最近のいろいろな事件とか事故とかの報道ぶりをみていると、中立な報道はあり得ないんじゃないか、という気がしてならない。
たとえば、ニュース一つ取っても……。おそらく放送局にはいろいろな情報が集まって来ているのだと思うけれど、アレは伝えてコレはカットして……っていう作業が挟まっているはずで。それは主観というか。
- 作者: 森達也
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2008/09/21
- メディア: 文庫
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たとえば、そこらへんの道路を映すのにしても、クルマの動きを追うようにして撮るか、静止させたカメラの前でクルマを通り過ぎさせるかで、印象は全く異なるのだ。この辺のことになってくるとディレクターの領域ではなく、カメラマンの領域だと思う。
この本にはおそらく、今のWebでのメディアのあり方までは触れていなさそうなんだけど。
こういうことをふまえて考えると、googleストリートビューってすごく怖いなと。
例えば昼の新宿と夜の新宿では、まるで表情が違う。道の印象も違う。春の上野と夏の上野も違うだろう。
でも、ある面でしか伝えきれはしないだろう。たとえ、技術が進化して世界中にWebカメラが設置されたとしても、高さや角度、機種、ボケ味等々、どうしても選ばれたり切り取られたりする部分がある。それを考えると100%の客観性が担保されたとは言えないんじゃないか? ……ストリートビューも、3D写真地図を作ったように見えて、実は3D写真集なんじゃないか、と、気が付いて来たのだ。
中立なものは、おそらくあり得ない。どこかにはかならず、作り手がにじむ。であれば、中立であろうと無理な努力を重ねるより、自分の主張を明らかにしつつ対案を紹介するようなスタンスの方が、よっぽど生産的なんじゃないかと思えてならないのだった。
2008年10月15日追記
以前あったTV番組『森達也のドキュメンタリーは嘘をつく』の感想は以下で書きました。
http://d.hatena.ne.jp/Yuny/20060327/p1