古き良き夢の国、としまえん

子育てしている友人たちに誘われ、としまえんに行ってきた。
雨量が読みきれなかったが、行ってみたら降ったりやんだりの差が激しく、雨に濡れながらの遊びとなった。スニーカーに防水スプレーをしっかりとかけ、防水の効いたPC用バックパックを持参したが、この判断は正しかったようだ。結果的に人体以外への降雨浸水がほぼゼロだった。
コロナ渦の運営。消毒、またアトラクションの安全には相当気を遣われていたようだ。としまえんといえば日本最古の回転木馬『カルーセルエルドラド』が有名だが、様子を見てみたら定時的に消毒が実施されていた。園内の店内などには消毒用エタノールがかなり設置されていた。また、ゲーム的なアトラクションも小道具の消毒をしていた。かなり細やかに思った。
当施設は8月31日に閉園するが、楽しい想い出は作ってもらい、コロナの想い出なんか作らせない! そんなプロの密かな気合を感じた。
ただ、やはり、なかなかお客さん側が騒がないとか、特にジェットコースター的なアトラクションで叫ばない、っていうのはこうした施設の性質上、本質的には難しい。一応、静かにする様にアナウンスされてはいたが。ソーシャルディスタンスも、それなりに気をつけて、アトラクションでは各車両2列あるうちの1列しか使わないなどの配慮があったが、並んでいるときに間隔を取るのは難しかった。それでもコロナ以前よりはなんとなく間をあけているような気はしたし、食事施設以外でマスクをしていないお客さんはほぼ皆無だったので、お客さん側の対策がまったく無効とは思わない。
この辺り、難しいところではある。食事もこうした場所では楽しみの一つだ。しかし、特に降雨時は屋外席が使えず、もともと席数が限られてしまう。雨の日はお客さんが少なくなるのが普通だが、閉園が近いので、それなりにはいる。せめて長々と食事はしないとか、クレープなど持ち歩けて楽しい食品を買うなど、お客さん側にも工夫が必要だ。実際、クレープは美味しかった。生クリームとツナ、意外に合うものだ。
ところで、としまえんの密かな名物といえば、昆虫館。友人の息子さんがどうしても行きたいと言い、他の女の子にはおすすめしづらいようなので、保護者として一緒に行ってきた。……というか、自分も閉園前には行きたかったので、彼が昆虫館に行きたい、と騒いでくれたのは内心、幸いであった。
遊園地にロボじゃない、ガチの生き物を展示しているって、珍しいと思っていて、子どもの頃に一度行ったような気はしたが、やはり覗いておきたいと思ったのだ。
彼の目的はヘラクレスオオカブトだったようだ。入り口付近に大きなヘラクレスオオカブトのオブジェがあり(人間の子供くらいありそう)迫力だった。また、標本も沢山ある。そして、小さな窓の中には様々な虫さんがいてその姿を見せてくれる。
練馬区であるこの辺りは、昔から農業が盛んだ。名物として練馬大根があるくらいだ。田んぼも(23区としては珍しいと思うが)区内にある関係でか、水生昆虫の大きな水槽があった。あの一角だけは、水族館的な雰囲気。平泳ぎのような見事な水泳ぶり。魚ならともかく、虫の水泳をあんなにじっくり見られたことはなかった。結構器用な泳ぎ方で、垂直降下なんかもできるようだ。
また、毒蜘蛛の一角もある。赤石路代先生の漫画で、タランチュラがキーワードの作品*1があったのだが、本物を見られるとは思わなかった。漫画の描写の通り、ふわふわしていた。作中の通り飼いたくなるひとももしかしたらいるのかもしれない。自分はやはりその気にはならないが。
生きた昆虫(カブトムシやクワガタなど)と触れ合えるコーナーもある。どうやら、友人の息子くんの最大の目的はここだったようである。ヘラクレスオオカブトを手に捕まえて非常に喜んでいた。
ところで、先ほどから閉園、閉園と書いているが、跡地にはハリーポッターをテーマとするテーマパークができるという。
ルーセルエルドラドの今後、そして昆虫館の虫たちの再就職先はどうなるのだろうか。
お化け屋敷やミラーハウスなど他のアトラクションも気にはなるが、特にこの2箇所は本当の意味でとしまえん名物である。
あくまでも個人的な意見ではあるが、カルーセルエルドラドはなんとなくハリーポッターの世界観にもマッチしそうに思う。内装を変える必要もない。あのまま、魔法の回転木馬として残して欲しいと願う。なにしろ、物は現役の文化遺産、日本最古の回転木馬だ。それも、日本最古なのに、結構回転数が早く、メカニックには経年劣化を全く感じさせなかった。この回転木馬を支える人たちのメンテナンス技術もすごいのだと思う。内装は流石に古びてはいるが、この堂々たる風格は他にはないものがある。このグランドマザーっぽさは、それこそ魔法の国のどこかにあってもおかしくない趣である。こうしたものを維持し続けることの難しさ、継承の難しさは想像にあまりある。施設と人、両面で継承していただきたい。
昆虫館の虫たちも、これまで人間の、特に何千何万という子どもたちの、生き物への好奇心を喚起してくれた功労者である。標本たちもそう。死んでしまったあとでもその姿を見せてくれているのだ。もしかしたらこの場所がきっかけで、生物学方面に進んだ子もいたかもしれない。夢を見つけたひともいたかもしれない。なんらか、次につなげてほしい。
こうした場所で、100%の消毒というのは絶対的に無理だが、園側はテーマパークとしては良心的に、可能な限り低リスクにしていたと思う。あとはユーザーが、その時だけの想い出や楽しさを取るか、コロナ感染の危険を取るか、リスクとリターンの問題だ。
自分が感染すれば、自分もつらいし他の人にも本当に迷惑がかかる。しかし、この時にしか見られないもの、というのはある。
コロナ以降、ストレスで心の体調が本質的におかしくなっていたのだ。帰宅してすぐ入浴した時に分かった。コークスクリューのような全力体感系アトラクションや、お化け屋敷のような非日常は、大いに刺激となっていたようだ。人間にとって、ハレとケはやはり必要なんだ、と悟らされた。
今はケであれ、とばかり社会で言われているが、ハレもうまく機会を作らないと、それこそ殺人、自殺、イジメ、ハラスメントといったことにつながりかねない。これらは気持ちの伝染病のようなところがあり、コロナ同等に恐れなければならないだろう。もちろん、コロナ感染も恐れなければならないが、うまく両方に付き合わなくてはならないのだ。ネットではこの状況で旅行や遊びに行くのを叩く傾向があるように思うが、例えば芸能界でSNSが原因の一つと見られる自殺が最近起きていることと、無縁だとは思えない。自分のストレスを他人に向けることが流行してしまえば、コロナよりも恐ろしい世の中になるだろう。
つくづく人間は、この夏、非常に重い課題を抱えたものだ。しかし、大人も子どももおねーさんも*2、個人個人がそれぞれなりに乗り越えられたら、個人にとっても社会にとっても、きっと、大いなる糧になるであろう。
ともあれ、今年の梅雨明けはかなり遅い。コロナも怖いが、低気圧で体調不良を起こさないよう気をつけつつ、この時期を過ごしたい。

*1:『サイレント・アイ』4巻収録の第14話

*2:元ネタは任天堂Mother2』のキャッチコピー。なんとなく、コロナ渦の考え方って、リスクとリターンのあり方が、どこかロールプレイングゲームを思わせる。無茶をしてレベルの高いダンジョンに行って、モンスターの返り討ちに遭うなんてゲームではよくあることだ。しかし、それは人生にこそあることなのだ、と、このところ考えている。