コロナ禍でのモラル格差について考えたこと

モラルって結局
「相手への想像力」なんで
モラルを鍛えるためには その前に
「自分で考える癖」をつけないと
どうしようもないんすよ

これは、最近読んだ漫画からの引用だ。

「100万の命の上に俺は立っている」の7巻、電子書籍版で112ページ目にある。
最近のコロナ禍では、人を助けるための美談も多いが、自分さえよければ……という自己中心的な事例も目に付く。
なぜこの、人としてのありようの格差が生じてしまっているのか考えていた折、ふとこのセリフを思い出したのだった。
主人公である中学生の少年「四谷」は、数名の仲間とともに異世界に否応なく召喚される。そして、未来人に出会い、ファンタジーRPGもかくやといった世界の中で、クエスト(冒険の目的)を押し付けられる。これを制限期間中にクリアできないと自分たちは死んでしまうという。
冒頭に挙げた7巻で進行中のクエストでは、麻薬の広まりに苦しむある国を救うことになった。そのためには、麻薬供給源である隣国の内乱を収めなくてはならないと判明。隣国には大別して3つの勢力がある。主人公の仲間たちはそれぞれの組織に入りこみ、内部工作を試みる。四谷自身は、自警団という集団へ入り、彼らを鍛えることとなった。四谷は、警察や軍隊と共同戦線を張らせるため、何かあるとすぐ戦おうとする彼らに、学校のような教育を施すことで暴走を防ぐ活動を始める。
喧嘩っ早い彼らのモラルを鍛えるために、四谷の授業では図形パズルの問題を出題。一見、モラルと関係なさそうだったその意図を説明したのが、冒頭に挙げたセリフである。
このセリフをヒントに現実の世の中を考えてみる。今までは言われたとおりのことをやっていけば世の中すらも何とかまわったのかもしれない。しかし、インターネット普及後、グローバル化と高度な情報化が進んだ昨今、多くの情報を自分なりに読み取って様々に活用できる人と、情報を鵜呑みする人の二極化は大いに進んでしまったのかもしれない。それは、資産を得るとか、よりハイグレードな立場で仕事をするといった経済的格差を生じさせただけではない。人としての心の格差を生んでしまったのかもしれない。
五輪開催で政府や東京都は、ほとんどの試合を無観客試合とすることで乗り切ろうとしたが、五輪開催で浮き立った空気感での外出や、人が現場に集まってしまう事例も発生した。札幌でのマラソンに遠隔地からの来訪者も多かった*1ことや、閉会式の新国立競技場周辺に人が詰めかけた*2といった例がある。
ここまで大規模なイベントとなれば、当然、仕切る側には集団心理への対処も責任範囲になるだろう。しかし今回の主催者は、そこまでを想定することがどうやらできなかったらしい(内部的には想定はしていたのかもしれないが、結果から言えば出来ていないのと一緒だったといえる)。
となれば結局、個人が自分で考えて対処するしかないが、そこまで考えている人は少なく、自分だけならいいという考えの人の集団が発生してしまったようだ。
特にデルタ株は人流の増大に敏感であっという間に広まってしまう。そして病状の悪化もあっという間だ。普通の肺炎だったら起こらないような速度で症状が悪化し、現在可能な高度な医療を施しても助けられない事例も増えた。この状況は明らかにルールが変わっているのだが、ついて行けていないことが多いのではないだろうか。
私は、五輪・パラリンピックの本質的な意義への異議はない。しかし、行き過ぎた商業主義と、今回の開催のタイミングにはどうしても疑問を感じざるを得ない。主催が強行される以上、個人としてはその雰囲気に飲まれることなく、いつも通り淡々とコロナ対策を日々おこなうしかないのだろう。
コロナ禍が当たり前の日常となり、たまるストレスの解消や経済活性化のためにも、こうしたイベントが開催されることが増えてきた。しかし忘れてはならないのは、別にコロナへの抜本的な対処方法が大きく広まったわけでも、新型コロナウイルスが弱まったわけでもないことだ。ワクチンは普及が遅く、ウイルスの感染力・毒性も強まっている。
自分の身は自分で守るというのは、わがまま勝手とは全然異なる。高いモラルがなければ、結局は自分どころでなく社会が滅びる。こんなの当たり前の過ぎて議論の遡上にも上がらないことだろうが、だからこそ大切にしなくてはならないと考えている。

*1:厳戒下の祭典で:五輪閉会日、ごった返す国立競技場付近 そして満床の病院 | 毎日新聞 https://mainichi.jp/articles/20210808/k00/00m/040/367000c

*2:競技場前、人の波絶えず 缶ビール飲む若者も―五輪閉会式:時事ドットコム https://www.google.co.jp/amp/s/www.jiji.com/amp/article%3fk=2021080800423&g=soc