破壊と傍観者

真・女神転生 STRANGE JOURNEY(ストレンジ・ジャーニー)

真・女神転生 STRANGE JOURNEY(ストレンジ・ジャーニー)

こちらから攻めるために、つかの間の休息を取っていたデモニカスーツご一行様。奇妙な来客はあった(ルイさんとか言ったかな? 風雅だが油断できない不思議な人)が攻撃されるわけでもなかった。どちらかというと推移を見守っている、というか、観戦している感じだった。そんなのんきな存在もあるんだ。こっちは大変なのに。
運命の振り子の先を決めるということは、この旅の終着点は主人公が握っているのだろうか? ちょっと考え込む。
しかし、そのスキをついてか、食いしん坊が向こうから攻め込んできたのだった。なんとか撃退した。半分は予想していたものの(彼にしてみれば、この近辺にあるもっともおいしそうなものはレッドスプライト号。人間が結構たくさんいて、機械もあって、エネルギーがそこそこあるし)やはりやってこられるとびくついてしまう。


もう、打って出るしかない。


取るものもとりあえず追跡し、2階へと走ったが、どうやら亜空間に逃げられたようだ。
それにしても、落し物の多い悪魔だなあ……。今回の落し物を利用して亜空間へ飛べるアプリケーションを作成し、さらなる追跡。
ようやく、本当にようやくにして追い詰めた。


食いしん坊な彼の弱点は、少なくとも炎と落雷らしい。ほかにもあるのかもしれないけれど、とりあえず判明したものとしては。また打撃には打たれ強いようだった。攻撃面はシンプルな物理的攻撃が多い。噛みつかれたりすると結構痛い。相手は食べるつもりで攻撃してくるんだから相当なものだ。回復もするが彼らしい非道な方法だった。あのコンベアの肉はまさか「それ」の肉だったのだろうか? 部下じゃないのか? 気の毒に。
何度も危機に陥り、防戦一方になりながらも、あきらめずに闘ってなんとか倒すことができた。


しかし。彼の言うことも……やっていたことはめちゃくちゃではあるけれど、それでも一理はある、と思った。
豊富な食品を生産している一方で、飢えている人もいる。実際、現代の日本でも、経済的な困難などにより餓死者が出ていたりする。餓死はなにも発展途上国だけの問題じゃない。
しかし、捨てる食品、食べずに捨てるものもある。


実際、私自身、血中コレステロール量の制御治療中なので、卵の黄身は食べないようにしている。しかしそもそも、卵の黄身を食べられない健康状態というのが存在し、そしてこの私自身が罹患し、薬品を用いてまで治療を行わなくてはいけない状態になってしまったのが傲慢そのもののように思える。自分自身の食事の取り方、そしてそのカロリーや栄養成分の消費の仕方が、傲慢だったのだと。
食育というものがあるが、むかしはわざわざしなくても適度なバランスで食べられていたものが、今は欲望のままに過剰生産されて、生産されるから消費しなくてはいけなくて、あるいは消費したい、食べたいというニーズがあるから生産されて、わざわざバランスを破壊する努力を人間はしてしまった。


人間はこの状況の当事者だ。そして、犯人でもある。ルイなんとかさんみたいに、傍観者でいることはできない。
傲慢さを捨て、謙虚な生活者にならなければ、現実にも危機が起こるだろう。
たとえば、自国の食糧生産くらい、基本的には自国の生産物でまかなうとか。


それに、お金でお米が買えるということの落とし穴も気がつかされた。
自分は稲を育てたわけじゃない。でも、紙切れと金属片があればお米が手に入るこの不思議。考えてみればまるで魔法だ。
魔法には……やはり限度があるのではないだろうか。いつか破綻するのでは?


わたしはそんな数々の思いを秘めて、画面内の探索者たちを見守っていた。
次の世界は……ごみの山だそうだ。もう、どんどん、メッセージが直接的になってきているようだ。
どんなボスのどんな怒りを受けることになるのか、ある程度は想像ができるけれど、やはり進まなくてはならないだろう。


この奇妙な旅の行く末が怖い……。