『あれから』(歌唱:AI美空ひばり)をもう少し良くするには?

あんまり衝撃的だったんで、『AI美空ひばり』の番組を、あれから何度も録画からリピートプレイしてみました。
とりあえず、もしも音楽にも『不気味の谷』があるとすれば、そのレベルを超えかけているのは確かなように思います。
ただ、AI美空ひばりの表現エンジンには、まだ入っていないんじゃないかな、という要素を感じまして。
それは、歌詞解析です。音としての歌詞ではなく、意味としての歌詞です。
語りのパートで、「頑張って」というところがありましたが、その『が』の発音が柔らかかったので、音としての日本語発音をひばりさんらしくする、という意味では良い感じになってきていますね。
しかし、もっと強く『が』を入れる発音もあります。『頑張って』とは、人を励ます言葉なので。それを、機械的にアクセント記号を入れるのではなく、『がんばって』の『が』だから、「ひばりさんらしい柔らかさの中でも強く言う」とか、判断できるようになったとしたら。
それから、いわゆる歌詞の1番と2番でのニュアンスの違い。同じメロディですが、歌詞を音だけではなく意味的に解釈して、あるいは、楽曲構成を考えてとかでニュアンスの違いをもっと出す。プロの歌手ならこれくらい誰でもやっているかなと。
さらにそれから、ブレス。息継ぎです。もちろん、AI歌唱には起きえないことですが、人間って呼吸をしないと歌えません。息継ぎは歌のマイナス要素ではありません。息継ぎをするからできる歌唱もあります。自分は吹奏楽をやってるのでブレスで出す表現についても自分なりに学びましたが、管楽器ではなく歌唱であれば、もっとこの辺りも大事なんじゃないかと。どの歌詞のあたりでブレスをするのが人間としてひばりさんとして自然であり、より歌が生きるのか。この辺りの研究も必要かもしれません。
とはいえ……このレベルまで来られたか、というのは本当にそうです。かつて、ボーカロイド小林幸子さんにも驚いたのですが。幸子さんの歌い方を誰でも再現できるエンジン搭載っていう。AIはさらに深いレベルに進めそうです。
さらに、AI歌唱ならではの使い方を1つ思いついていて。それは、ひばりさん+ひばりさんのデュオ、あるいはトリオ。はたまたカルテット。つまり、多重唱です。流石にこれは倫理的な意味とかでどうなんだろうと、書きながら自分でも思うのですけど、やれない話ではないのでは。
ともあれ、今はまだ過去の歌パターンから新しい歌に当てはめているようなところがあるみたいですが、歌を言葉と音の動きとして人間同様に解釈し、人間美空ひばりの膨大な経験値を元に、新曲についても自分なりの表現を目指すようになったら、本当にクリエイターとしての歌手になってしまいそうに思います。クリエイターって、過去を参考にし、クライアントのオーダーも聞きつつも、結局は自分なりにやるからクリエイターなのです。そのレベルの『AI美空ひばり』(歌唱)や『AI秋元康』(作詞と企画)、『AI船村徹』(作曲)みたいなものが開発され、リンクして一緒にクリエイター活動を始めたら…。
怖いような、ワクワクするような。