DSi版「セパスチャンネル」クリア

日曜日、読書代わりに一日で読破……というか、クリアしてしまいました。ジャンルはRPG、ストーリー的にはSF。ちょっとMOTHER3っぽい印象もありました。現代を剽窃したような都市、ダウンタウン、田園などのステージ設定と、夢の中の世界っぽい場所の存在。死者の国ヨノアノ島という場所が出てくるのですが、これ、どう考えても「あの世の島」のアナグラムですし。そういう、場所設定や地名設定のセンスとか、キャラクターデザインのテイスト、理不尽にも警官とバトルするはめになる展開とか。犬が直立二足歩行であるいてしかも戦力のある仲間になるところとか。
キャラクターがそれぞれ違う場所にいて、切り替えてストーリーを進めていける部分は、「新・鬼ヶ島」とか「マニアックマンション」っぽいかな。こういう、マルチ視点のストーリーゲームは大好きですよ。1キャラだけでは見えてこない事件構造とか、それぞれのキャラクターの気持ちとかがわかってきて。特に、人間と犬で考えていることとか、見えてくるものが違っていたり、町のヒトが主人公の少年に話しかける内容と、犬に話しかける内容がまるで違っているのが面白かったですね。
いろいろなゲームに似ているといっても、いわゆるパクっているという感じは全然しませんでした。まあ、最近の自分は、まったくのオリジナルはこの世にまずあり得ない、という創作の現実的な原則のようなものを最近理解しつつあるせいかもしれませんけれども。その辺を分かっていない人から見たら、MOTHERのパクリとか言われてしまいかねないかも……。そういう批判とかは的外れなんだけどなあ。ジャンルは何でもいいから作品とか自分で創ってみたら、過去の模倣に自分なりの色を付けることがクリエイティブな行為なんだということがわかるとおもうのですけれども。最近、いろいろと模倣とオリジナルに付いての理解不足な言説が、ネットとかマスメディアとかを問わず気になって仕方が無いもので。


閑話休題。ゲームの話に戻ります。
ストーリーの出だしは、まあ、よくある記憶喪失もの。気が付いたら知らないベッドの上で僕は寝ていた。さて、自分の名前も思い出せない。それに、なぜかポリス(この世界には公権力的な意味の警察は無く、まあ、警備会社みたいなところが大手企業を守るのが公的な警察力にやや近い仕事をしているらしい)がいっぱいいる……。どうしたものか。
とりあえず、自分は誰で、なんでこの部屋にいたのかを思い出すために、少年は町を駆け回ることになります。そのうち、影(人間の足元に普通はできる黒い部分ですね)の無い少女、二足歩行するふしぎな犬、フリーのラジオDJとして大衆の支持を集めるセパスチャン、といった仲間とともに、この町でおこっている異変の真相を探ることになるのです。


ゲームシステムというか、戦闘の仕組みは普通のRPG的。パーティ全員でまとめて攻撃をする「連携」は、特にストーリー後半での4人行動時の通常戦闘で重宝します。さっさと敵を倒して先に進みたいですから。これを使うと虫の大群のような手間取る敵を一瞬で倒せますし。オートが無い分、このシステムが入っているのかもしれません。
レベルが上がると体力(いわゆるHP)と知力(同じくMP)の上限値が上がり、また、「DDS女神転生」のように各パラメータに1ポイント追加できます。このポイントの配分状況を、移動中ならいつでも変更できるのが面白いところ。ある場面では攻撃重視、ある場面では守備重視といったパラメータコントロールが簡単にできる。これは面白いですね。また、このパラメータ値を1ポイント入手できるアイテムもあり(ドラクエでいう「力の種」みたいなもので、割り振るパラメータ対象は自由)、特に最終盤では重要なものになります。


ところで、インターネット上でこのゲームの攻略方法を調べてみたところ、最終盤のバトルが相当厳しいという声が多数見つかりました。
実際やってみて、これは相当考えてパラメータコントロールしないと難しいなと。







以下は、ネタバレになりますが。
とても高い場所で「局長」と戦うバトル(最初はこれがラスボスかと思いましたが)ではレベル22程度あれば良かったのに対し、そのあとの最終章というべき部分の2つのバトルでは結果的にはレベル32が必要でした。


