『神の涙』回が……

あー、ついにこの回を越えてしまったか…。
アニメ『ダイの大冒険』の『神の涙』回です。
この回あたりの原作の見せ場といえば、まずは天才大魔道士ポップによるカイザーフェニックス撃破。ファーストコンタクトでは大魔王様のメラにメラゾーマで撃ち負けていたのに。「今のはメラゾーマではない……」ってアレですね。
カイザーフェニックス打破、アニメでみても実に鮮やかでした。そして大迫力でした!
そして、宙を舞いバーンを襲う、瞳の宝玉。その奇跡の動きっぷりも、漫画で想像していた以上。ありゃ怖い。アニメになってよかった!
そして……いよいよ正体が判明したゴメちゃんとダイのラストコンタクト。
演出は、原作を生かしつつより深めていたようです。デルムリン島に立っている感じで話しているとか、ゴメちゃんの(ダイが思い出すべきなのは)「もっと昔だよ」ってセリフはアニメオリジナルだと思います。小さな頃のダイ君の声も可愛くて良かった。ゴメちゃんとダイが海岸を走る一枚絵はグッズ化しないかなあ。原作の絵の良さを生かしつつ、より温かみのあるタッチですごく良かったのですよ。
ところで、この「ぼくのトモダチになってよ」ってセリフは(時々指摘されていますが)バランによりダイの記憶が封じられたときに、改めてゴメちゃんとファーストコンタクトし直した時に言っていることでもあります。伏線、とまでは言いづらいとは思いますが、ダイの本質がよく現れていると思います。もちろん戦闘能力も高いのですが、人と人を繋いできて、ときには魔王軍の軍団長すら味方に付けた勇者。だから、ゴメちゃんも長く友達だったんだろうなと。
ところで。ゴメちゃんはこの回で、結構重要なことを言い残しています。
「欲深い人間から逃れ、世界で一番清らかなデルムリン島に落ちてきた」と。
ゴメちゃんは転生を繰り返すアイテムなのですが、前の世代で何があったのか?
あと『神の涙』により、天地魔界のバランスが何度も崩されたという話。
この二つをもとに考えていたのですが。
もしかしたら前の世代のゴメちゃんは、アルキード王国滅亡の遠因になってしまったのではないか? と思いつきました。
アルキード王国。
ダイ君の母上ソアラの祖国ですね。
竜王ベルザーを打倒したバランがたどり着いた場所。
ソアラはアルキードの王女でした。
バランはソアラに助けられて一命を取り留め、城に迎え入れられたのですが。
とある家臣が王に密告したのです。
「どうやらあの騎士は人間ではないようです。もしかすると魔王の手下の生き残りかもしれませんぞ」
と。
この密告のため、バランはアルキード城から追放。しかしソアラはダイを身籠もっており、バランと共に駆け落ちすることになります。
そして、悲劇が起きてしまったのでした。
さて、バランは確かにドラゴンの騎士なので人間というわけではないのですが。
何でまたバレたんだろうなぁと。
実は、この家臣が「神の涙」を持っている人とつながりがあり、周りの人の失脚に悪用していたのでは?
神の涙には心があり、確かに悪いことには使われないのですが。
人には表裏があり、何かしら悪いことをしている人もいるものです。
あの重臣は、もしかしたら正義を装い、そんな悪いことをしている人を見抜くために神の涙をつかった。それも、自分が持っているわけではなくて、知り合いのとある善人が持っていて、その人をだまくらかして使ってもらっていた。周りの家臣の悪事の何らかの証拠を見つけては王に進言するのはいつものことだった。そうしてのしあがっていったのかも。そう、言葉たくみに、結果的には神の涙すら騙してしまったのでは。
そして、また厄介な人物(バラン)が王城に現れたため、神の涙で調べて正体を把握。何か証拠を見つけて王に進言したと。
それが回り回ってアルキード王国滅亡につながってしまい、人の邪悪さに疲れた神の涙の転生が起きていた……。
無茶な思いつきかな、とも思ったのですが。結構これタイミングが合いそうなんですよね。この事件から5年くらい後にデルムリン島で再生したと考えると、「次回の再生までに願いを叶えてきたのと同じ期間が必要」というのともしかしたら合うのかなと。あの時のダイ、5歳くらいに見えましたし。
まあ、上記はひとりの読者のただの妄想に過ぎませんが。
ゴメちゃんが人間の欲望に疲れ果てたことだけは覚えていたという前回の世代。いったい何があったのやら。ともかく悪用されてしまったんだろうなあ、と、思いました。
だから、裏表がないダイとずっと友達でいることを叶えてあげる気にもなったのかなと。
その後の願いも、悪意のない純粋なものばかりでしたし。
最大のファインプレイは、バラン戦でポップをあの世に止めに行ってくれたことでしたね。
実は、昔出ていた公式の解説書で読んだのですが。もともとのダイのストーリーではバラン編の後に最終決戦を予定していたようです。ポップは死んでしまいます。
当時のジャンプ編集部がダイの大人気ぶりのために異例の連載延長を決めてくれた時。
多分、三条陸先生は悩まれたと思います。多分うれしかったのでしょうけど、話の流れはポップ死亡へと完全に向かっていましたから。ここで彼を死なせるわけにいかなくなった。
なので、何が再大のファインプレイだと今なら思えるかといえば。
創作世界の神様、原作者がかつて引いていたストーリーラインをひっくり返してくれたことなんですよ。
そう、神の涙は読者の願い、原作者の願いすら聞いてくれたのです。
「ポップを生かし、こんなところで物語を終わらせず、もっともっと長く続けてほしい」
という願いを!
最強のマジカルアイテムの真骨頂だと思うのです。リアル世界からの願いを創作世界で叶えてくれたなんて。
それで起きたあのポップの一撃(多分イオ系魔法かな?)は、バランの改心のきっかけにもなりました。
まさしく『かいしんのいちげき!』ってやつです。
ゲームでは呪文攻撃でのクリティカルヒットは当時なかったとは思いますが、野暮なことは言いっこなしとしましょう。
ともかくとして、最後のダイの願い……「世界中の心をひとつにして、自分たちの知っていることをみんなに伝えてほしい」という祈りは北の果てまでも届きました。
世界中を彷徨った挙句に北の果てオーザム王国で暮らしていた変わり者パーティー『偽勇者でろりん一味』ついに出番です!

追記。出演者の裏話がたっぷり聴ける『ダイ好きTV』。今回の話はとくにファン必聴でした!