ベビーカー通勤論争

通勤や帰宅で混雑する電車にベビーカー、車いす、大荷物のヒト等、他の一般客より明らかにスペースを取るヒトが乗車するとき、やはり迷惑だなあと正直なところは思ってしまう。
これ、東京の鉄道がどうやってもキャパシティ以上の乗客を乗せている以上、誰でも多少はあるのではないかなあと。


自分の場合、高校時代に、トロンボーンを運んでいるときは、本当に申し訳ないと思いつつも何とか空いている車両を見つけて入れさせていただいていたので、乗る方の気持ちも乗られる方の気持ちも分かるつもり(当時、区民バンドと高校の吹奏楽部を掛け持ちしていたので、区民バンドの平日練習の翌日は、通勤ラッシュ時間に楽器を運搬せざるを得なかった。早めに出ても結局はラッシュだった)。


うちの地元の路線は朝でも山手線のアレほどには混雑しないけれど、住宅地路線なので、通勤ラッシュと学生ラッシュが重なってしまう。大学生ならまだいいのだけれど、小学生がランドセルを背負って乗車するとか、ベビーカーではないにしても小さな子どもが乗るときとかは非常に心配になる。
逆に、たとえば自分が事故で足を折ったら、通勤に難儀することは目に見えている。あの電車の中で松葉杖を突けるか……自信はない。


でも、考えてみれば、どんなヒトにも電車に乗る権利はあるわけで。切符を買っている以上は。
子どもでもオトナでも。
これ、女性専用(優先)車両問題とも通じるところがある気がする。
どんなユーザにも平等に鉄道サービスを安全に提供すること、という鉄道会社の業務に、どうしても無理が出てきていて。たとえばチカンが出たりするから女性専用(優先)車両ができたりしたけれど、男性差別だという声もある。
キャパシティは限られていて、それはユーザがマナーを守れば多少は円滑に利用できるかもしれないけれど、やはりジャッジメントする側が何か手を打たなければ、無理ができてしまう。
ただでさえ大変な子育てをしながら、さらに都心の会社に勤務して、というのは、子どものいない自分には想像できないほど大変だろう。だから、ベビーカーを使っている人には優しくしてあげたい。でも、そもそも優しくできるだけのキャパシティがもともと車両や交通システムに残されていないのだ。
だけれど、それを利用者間マナーの問題にするのは筋違いのような気がする。


あんまり障害者とか健常者とか、そういうのは言いたくないんだけれど。
五体満足な成人でないと乗れない、という状況が都会の電車にはある。
身長が140cmないと乗れないとする遊園地のジェットコースターみたいな、明文化されたルールはないけれど、事実上ラッシュアワーにベビーカーはキケンだと思う。
そして、ジェットコースターは乗らなくても困らないけれど、通勤電車はそうはいかない。
働かなくては生きていけないもの。
自動車もなんだかんだで高いし、自宅だけではなく勤務先の近くでも駐車場を確保するとなると、勤務先で駐車スペースを持っていなければそれだけで月に5万や6万は軽く飛んでしまうだろう。現実的じゃない。


何だか、これを書いていて、生存権の問題のような気がしてきた。
少子化してしまうのは、ほんとに無理ない話で。
結婚したい、したくないとかじゃなくて、実際、結婚して子どもを育てるというのが一種の『贅沢』になっているのが実感だ(言葉は悪いけれど!)。
ひと昔前だったら誰でもしていたことなのだが……。
この状況で子どもを育てている人たちを本当に応援したい。


それから、安全のために、マナーに頼らずにベビーカーなどを乗せられるような方策を鉄道会社には講じていただきたい。
たとえば、ソフトウエア的な意味合いできそうなこととしては、ラッシュしやすい時間をもっと告知し、ハッキリとこの時間帯は大きな荷物の方やベビーカーの方などはご遠慮くださいとか、少なくとも危ないというようなことは言った方がいいと思う。それから、逆に比較的安全な時間帯も言った方がいいと思う。もしかしたらクレームがつくとは思うけれど、こういった基本的な告知不足で事故が起こるよりはましだと思うのだ。無理に詰め込んでトラブルが起きてホームからヒトが転落したらどうするんだ? 現状、どうやったって無理があるのだから。混みやすい時間帯をはっきり言ってもらった方が、ユーザとしてもありがたいのではないか?
それから、シルバーシート的な意味合いの延長として、こういったひとの優先車両を一部の電車でいいので導入するとか(ある時間帯、全部にやると他の乗客から白眼視されそう……考えすぎだろうか)。


本来は、誰でもどんな時間帯でも安全に乗れるのが理想だとは思うのだけれど。
東京のひずみだと思った。