ミュシャ展

八王子市の夢美術館で、ミュシャの展覧会を見てきました。

なんとなーく作風は見たことがあるけど、ちゃんと見たことはないっていう感じでしたが。
『花のパリ』のイメージそのものの様な画風は思っていた印象通り。
違っていたのはその作品の大きさ。
女優・サラ・ベルナールの公演の告知ポスターの出来が評判を呼んでブレイクした、とのことでしたが。
実物は長辺が人間より大きかった。もう、それはどーん! って感じです。すごい迫力がありました。
考えてみたら、今でも大きなポスターってありますね。プロジェクターとかデジタルサイネージもあるし。しかしながら、当時はテレビもなかった頃。
ひとつのすっごいポスターが注目を集めると、グッと口コミで広まったのかなーと思います。情報過多な現代に比べたら、熱く濃い評判を呼んだのかもしれません。
ともあれ、絶好のチャンスをつかんでスーパーイラストレーターへの階段を全力で駆け上がっていった若きミュシャ青年の姿が目に浮かぶ様な感じがしました。オシャレで勢いのあったであろう当時のパリでいろんな作品を描かれ、今回の作品展でも、それはそれは華やかな作品をたくさん拝見できましたが……もう、女の人を描いた絵の中からむせるような香水の香りがしそうでめまいがしました。一枚一枚が大きいし、人物だけでなく背景の描き方も美しくて。
ポストカードイラストもたくさんあり。絵と余白(メッセージ欄)の配置が絶妙で、初めて印刷物レイアウトの基礎の本を読んだ時の気持ちを思い出してしまいました。
Adobe Illustratorミュシャが使えたら信じられないくらい大量に高品質な作品を描いてしまいそうに思いましたよ。今の目から見ると、全部手作業ってことになるので…。
華があるだけではなく、闇の中から女性が見つめてくるダークな作品もあったりして、何かの世界に引っ張られそうになりました。絵画展でこんな感覚、久しぶりかもしれない。
後半の方では、彼がまとめたデザイン作例集から何十展も一面にだーっと展示されていて圧巻でした。
こういう、まとめ本って当時他にあったのかなあ? ともあれ、現代にも通じるレイアウトの数々で圧倒されました。
しかし、華やかなばかりでもなく。
当時はロシア革命など戦乱の時代。さらに飢饉などもあって、ロシア復興を呼びかける作品を描かれたこともあった様です。
その作品の傍には、ウクライナとロシアの戦争が続いている今、この作品を展示する意義について夢美術館なりのフォロー文がありました。ここまで踏み込むのは異例にも思えましたが、実際、昨今はクラシック音楽の世界でもチャイコフスキーショスタコーヴィッチなどのロシア音楽は取り上げづらいって聞いたことがあります。つくづく、文化と政治についてかんがえさせられました。もう少し、かの為政者の方が水平にものを考えられる方だったら、あんなことにはなってなかったかも…。
ともあれ、最終日ギリギリで見られてよかったです。雰囲気的に絵を仕事にしている人、したい人も来ていた感もありましたし。
この夢美術館って、エレベーターで上がった2階にあるのですが、退出したらエレベーターの外に並び列ができていて驚きました。
こんなに人が来ている夢美術館、見たことないかも!