本当はみんな遅刻したい?

「チコクチコク〜!」
朝、寝坊して必死に街を駆ける主人公の少女。朝食を食べるヒマもなく、台所から失敬した食パンをくわえている。
そして、曲がり角を曲がったとき!
「ドーン!」
何かにぶつかった。
「いてて……」
「いたぁい……」
逆側から走ってきたイケメンとぶつかったようだ。
「あ、キミ、大丈夫?」(主人公を助け起こすイケメン)
「すみません。あたしは大丈夫です」(なんて素敵なヒト……ドキドキ)
「ごめんね、じゃあ、オレ急ぐから!」(去っていくイケメン)
「あ……」
何も言えずに心奪われた主人公。
SE(学校チャイム)「キーンコーンカーンコーン」
「いけない! 急がなきゃ!」
学校へ走る主人公。これが二人の出会いであった。
…………みたいな、寝坊して遅刻寸前の主人公がイケメンとぶつかって恋を始めるというテンプレ展開。
セーラームーンでもありました。あの時はイケメンではなく猫のルナと出逢うのですが。
さておき、なんでこのテンプレが日本の漫画に良くあるのか。今朝、ふとひらめいたのが、日本人の願望なんじゃないかと。
よく言われますが、日本人は時間に厳しいですね。
鉄道は1分でも遅れれば車内に謝罪が放送されます。
タイムカードなんかもあります。
学校でも始業のチャイムがなる前に教室の自分の席に着席するよう指導されます。小学校1年生、たかだか6才、生まれてから6年もすれば、この1分競争に巻き込まれる社会です。
で。
実はみんな本当は遅刻したいのではないか?
遅刻しても(したからこそ)イケメンと出会えるような奇跡への願望があるのではないか?
日々、1分と遅れないように努力しているが、本当はそんなのはいやでいやで仕方がない。せめて漫画やアニメの中くらいは自分のできない遅刻をしたい。
遅刻をしても、思わぬ素晴らしい出会いに恵まれたい。
なんか、そういうのが日本人の古典的本音なのかなぁ、って、なんとなく思いついてしまいました。
本当はみんな時間なんか守りたくない。でも、他の人に迷惑になったりするから必死に時間を守る。
遅刻はささやかな非日常。そこから主人公は素敵なイケメンとぶつかり、あるいは素晴らしいネコと出会い、人生を変えていく。
で、あれば。
人生を変えたいひとは、遅刻をしてみたら良いのでしょうか。……多分、そんなことをしてもしょうがないと思いますが、1分の遅刻くらい大目に見て欲しいな、と、思わないでもないですね。
この社会はなんか、ストレスフルだなあと。自分にも他人にも。