「蛇木」「観測者」撃破のためのいくつかのポイント。

  • 放送局の屋上に上がれる段階になったとき、屋上の右側にあるドアから地上に降りられます。それから公園に行くと、あわてて避難したためにいろいろと困っている市民の皆さんから何かと頼まれごとをします。一つ一つ解決していくと、能力ポイントをアップできるアイテムを何本ももらえるので、ぜひチャレンジをおすすめ。また、このクエストの制覇で公園の入り口付近の青年からもらえるあるアイテムが、最終的なエンディングを見るためのキーになっているようです。
  • 放送局の屋上には、ドラクエで言うところのメタルスライムのような敵キャラクター、つまり、すぐ逃げるし攻撃も当たりにくいけど、撃破できたら大量の経験値がもらえる存在が出現します。「はえの霊」というシュールな敵です。「連携」が2ターン当たれば倒せます。はぐれメタルよりは倒しやすい印象でした。
  • 下町はプルトップを拾いやすい気がします。もしそのように設定されているとしたら、町の環境を想定しての演出なのかもしれません。
  • パラメータは4人全員「精神力」をマックスに、次いでセパスチャンとボーイは「攻撃」に、ガールとワンは「守り」にポイントを集中させました。これには理由があります。最終2戦でもっとも苦労させられる敵の攻撃方法が「バッドラッシュ」。これのダメージを減らすには「守り」よりも「精神力」をあげる方が遥かに有効でした。最初は「守り」ばかり上げていて苦労して何をやっても倒せなかったのですが。それから、「特殊技」での攻撃ダメージは、精神力の高さに加え、物理的な「攻撃」の値の高さも関わるようです。ですから、攻撃担当の2人は「攻撃」重視。回復担当の2人はHPが低いので、敵の通常攻撃にも耐えて生き残るためには「守り」を上げるのも重要です。「素早さ」に関しては、敵が相当素早いのでどう設定しても無意味。特殊技を習得できる程度の設定で十分です。


というわけで、私のクリアデータでの最終的なパラメータ表を掲載します。

名前 レベル 最大体力 最大知力 攻撃 守り 素早さ 精神力 重要な特殊技
セパスチャン 32 247 196 14 6 8 16 セパスドライブ
ボーイ 32 221 198 16 8 7 16 から回り
ガール 31 200 217 7 14 6 16 やすらぎの詩
ワン 31 235 157 8 12 7 16 呼び起こす

なお、最終2戦では重要な特殊技、とした技を中心にすると戦いやすかったと思います。前の二人が使う技は消費知力が少なめですが、「精神力」と「攻撃」がこれだけ高いとかなりの威力になります。普通の打撃攻撃は使いませんでした。知力が切れたらガードしてしのぎました。後ろの二人のこの技の組み合わせなら、ステータス異常にも回復にも毎ターン対応できました。どちらかのキャラクターの知力が切れたとき、ガードしながらしのぎきれるかどきどきさせられましたけれども。


それから、最後の方で「観測者」が言っていること、本当のエンディングで起こった出来事が、奥深いなあと思いました。ちょっとSFを読んだことが無いとピンと来ないかもしれませんが。以下はエンディングに絡むネタばれ。でも、ゲームをクリアしたことが無いと分からないようには書きますけど。













彼の言っている「フラクタル」というのは、単純な同じ形の図形を何個もつなげて、結果的に複雑な図形を描く方法です。パッと見では複雑な図形に見えるのですが、よく拡大して見ると、同じ正三角形をたくさんつなぎ合わせただけ、だったりとか。
彼はこの世界の構成がフラクタルだと見抜いて、見守り続けている存在で。探究心の証として非常事態に困惑した人々の寄せる困難なクエストを解決した勇者(証)に、彼自身を打ち倒すという出来事(刻印)を世界に刻ませることで、4人が優れた人間であり、新しい因果(局長をこの抽象世界の中で倒すこと)を起こす資格があると認めたのでしょう。


エンディングに出てきた平行世界というのは、パラレルワールド、というと少しは聞いたことがあるかもしれません。よく「ドラえもん」にも出てきていたのですが、鏡の中にもう一つ別の世界があって、自分ではないけれど自分である存在が生活している、といった設定のSFがよくあるんですよ。


おそらくこのゲームの世界観では。
フラクタル図形のように、同じ図形がたくさんあって多様な形を生み出しているあれのように、同じ人間がいろいろな次元で存在していた。ただ、今回は特殊な事態で……ある世界の中で、外の世界と途切れてしまったと気が付いた人たちが、外部とつなごうとあがいたのが原因で、結果として人々の心と体がちぎれるという異常が発生してしまった。このままではその世界が壊れてしまう。そこで、偶然とはいえほかのパラレルワールドへの接続、無事な世界と壊れた世界がつながれたことで、ことの解決がなされたのだった。局長を抽象世界の中で倒したことで、局長は別のパラレルワールドへ飛び、この世界の存在を知らせて接続できるきっかけになった。このことでまた、きっと、新たなドラマが刻まれていくのだろう……。


一つの世界で人生が終わっても、ほかの世界に飛ばされるだけで、命は永遠に続く。
そんな世界観のストーリーなのかもしれません。
抽象世界で、ある住人が「いのち つづけ」とつぶやいていましたが、きっとそのことなのではないでしょうか?


そうそう、音楽もこの価格帯のソフトとしては結構良かったです。抽象世界のBGMが耳に柔らかくてお気に入りですね。
ストーリーは実際の、私たちが生きている現実を思わせる出来事が多くて、知的に興奮しました。放送メディアの意義や国家国民制度とは何かを問うような硬派な内容が非常に良かったと思いました。