『スウィーニー・トッド』の試写会を見て来ました。

新宿は厚生年金会館ホールでの『スウィーニー・トッド』死者会、違った、試写会を見て来ました。
公式サイトは以下。
http://wwws.warnerbros.co.jp/sweeneytodd/


怖い映画は慣れていないので……どうなることやら、でも、ミュージカル映画で怖い系ってあんまり見たことないし……これも勉強かな……とか思って足を運びました。
画面全編の暗い色遣いは、「オペラ座の怪人」を思い出しましたね。昔のロンドンを舞台にした映画って、哀しいとか怖いもの、それも身分構造に起因する理不尽な哀しさに彩られた怖いお話が多いのかなあ? 殺伐とした都会で、子どもも大人も自分だけが生きることに懸命だったし雑多だったしで……。


正直、怖すぎるシーンでは眼をつぶってしまいました。でも、それでもお話の独特の緊張感でガクガクブルルルルです。
人間、脳みそのネジが外れてしまうと、末路は自業自得になっていくものなのかも……(公開前の作品だから結末は書きませんが、正直あんまり救いはありません)。理性って本当に大事だ。人間が人間であり続けるためには!


ということで、怖い映画が嫌いな人にはお勧めしないですが(正直、しばらくハンバーガーやミートパイは食べられなさそう……でも、妙にすっきりしたカタルシスもあったりする……なんだろうなあ、これ?)、怖い映画が大好きな方にはいいんじゃないかな。画面構成は芸術的だったし、時代の香りとか、別世界をすごく感じたし。
この会場で見ると、ホールが大きいから映像の迫力も満点でしたね。エンドロールが始まったときの、観客席のほっとしたようなざわめきが印象的でした。放映中は咳ひとつ出来ないほどの緊張感に包まれていましたから……。


ただ、殺意の中の哀しみといった繊細な表現においては、「オペラ座の怪人」の方が上だとは思いました。あれは半端じゃないから。この映画は憎しみに堕ちた人間の末路と恐怖がすごかった。歌で表現するから、現実離れした心理描写で、風刺ごと心の中に入り込んでくるのですよ。映画の英語が分かる人ならもっとびりびり来たかも。字幕でも心に刺さり込んできましたからねえ。


それと、作品のキーワードアイテムでもある「カミソリ」が意味するところ……。鋭く切り裂くのはおひげだけにしてほしいものですが。
生と死は鋭い銀によってすっぱりと切り裂いてしまえるほどはかないものだとすれば、今、自分が曲がりなりも生きていることが大切だとも感じました。
怖いくらい、綺麗なんですよ……あの「カミソリ」。あれが画面に登場するだけでドキドキした。たとえ、流血が無いシーンだとしても、あれが流血を意味するように見えて……。
なんというのか、緊張感100倍増加アイテム?


画面が暗い、モノクロとは言わないまでもほぼ全編暗いか青白いので、赤い流血がますます怖い……のです。
明るい夢のシーンは余計に極彩色に見えて、それも現実離れしていたし。
普通にまっとうに生きるのが、この映画の世界では日常ではないんだな。あのパイがブレイクするシーンの狂喜乱舞の滑稽さ、そしてまともに生きられそうな環境にありついた元孤児の少年の純粋な物悲しさ……。
怖い映画であると同時に、現代世界への風刺作品なんでしょうね。世の中は利用する側とされる側しかない、ってデジタルには私は決して思わないけれど、いいたいことは分からないではないです。


ともあれ、都会の雑踏の中で、「おひげを剃っていきませんか? 今なら無料サービス致しますよ!」なんて、真っ白なお顔に真っ黒な目つきで声をかけてくる怪しいおじさんが居たら、たとえ残業続き*1で3日剃ってないような状態だとしても、とっとと逃げた方がいいでしょう!(苦笑)いやホントに。行く先がミートパイになっていた……としても……いやはや。
これ以上はネタバレだから書きませんが、身だしなみは自分で整えましょうね。まったく。
お仕事ばかりで鏡も覗かないような生活をしていると、いつか、足元をすくわれるかも?

*1:いや、自分のことではありませんけどね。都会で働く企業戦士な皆さん、お気をつけ遊ばせ、ということです!