人生何度目かの、笑うミカエル

先日、友人とLINEで話していてふと思い出した作品。
思い出したというより、最近の自分にはルドルフと点目が足りないことに気がつかされてしまった。
ルドルフとは、クマである。
とあるオペラ歌手氏に魂を与えられたクマである。
テディ・ベアである。
こともあろうに自分は、このルドルフとオペラ歌手のおハルさんの顛末をすっかり忘れて、本書をウン年ぶりに再読するという、とてもとても危険な行為を致してしまったのだった。
やはりルドルフはかわいい。
かわいいは正義だが、かわいいは暴力でもある。触れる者が対象物を愛でずにいられないからである。
すっかり可愛らしさとけなげさにほのぼのとした矢先、あの痛烈なるオチである。
主人公たちは、小遣いで花を届けて欲しいという。読者の想いも同じである。
喪失感そのものというより、喪失したことが惜しいという感じ。それくらい愛でたという感じ。
これが今の自分には足りなかったのであろうか。
喪うが心底惜しまれるほどに、愛するものが今は確かに無いのである。
ともあれ、現実を生きよう。
合掌。