『ガイコツ書店員本田さん』と『ねほりんぱほりん』は新しいモザイクということ

なんでこの2作品を並べてみたくなったのか。この秋のテレビ番組で、単純に自分が毎回観ているわけだが、この二作は新しいタイプのドキュメンタリーってこともあるからだ。
まず、『ガイコツ書店員本田さん』。本作は元々ネット発だったコミックを今期放送のアニメ化した作品だ。とある大型書店に勤務する『本田さん』を主人公に、個性豊かなお客さんや同僚、取引先の皆さんの悲喜こもごもを描いたお仕事漫画だ。本田さんは実は作者さんそのものとのことで、作者さんが勤務していた書店の様子をほぼそのまま描いたと聞いた。
しかしこの本田さん、なぜかガイコツの姿をしている。が、本作では違和感がない。もちろん、現実にある本田さんの勤務先では普通の人間なんだろうけど。同僚の皆さんもなぜか紙袋をかぶっていたり、お面を付けたりしている。どんな面々なのかは原作の連載ページを見るといい。
https://comic.pixiv.net/works/1764
で、もう一つ気になっているのが、人形劇の形でのリアルトークショーである『ねほりんぱほりん』である。
http://www4.nhk.or.jp/nehorin/
こちらも聞き手はモグラ、インタビューされる様々なお客さんは豚で表されていて、人間そのものは使わない。トークの様子はNHKの伝統的な操演技術を駆使した人形劇で行われ、アニメで言うところのプレスコみたいな作り方で、先にお話を聞いてからそれに合わせて人形の演技を付けて収録しているとのこと。
どちらも現実にあったことを描いたドキュメンタリーである。かたやアニメ(漫画)、こなた人形劇ではあるが。
しかし、登場人物は直接の見た目は人間ではない。だが、それが逆にデフォルメされたリアルさをかえって感じさせるのが、なんだか現代的なのだ。
ねほりんぱほりんの人形劇によって顔出しを不要とした技法を、新しいモザイクだと評したのをどこかで読んだ。こういうインタビューもので、顔出しできない人にはモザイクをかけるのが一般的だが、それでは服装とか顔の表情がわからない。
人形劇であれば本人の本当の顔を隠したままで、本人がどのように話したのかを表現できる。
それはもしかしたら『本田さん』での表現法にも通じるものがあるように思った。
なんにしても、この二作に通底するテーマは人間の面白さだろう。『本田さん』を読むと本屋さんの大変さも少しはわかるし、接客業ゆえに出会う面白い人のことには興味が湧く。『ねほりんぱほりん』に至っては、締めの映像はいつも『ニンゲンって面白い』ときた。
良い作品に出会えた幸運に感謝したい。