刺激になったりして、それもあって今までで一番収穫を多く感じました。何かを発表する、自分の好きなことを見てもらう、そういったことがなければ人生がつまらない。オリジナル楽器としての可能性も開けつつありますから、「風の笛」を大事に育てて行こうと思っています。
ご来場の皆様、そして、展示をお手伝い頂いた皆様、他の出展仲間たち、その他、御協力頂いた皆さんにお礼申し上げます。本当に愉しかった! ありがとうございました。