『津波の墓標』読了。

上記記事で紹介されていたこの本を読みました。

津波の墓標

津波の墓標

あの、2011年3月11日。いったい現地では本当は何が起こっていたのか。マスコミが伝えていなかったことはなんだったのか。
東北では復興はまだまだ……ということは、いろいろな報道も、ブログ等もありますし、各自治体の首長が記者会見等で主張しています。報道も無い訳ではないです。
しかし、東京に住んでいると……正直、実感が無いんです。本当に申し訳ないんですが……。
つまり、現地ではどんなダメージがあったのか。それを正しく知らないから、そのダメージからそれぞれなりに立ち直ったりするのに、どれくらいかかるのかを想像することも出来ないでいる訳ですよ。それは私のようなただの市民だけではなく、現地に行ったことが無い、あるいは被災していない偉い人たちにある程度言えることじゃないかなと。
で、あるならば。震災直後の現場入りから1年くらいをたどった本書のようなルポルタージュは非常に重要な記録だと思います。読みやすく、かつ、真摯な筆致に好感が持てました。それに、作者さんは私と同い年で、その意味でも親しみが持てて。他人事じゃない目線で読めました。
震災後、2週間くらいからひどい惨状だけれども復興に向けて頑張ります、とか、そういう明るいメッセージがマスコミに出てくるようになった事情。それは、現場に行かずに指示を出すしか無い報道デスクの判断であり、無数の視聴者の無言の圧力でもあり。悲惨な状況ということばかり報道していたらみんな疲れてしまっているから、明るい話題を流さないと視聴率が取れないという。たかだか数週間では現地では大して変わらずにいるのに。もう変わりはじめたような空気。もう立ち直ったような空気。そういうのが東京にはありました。
考えてみればおかしいですよね。病気などで親しい身内が亡くなったりしたのを想像してみれば、そのショックがどれくらい後を引くか想像できそうな物。ましてや震災で、亡くなられたご家族に再会できるかどうかも分からない状況が、ヒトによっては何ヶ月も続いて。そして、今でも見つかっていないかたもいらっしゃるというのに。
本書によれば、現場の取材では、マスコミでは遺体なども撮影していたそうです。一応、そういう指示が出ていたようです。そういう写真が必要かどうかは東京のデスクが決める訳で……。結局、ほとんど使われることがなかったようですが。報道のあり方も改めて問われています……。使われなかった事情も語られていました。


大切なヒトを助けに行けなかったことで、自分を責めたり、親類から責められたり。
ボランティアとして現地入りし、写真を撮っていたら被災者を傷つけてしまったり。
逆にボランティアさんが被災者からセクハラされた事例などもあったようで。
いろいろなことが、人間だから、いろいろな不条理が。
正しいことは何か、と、言い切ることが出来なくなりました。
ただ、被災なさった方は本当に困難に遭遇していて、それを理解するのには本書のようなルポルタージュ、体験記といったもので、少しずつ知って行くことが大切で。
マスコミがおかしな姿勢で報道してしまうのは、一概には言えませんが視聴者にも責任が無い訳でもない訳で。
野次馬的に好奇心だけで扱っていいわけがないのですが、現実にはそうなってしまっている側面があり。
視聴者がもっと良心に正しくいる必要があるのではないかなと。


本書は、被災地の生臭さすら行間から漂ってくるようなリアルな筆致でした。
あんなことになって、臭いが無い訳がないんです。
テレビでは臭いなんて分からない。
それでも、自分はそういうことすら想像せずに、ある意味で面白い見せ物のようにあれらの報道を見ては居なかったか?
全然分かっていなかったんじゃないか?


ともかくも、本書を勧めてくださった冒頭のコラムニストの方と同感です。私もやたら美化された報道が流れる前に本書を読んでおくことをお勧めしたいと思います。そうすることで、印象操作されることを少しでも防げる気がするのです。それらの報道を参考にしながらも、本当は何が起こっていて、どうなってしまったのか、その一端を知るために。
この国で生きて行く以上、あの震災と無縁で居ることは出来ないと思うのです。


自分の場合は。
震災の後、福島県の友人が被災したというので、水や彼女の避難先(茨城県)の町の地図を送ったりしました。あと、港区の募集に応じて物資を届けてもらったり、被災地で見つかった家族写真のデータ化作業の仕上げ(PhotoShopくらいなら、そこそこにはできるので)をお手伝いしたりとか。
とりあえず、あの震災を忘れずにいることと、何か情報が見つかったら出来ることでお手伝いできればな、と思っています。
それに、この東京だって富士山や南海トラフなど、災害の危険性が指摘されていますから……。
この震災で何があったのかを知ることは、未来の東京を知ることにつながる気もしています。

追記

こんなサイトを見つけました。

  • 復興市場
    • 被災地の地元商店から支援物資を購入して被災者に送ることができるショッピングサイト。購入した物資が被災者の元に届くだけでなく、購入したお金が地元の経済を潤します。

このシステム、どっかで聞いたなあ……と思ったら、震災直後に活躍したAmazon.co.jp東日本大震災ほしい物リスト』の日本版みたいなものでした。
今日現在、紙おむつの案件が入っているようなんですが。仙台市発で山形県宛です。東北の被災地3県(岩手県宮城県福島県)からずれているんじゃ、と思ったのですが、この案件、山形県に避難している皆様宛なんですね。しかも、お子さんを抱えた方が多いのだとか。たしかに、こういう微妙にズレている所に関しては、なかなか色々と届いていないのかも? というわけで、少しだけですが購入。
赤ちゃんのお尻が少しでも快適になりますように!