イピクレスと再会……そして……。

ヘラクレスの栄光 ~魂の証明~

ヘラクレスの栄光 ~魂の証明~

砂漠の奥深く、エジプトタポスの地下5階……。不死身ご一行様を待ち受けていたのは、タポスのコアとその化け物ゲラス。
ゲラス……? 神話に出てきた記憶が無いんだけど……。出版社とかにいそうですね。
ヘラクレス、今週末が原稿締め切りですからね。ゲラ刷りも押してるんですから、ちゃんと期限を守ってくださいよ!」
「わはははは! このヘラクレス様の手帳に、締め切り破りの文字は無い! シュキオン、言われなくても大丈夫だ! キミは編集者として、文字フォントでも選んでおいてくれたまえ!」
「……もうネーム見てきっちり選んであります。あとは原稿だけなんですよ」
「(しゃかしゃかしゃかしゃか……と、丸ペンを走らせながら)分かった。じゃあ、泥舟にでも乗ったつもりで……」
「それを言うなら大船、です。もっとも、あなたの船は大穴でも空いていそうですけど……」
「わはははは! ならば話が早いではないか。穴に入りたいときにでも使ってくれたまえ!」
「……意味が分かりません」
……締切日当日……。
「こんにちはヘラクレス。原稿を受け取りに来ましたよ」
「ぐぉ〜ぐぉ〜」
「昼寝……。余裕だなあ。原稿は、……と……!!!!!」
ものすごい筆文字ででかでかと大きく!
「な、なんだこの原稿は! ネームと、違う……? というか、これじゃ載せられない! ちょっと、ヘラクレス、起きてください!」
「ごがぁ〜ごがぁ〜」
「あああああ。寝てるし。この16ページ、1ページに付き1文字の書き文字で『主人公危うし! 敵の攻撃が炸裂!』ってしか描いてない……! 確かに打ち合わせでは、『わはははは! 読者の想像力を喚起する究極の漫画作品として結実させてみせる。そのためにもセリフは1個だけ、あとは言葉のない世界で展開するんだ!』とか何とか言っていたけれど、ネームにはそれなりのコマわりをしていたのに! というか、こないだの丸ペンを走らせていたあれはなんだったんだ! ……丸めてごみ箱に捨てられてる! ちょっと、ヘラクレスってば〜〜!」
「く〜か、く〜か(幸せそうに寝ている)」
「ゲラ刷りゲラ刷りゲラ刷りゲラ刷りゲラ刷り! どうしよう!」

このあとどうなったんでしょうね。ちなみに、ゲラ刷りじゃなくてゲラスとはギリシャ神話では老いの神様らしいです。てっきりヘラクレスさんの大笑いの原因かと思ったのに(げらげら笑っていそう)。


と、まあ、勝手な想像は脇においておいて。そんなわけでエジプトタポスのタポスコアは、ゲラ刷り、じゃない、ゲラスに化けると5つに分裂して襲ってくるやっかいな敵です。打撃ではきりが無いので、魔法で闘うべきでしょうね。できるだけ魔法は使いたくないけれど。まあ、ここでなら闇エーテルには事欠かないし、魔法力は分身を倒せばオーバーキルで手に入るし。


そして、敵を倒したら……お約束のちゅど〜ん! あ〜れ〜〜〜〜! とばかりにどこかへ飛ばされてしまいました。集合場所は『どこかの山』です! ではみなさん、『どこかの山』でお会いしましょ〜〜〜〜! ……コーカサス山だっちゅーの。


コーカサス山にあるヘラクレスさんの実家(豪邸らしい)ってどんなところだろう?
と思いつつ……ひゅ〜〜〜〜、ドカッ。主人公が落下した先は、小さな漁村。今回は一人旅で他に誰もいません。頭をさする彼の元へ、小さな少年が話しかけてきて……『本物の英雄の証』……の写し、を売りつけてきました。………………主人公の無口だが存在感のある値切り………無料で授けてくれました。やったね。この手いいなあ。


英雄の証の本物を見て、少年が書いたのが本当なら、このあたりにまたヘラクレスらしき人がいることになるなあ。でも、あの話はヘラクレスの本物にまつわるエピソードっぽかったけど。
漁村を歩いていると、さもしい感じの男の人がブツブツ言っていました。弟から授かったという英雄の証を手にして。そして落ち込んだ様子で家に引きこもってしまいます。ガチャって鍵まで閉めちゃって。
しょうがないな、とりあえず海でも見てくるか……アテナイからの船も来るらしいですし。
港でヘラクレスさんとロコスに再会。すでに船を予約する手はずが済んでいるようです。コーカサス山はここから海を渡らなくてはいけないそうですね。
で、彼らもあの男の人が気になるようなので、土地の女神様であるアプロディテ神殿におまいりしてから、もう一度面会してみることにしました。アプロディテ神殿は花盛り。さすが、愛と美の女神様! 「目覚めの花」その他ハーブ類が豊富に自生していましたね。


もういちどあの男性の家に行ってみると、なにやら1人で騒いでいます。気になったが早いか、ヘラクレスさんはドカッてドアをぶち壊して乱入! あの男性が妖精にからかわれていました。彼女らはうるさいからなあ……。
でも、男性に会ったとたんにヘラクレスさんは、彼がヘラクレスであることを指摘(ややこしい)。つまり、本物のヘラクレス氏はこの男性だと……。で、彼自身はヘラクレスの弟でイピクレスさん、という者であり、くじけそうになった兄を励ますために、英雄の証を作ってあげたのだと……。
お兄さんは、気弱でもの静かで思慮深い弟にとっての「英雄」に他ならなかった。だからこそ、証をつくり、授けた。何度モンスターに負けても、また闘って、何度負けても良いから闘って、いつの日か勝てることを信じて。
でも、イピクレスさんは、ある日のヘラクレス氏とモンスターの戦いに巻き添えにされてしまい、すでに亡くなられたのだと……。


そこまで思い出してしまったら、もうエーテルに還って消えるしかない……。


あの馬鹿笑いに、あの一撃に、あのパワーに、もう会うことはできない。


どうしよう……というか、装備品!
(思わずセーブデータからやり直しして、高級で高品質な形見をたくさん手に入れてしまいました)。
あと、スパルタ食堂の食い逃げ……じゃない、無銭飲食代金! まだ払ってない! いつか肩代わりしなくちゃいけないの? わ〜ん。


そんなこんなで、ヘラクレス氏とせっかく再会できたのに、ヘラクレスさんというかイピクレスさんは消えてしまいました。
これからどうしよう。実際、ヘラクレス氏も当り散らしているようです。彼はそうっとしておきましょう。
さて船は……、というところでセーブ、です。消えてしまったショックは……。今までありがとう!