総選挙はてな、公選法違反の危機?

で書きました「総選挙はてな」について、あれこれ他の方のエントリーを参照させていただきました。なかなか面白いシステムだと思っていたのですが……。


どうも法律的にはまずいらしい。その可能性が指摘されています。


どういう事かと言うと、公職選挙法(選挙のルールを取り決めた法律)でこう決めているそうなんですね。

出典:houko.comから公職選挙法より引用。

  • (人気投票の公表の禁止)
    • 第138条の3 何人も、選挙に関し、公職に就くべき者(衆議院比例代表選出議員の選挙にあつては政党その他の政治団体に係る公職に就くべき者又はその数、参議院比例代表選出議員の選挙にあつては政党その他の政治団体に係る公職に就くべき者又はその数若しくは公職に就くべき順位)を予想する人気投票の経過又は結果を公表してはならない。


で、ですね……。
先ほどリンクさせていただいたサイト様をご覧いただければお分かりいただけると思いますが、「総選挙はてな」は「人気投票」に該当する可能性が高いようです。


いつものように、はてなへの希望をはてなアイデアでやる事は、はてな規約で収まる話ですが。
選挙への調査は公選法に基づかなくてはいけません。


しかし、現在の公選法のこの規定は、時代のニーズを反映しているのでしょうか?


そもそも、よくある新聞の選挙世論調査がなぜこの規定に引っかからないかというと、先ほどのhxxk.jp様経由鳥取県選挙管理委員会によりますと。

出典:鳥取県選挙管理委員会の記事より引用。

Q.選挙に関する人気投票は?
選挙が近くなると、新聞などで当落の予想が行われることがありますが、予想のため、誰が当選するかについて人気投票を行い、その結果を公表することはできるのでしょうか。


A.元来、人気投票は、その方法においても、動機においても、必ずしも公正とはいえないものが多く、また、選挙においてこの人気投票の結果が反映されることは決して好ましいことではなく、弊害が多いと考えられます。
そこで、公職選挙法では、選挙に関する人気投票の公表を禁止し、間接的には人気投票そのものを抑制しようとしています。
人気投票といっても、投票による場合に限らず、その形式が投票の方法と結果的に見て同じである場合は、これに含まれますが、例えば、新聞社等が行う世論調査であって、投票の方法によらず調査員が面接調査するもの等は、ここにいう人気投票には当たらないと解されています。

で、はてなアイデアにおける予測市場のシステムが、「形式が投票の方法と結果的に見て同じ」であるかどうかが一つのポイントになりそうですね。


もう一度「総選挙はてな」をじっくり見てみると、はてなidと、購入アイデア株数を全員が公表している事に気がつきました。
つまり、誰がどの政党に可能性を見いだしているかが一目で分かる事になります。
この事の是非も議論のポイントだと思いますが、少なくともある程度の記名式である所は、現実の選挙の投票とは異なる形式ではあると思います。


それに、新聞社の行う世論調査と、ネットの予測市場では、どちらがより世論に忠実でしょうか?
新聞社には記事編集の方針が必ずありますし、その新聞を選ぶ読者層によって政治的な好き嫌いもあるでしょう。こう考えると、新聞社の公表する結果が、かならずしも世論を忠実に写しているとは限らないのではないかとも思えて来ます。また、世論調査は受け身的で、参加したい人が必ずしも参加できる者ではありません。多くの場合、新聞社などが何かの名簿から無作為に抽出した人に向けてお願いして解答してもらうものです。(もちろん回答拒否も出来ますが、言いたい事がある人の積極的な参加がのぞめるモノではないと思います)


しかし、ネットでの予測市場は、参加したい人が参加すればいいのです。言いたい事がある人が自主的に言えばいい。この点で、従来の世論調査よりも民意を反映しやすいでしょう。また、予測市場で勝つためには、必ず「他の人がどの部分を重視しそうか」という客観性も計算に入れなくてはならないので、主観と客観、両面での見方を反映した結果をのぞめる可能性が高いと思います。


さらに、先ほどの鳥取県選管解説文を見てみますと、「元来、人気投票は、その方法においても、動機においても、必ずしも公正とはいえないものが多い」とされています。このことが人気投票禁止の論拠です。予測市場は非公正でしょうか?
先ほども見た通り、「総選挙はてな」では、はてなidという記名性は方法における公正性を、主観のみならず客観性も併せ持つ性質は動機に置ける公正性を保証するのではないかと考えています。また、新聞社のような組織力がなくても、インターネットサービスの一つとして公正な調査を提供することで多くの意見を抽出する調査が行えることを規制する事は、時代のニーズを反映していないと思います。
また、予測市場とは異なりますが、模擬選挙が政治への関心を高める教育的事例もあります。

こういった政治への気軽な参加の機会を、公正な選挙を保証する法律である公選法が奪ってしまっていいモノかどうか、調べるにつけ疑問を感じました。


つまり、現在の公選法違反の可能性は否定できませんが、法律の精神に即して考えると必ずしも違法とも言い切れないのではないかと思います。


さて、素人による個人的な考えは以上です。法律の専門家は、この一件をどう見ているのか、どなたかのエントリーをお待ちしたいと思います。