『デビルサバイバー オーバークロック』に見るIT機器習得法

3DSで(日記には書いていないような気がしますが)『ゼルダの伝説 時のオカリナ』を表裏クリアしてから、次にプレイしたのは『THE 裁判員』。
で、その次に……というわけで、これ。

デビルサバイバー オーバークロック - 3DS

デビルサバイバー オーバークロック - 3DS

デビルサバイバー オーバークロック』をプレイしています。いわゆる「女神転生」シリーズでは真・女神転生 ストレンジ・ジャーニーの次にチャレンジしていることになりますね。
現在、シナリオの中盤に入りつつあるようです。人間の仲間が一人増えた直後。
SRPGは自信がなかったので、とりあえずイージーモードでやっています。SRPGというか、シミュレーションゲームシステムでのバトルって、今までとっつきやすくなくて、できるかどうか不安だったのですが……無用な心配でした。


デビルサバイバー』での悪魔召喚プログラムを搭載するのは、ポケットサイズのコンピュータ、『COMP』という機器です。ゲーム内で表示される限り、どう見てもNintendo 3DSのようなマシンデザインなので、実際にCOMPを操作しているような感覚でゲームを楽しめます。
全く予備知識がないユーザを、新しいOS・新しいシステムにどう引き込むか……という流れは、IT教育業界の隅っこで働く者として非常に勉強になりました。
というわけで、初心者に対する機器説明の在り方という観点で、このゲームの導入部を見てみたいと思います。


シナリオ導入部では、主人公のいとこである天才プログラマーからCOMPを託されます。本来のCOMPの使い方は3DSと似ていて、簡易なインターネット&メールができるゲームマシンといったところ。ここまではプレイヤー自身も普段使っている3DSですから、簡単に理解ができます。
しかし、いとこからもらったCOMPは、なぜか改造されていて、見たことがない画面が表示されている……とのこと。ここで、このゲームならではの『COMP』という機器について、プレイヤーの好奇心を引き出します。
そこで、最初の簡単なバトルがあり、否応なくCOMPを使わなければ生きていけない(=ゲームが進まない)状況になりました。
その後は、シナリオの進行に従って、いとこからのメール(個人的なメッセージもあれば、システム説明もある)で機能が追加されていき、少しずつ使いこなせるようになっていく……という流れでした。
メールだけではなく、プレイヤーのキャラクターには2人の友人(高校の友人ということで、対等な立場)がいて、彼・彼女との会話によって、さらにCOMPへの理解が深まるようになっています。説明書だけではなく、話し言葉で理解できるわけです。


最初からCOMPの全機能が提供されていたら、かえって使いこなせなかったでしょう。
難しすぎてゲームを止めてしまったかもしれません。
しかし、このゲームをクリアしようと思ったら、COMPを使いこなすことは重要です。最初は限定した機能を提供し、だんだん開放していくというのは正解です。


プレイヤーのモチベーションにかかわるゲームシナリオにもリアリティが感じられます。
まず、時代は現代。そして場所は東京山手線内。建物名などにはパロディがありますが、実際の施設とそっくりで、容易に想像ができます。特に私の場合は都内在住で、行ったことがある場所が多数出てきますし……。
それから、災害が身近に感じられるようになった最近ですので、もしも何らかの理由で東京に閉じ込められてしまったら? 何日も停電してしまったら? というのが、荒唐無稽だとは感じられないのです。実際、3月11日の大地震だけではなく、先日の台風でも帰宅困難者が発生しましたし。私は地震の時には職場に宿泊しましたから*1


リアルに想像できる状況が端的な言葉とグラフィックで語られ、かえって想像力を刺激されるので、この状況を何とかしなくてはいけない、という気持ちが自然とわいてきます。
そして、このゲームの大目標、中目標、小目標が自然と理解できるのです。
大目標は、なぜか封鎖されてしまった東京山手線内からの脱出。
中目標は、ともかくその日を生き延びること。
小目標は、その状況状況でプレイヤーの手にゆだねられます。シナリオを進行させてもいいですし、フリーバトルで経験値やお金を稼ぐとか、新しい仲間の悪魔(仲魔)を得るためにオークションに参加する、などなど。*2


クリアすべき目標が明快。与えられる目標に対する道筋は自分なりに組める。そしていつの間にかCOMPを使いこなせるようになれる……。実際には、情報処理としてはかなり難しいことをやっているはずなのですが、ゲームであれば少しずつ着実にミッションをクリアできるのです。モチベーションの引き出し方も重要です。リアリティあるシナリオの中でその日を生き残る、という明快さ。
そして、ある程度使いこなせるようになった今(シナリオ上では3日目)。
シナリオ進行はもとより、COMPだけでもかなり楽しめます。


具体的に問題を提示し、技術習得は何のためなのかを示し、簡単なことからステップアップし、短期間で集中して学べること。
そして、趣味レベルにモノづくりを始められ、それが現実の問題を解決する糸口になるかもしれないこと。
ストーリーの提示と解決するための情報技術。それを習得するための適切な課題の提示。
IT教育のためのメソッドやチュートリアルを作る時にも、このようなゲーム的技法は非常に参考になると思いました。

*1:大学という職場はそれ自身が避難所でもあり、それなりに防災の準備ができているので、十キロ以上も無理に歩いて帰宅するよりも安全と判断したため。それでも帰宅できないのは不安だった。一応徒歩帰宅の練習はしてあるが、余震がある夜間には、そうそうできるものではないのが現実だった。

*2:今作はRPG的なランダム戦闘ではなく、シナリオの関係で戦闘がある場合にも予告マークが出ていますので、プレイヤーの現実の時間に合わせてゲームを進められるのも利点です。たとえば、30分くらいまとめてプレイできるならそういった大きな戦闘にチャレンジするとか、あまり時間がない移動中であればさっくりと終わるオークションや合体をやるなど、かなり自由に時間を使えます。