第2回芸術科学会展 DiVA 2nd

芸術と科学を融合する新しい領域を研究する学会「芸術科学会」が、第2回目のコンテストを行い、その入賞作品展が2004年5月20日(木)、21日(金)に東京工業大学で行われました。webページはこちらです。
http://diva.art-science.org/

※このページによると、21日にNHK BSの「デジタルスタジアム(通称デジスタ)」が取材に来たそうで、もしかしたらそのうち、放送があるかもしれません。

本日、夜9時まで展示しているということと、職場からそれほど遠くないこともあって、ちょっと見てきました。仕事のあとであまり時間がなく、全作品を見ることは出来ませんでした。全部面白かったのですが、特に印象深い物をかいつまんでご紹介します。なお、人名の敬称は、省略させていただきます。


1)「through the looking glass」大賞
筧康明+苗村健(東京大学大学院情報学環・学際情報学府)

皆さんはゲームセンターでエアホッケーをやったことはありますか? そうでなくても、TBSの月曜夜にやっている「東京フレンドパーク」の最後の競技、「ハイパーホッケー」はご存知でしょうか。机の上に丸い板状のパックをすべらせ、自分のゴールには入らないように丸い板でパックを弾き、相手のゴールへシュートする対人ゲームです。しかし、この作品は自分一人でエアホッケーをし、自分自身と対戦できます。どうなっているかというと、現実空間の自分側に、実際のホッケー盤があるのですが、目の前に特殊な鏡が垂直に立っていて、自分とホッケー盤が映されています。ホッケー盤にはコンピューター画面が仕掛けられていて、鏡の向こうにパックを打ち込むと、鏡の自分のゴールをパックが襲うという仕掛けになっているのです。そして、鏡の向こうのゴールも、自分の持つ板を動かすことによって守り、パックを打ち返すことができるのです。先ほどのDiVAのWebページで紹介されているチラシの写真がこの作品です。これはもうクセになりそうな不思議なゲーム感覚でした。このゲーム、ある程度ポイントが入るとゲーム終了になるんですが、自分が勝ったのか、自分が負けたのか、よく分からなくなります。滑走感や画面などを改良して、ぜひ、ゲームセンターに出して欲しいと思いましたが、作者さんの解説でゲームでありながら自分自身と戦って行くという哲学的な作品でもあると聞き、感心しました。

2)「Touch the Sound」入選
早瀬将一(東京工科大学大学院メディア学研究科)


四辺に枠を取り付け、その上を転がすスーパーボールが飛び出さないようにしてある机があります。スーパーボールは色とりどりで、これが転がることによって、コンピュータが色を感知して、音を奏します。色ごとに楽器が決まっていて、ボールが右に流れると音も右側から、左に行けば左から、ステレオで聞こえてきます。一番大きなボールは丸い輪っかの上に置かれて転がらないようになっており、このボールの位置で曲調が決まるのです。
自分が音楽が好きなせいもあって、この作品がもっとも刺激的でした。実際体験すると、ボールが枠にぶつかるとアクセントが効いたりして、とてもエキサイティングな演奏が楽しめます。DJっぽい作品です。

3)「Alice Fantasia -物語とMR技術の融合によるファンタジーを題材とした新しい絵本表現の提案-」入選
松本恵理子 他9名(カタログにはありましたが省略させていただきます)
慶応義塾大学大学院政策メディア研究科


総勢10名のチームで作られたのは、MR技術を駆使した立体絵本でした。なお、このMR技術とは、バーチャルリアリティを一歩進めた概念で、現実空間のなかにリアルタイムで仮想空間を取り込むという物です。特殊なゴーグルを付けると、中にリアルタイムな表示条件でいろいろな映像が現実空間にかぶせるように映る物が研究されているそうです。語源は、Mixed Realityの略だそうです。
では、この立体絵本にどのようにMR技術が使われていたか。
この絵本、普通に読むことができるかわいらしい装丁の絵本なのですが、コンピュータにつないだ特殊なゴーグル(眼鏡)をかけて見ると、絵本の上に3次元のうさぎが出てきます。そう、アリスに出て来る三月ウサギです。ストーリーは夢の中に迷い込んだアリスが、いろいろな童話の世界を探検し、最後にまた自分の世界にかえって行く、というものです。三月ウサギはこの物語に読み手を誘う案内人で、この本の楽しみ方を教えてくれたり、お茶を飲みながらアリスを見守ったりしています。しかし、音声も絵本の文面も、すべて英語なのでした。絵本の各ページには、四隅に特殊な枠に囲まれたマークがあり、それをゴーグルのセンサーが感知してストーリーが進んで行きます。また、右ページ下部にある鍵穴に鍵を差し込むと裏ストーリーが始まったり、童話の有名キャラクターのかかれたカードをページに乗せると、欄外をそのキャラが歩いてきたりと、見ているだけで楽しめます。本当は、キャラクターを乱入させたりしたかったそうですが、分岐を増やすなどは難しかったそうです。この作品は本の方に電気的な仕掛けはなく、本の中に施されたマークをゴーグルのセンサーが読み取ることによって操作されるようになっています。もしも本の中に入れたらって、小さい頃に空想したことがある子供と元子供の方であれば、きっと楽しむことが出来るでしょう。


実際には15点作品があり、そのうち9点を鑑賞してきましたが、文章の書きやすさと作品そのものの印象で上記3点を選ばせていただきました。
昨年もこの時期に、同じ会場で展覧会を開催したとのことで、こういうのは年々レベルが上がって行く物だと思うので、来年も行けたら行ってみたいと思います。
いつもの生活には無い世界を体験し、とても楽しかったです。制作者の皆さん、関係者の皆さんの今後に、幸多いことをお祈りいたします!