「読み聞かせ」と著作権4

「読み聞かせ」に細かい注文 著作権めぐり作家ら(asahi.com 2006/05/13)
についての日記、d:id:Yuny:20060513:p1d:id:Yuny:20060514:p1d:id:Yuny:20060515:p1、の続きです。
かれこれ3回ほど書いてきました。その間、はてなブックマークコメントやトラックバック等も頂きました。他のBlog等も拝見致しました。自分なりに当初の誤解が段々解けて来て、問題点が少しずつ分かって来たかもしれません。


その辺りについての前に、件のガイドラインの配布元ページの変更について触れておきたいと思います。
児童書四者懇談会作成 手引き 「お話会・読み聞かせ団体等による著作物の利用について」
多分、いろいろと問い合わせが殺到したんでしょうね。最初の発表の時はガイドラインファイルの配布だけだったのが、いつのまにかダウンロードしやすいようにページを分割し、さらに郵便やFAXにも対応。それから以下のような説明文が配布ページに補足されました。

  • 日頃はお話会や読み聞かせを通じてこどもたちに本のすばらしさを伝えていただき、深く感謝しています。本手引きは、利用者から要望もあり、利用者・権利者双方の利便性を高めるために作成されました。利用者からのお問合せに対応するため、著作権法の説明や本手引きにおける方針をまとめていますが、著作権法を超えて規制しているようなことは一切ありません。これまで問題なくできたことは今後も問題なくできます。
  • 一般的なボランティア活動であれば、ほとんどの場合問題となることはありません。本好きのこどもを育てるためにこれまで通り、盛んに活動されることを願います。
  • 本手引きは、無許諾で利用できる場合と、許諾が必要な場合に分けて説明していますが、どのようなことでも著作権者の許諾があれば可能です。

これだけ話題になっているので、個々のケースについて、問い合わせテンプレートでも作っておいて、質問者から掲載の許諾の可否を事前にもらっておいて、FAQページにまとめておくべきだと思ったのですが、まあとりあえずは説明文がついているのは良かったかもしれません。反響を予想していなかったのでしょうか?
さて、この解説文を一つずつ検証してみましょう。

  • 著作権法を超えて規制しているようなことは一切ありません」
    • これは私個人の見解ですが、基本的には正しいとは思います。しかし、ちょっとだけ疑問だったのが、弱視者向けに大型本を制作することが同一性保持権侵害になるという考え方。点訳は例外規定になっていますが、弱視者向け大型本制作って例外じゃないんですね。福祉の範疇に入りそうなものですが。(ガイドラインに対する疑問というより著作権法への疑問かもしれませんが)
    • 絵本の拡大使用が出版権に抵触するとされる件についてはhttp://cef.sblo.jp/article/688929.htmlが細かく考察なさっています。
  • 「一般的なボランティア活動であれば、ほとんどの場合問題となることはありません」
    • 一般的、とひとくくりにしないで、ガイドライン提案者側がお考えの「一般的」ってどの辺りまでなのかをもう少し説明していただきたいです。ガイドラインを読めば一目瞭然ですが、無断でのパネルシアター、ペープサートなどは同一性保持権侵害に該当すると判断できます。しかし、パネルシアター、ペープサートって結構一般的にやっている活動だとも思いますし、ペープサートオンリーのボランティア団体とかもあるでしょう。ですのでたとえば、「絵本をその本のまま、多人数の前で読んであげることは問題ありません」など、具体的に書けばいいと思います。あいまいな言葉は誤解を呼びます。


それから、少し遅くなりましたが、頂いたトラックバックについてコメントします。

  • suVeneのあれ: 蹂躙される権利
    • 出版社や著者と利用者が誤解なきように、というのは本当に重要です。このガイドラインは、良く読まないと規制目的ではないことが分からないと思います。そのあたりがもストレートに伝わってくるような書き方ではないのがそもそも難点です。(私は、このガイドラインではあれもこれもダメといいたいのではなくこういう場合はひと言欲しい、が基本路線だと分かるまでかなりかかりました)
  • http://d.hatena.ne.jp/bn2islander/20060515/1147709607
    • 紙芝居化の具体的事例はすぐには見つけられませんでしたが、パネルシアターならば京都新聞電子版(2006年4月30日)パネルシアターや紙芝居で読み聞かせ 山城地域の図書館などが一つの例になります。音楽を入れたりしていますが、こういうところにも再考する機運が出てくるかもしれません。非営利だからって何をしても良いわけではない、というところの再確認のためのガイドラインでもありそうです。
    • おっしゃる通り、親子読書地域文庫全国連絡会(通称:親地連、おやちれん)も会議に加わっていたわけですし、正式見解の発表が待たれますね。
  • rerunのにっき: 読み聞かせガイドライン再考
    • 同感です。ソースは失念しましたが、有名絵本のキャラクターで勝手に話を創作している場合もあるようで、さすがにこういった場合はいささか度が過ぎるかと思いますし。オリジナルの尊重は子供の教育上必須と思います。(著作権上もそうですが、子供に、親が勝手に作った話を鵜呑みにさせるのは、害にしかならないのでは?)


それから、参考になったエントリについてちょっとコメントします。

  • http://news.qoo.moo.jp/?eid=246120
    • たしかに、ガイドラインはチェックリスト式にして分かりやすくしても良かったかもしれません。どういう場合に申請が必要になるかがパッと見で分からないのは問題。
  • http://www.yomiuri.co.jp/book/news/20060515bk1a.htm
    • エントリというより読売新聞での報道ですが、著作権についてよく分かってない方がお書きになられていませんかね? (1行目の「?」はどう考えても不要です)パンフレットではなくガイドラインですし、あまりにも簡易すぎる報道です。誤解が広がるだけのような気がします。せめてガイドラインのURLか、サイト名くらい書いておいても良いのでは?
  • livedoor ニュース - 『ずっとつながってるよ』は、本当につながるのか。
    • LivedoorのPJニュース報道。市民記者に依るものですが、ちょっとお粗末。「児童文学者は「読み聞かせ」が自分たちの「著作権」を侵害すると考えているのだろうか。」とのことですが、ガイドライン上も読み聞かせ自体は問題が無いのです。問題なのは許可無しで形を変えること、有料で行う時に著作者にお金が入らないといったことなので、この問題定義は筋が違っているように感じられました。形を変えることについて、利用者側はたとえば「OHP化は著作者人格権侵害にあたるのか」といった疑問を感じたりしているわけですし、著作者側は販売されている形でひとまず完成なので加工して上演する時はひと言言って欲しい、と考えているだけです。そのあたりの差違について書くべきなのではないでしょうか?

【本稿はd:id:Yuny:20060519:p1に続きを書きました。】

その他、私が見つけたエントリははてなブックマーク - よみきかせに関するYunyのブックマーク→変更はてなブックマーク - 読み聞かせに関するYunyのブックマーク、にて適宜リストアップしていますので、情報が欲しい方はそちらもご利用下さい。
また、はてなブックマーク全体で「読み聞かせ」に関するものはタグ「読み聞かせ」 を検索 - はてなブックマークでまとめてチェックできます。
その他、この問題について検索したい方はhttp://d.hatena.ne.jp/Yuny/20060515/p1#linkにあるリンク集もご活用下さい。