Wordの角のあのマークは何という?


Microsoft Wordを使っている人ならおなじみのこのL字型のマーク。編集領域と余白の境界を表わしているが、いまいち名称が分からなかった。「Microsoft Office Online」やヘルプ、「できる」シリーズなどを見ていても表記されていない。
余白マークを表示しない−裁ちトンボを表示するチェックボックス:Word ワードの使い方」によると、一応、これの名称は「裁ちトンボ」というらしい……。どう見ても切るところではないのだけれど……。「トンボ」は、印刷物の断裁の位置を表わすものではないか? あまりにも違和感があったので、今、仕事で学生さん向けに作成しているWordの使い方マニュアルでは「編集領域の左角にテキストボックスの端を合わせる」のような表記にしておいた。


ちなみに、「InDesignの勉強部屋_CS3_ガイドとグリッド」によれば、DTPソフトであるInDesignでは「マージンガイド」と呼んでいる。


ということは、Officeの英語版を日本語化するときに、訳語を適切に当てなかったのでは……? Word 2007の日本語版と英語版でWordのオプション画面を表示してみた。画像をクリックで拡大できる。

先ほどの記事にもあったけれど、上記のように、日本語版では「裁ちトンボ」と呼んでいるようだ。

同じ設定画面を英語版で表示すると、「crop marks」と呼ぶらしい。
「トンボとは 「トリムマーク, trim marks, register marks」: - IT用語辞典バイナリ」によれば、英語では 「trim marks」とか「register marks」と呼ぶ。このページの表記の仕方からして、「crop marks」はあまり一般的ではない用語のように見える。そういえば、Illustrator 9ではトンボ型のパスを自動で描画する機能を「トリムマーク」と呼んでいた覚えがある。
しかし、いずれにしても……Wordのあの場所に出す印はcrop markと呼ぶべきではないだろう! guideとかならまだ分かるのだが。


同様に、以前からWord用語とDTP用語の間の隔絶を強く感じていた言葉として、「行間」がある。この用語については以前、DTP用語の「行間」・「行送り」との違いを記事に書いたが。
ことのついでにこの用語も日英比較してみよう。


行間=Line spacing。「行間とは (line spacing) ぎょうかん: - IT用語辞典バイナリ」でも一応そうなっているけれど、やはり「CSSのプロパティである「line-height」や、Wordの「行間」は、行と行の間の幅としての行間ではなく、行の上端から次の行の上端までの幅である行送りを設定する機能」とされている。ちなみに、同じ辞書で「行送り」を調べると、「line feed」となっていた。


つまり……Wordは便利なソフトウエアではあるが、WordでDTP的な用語を覚えないように、教える側としては配慮するべきなのだろう。
あまりにも用語が独断的、不正確すぎる。印刷業界にはアプリケーションの種別によらないきちんとした用語が確立されているわけなのだから、それらの用語をWordにも採用するべきだったのではないだろうか。


またつまらぬ理由を知ってしまった。WordがIT教育に適さない理由を。