目黒区美術館で人間の手に驚く。

2枚とも目黒区美術館付近にて。



空雲をもつり上げそうなクレーン。人間はどこまで造り続けるのだと思う?




目黒川の夜。川面に当たった光は、人間が作った星々。空には何も見えないのに……。


目黒区美術館に行ってきました。企画展「素描(デッサン)する人々」では、日本における西洋絵画の出発である明治時代に描かれた、さまざまなデッサンを見る事ができました。
人間を写実的に描き取るという行為は、当時はあまり一般的な事ではなかったようです。ましてや裸体ともなると、モデルさんを探すのもひと苦労だったようで。今ではさまざまな美術学校で当たり前に行われている事ですが、なんでも初めての頃は大変な物ですね。そう、これらから日本の西洋絵画は始まったのです。


面白いのが、同じ日同じ場所同じモデルさんを描いている、様々な画家に依る素描を並べている事です。ある1日で何人もの手によってたくさんの作品ができるわけですが、人によって座る位置で角度も違えば、タッチや影の付け方、背景処理の考え方も異なっていて。美術を専攻したわけではないのでこうした素描自体をじっくり見る機会がなかなか無く、同じ人を描いていても、人によってこんなにニュアンスが変わる物かと驚きました。画力に依る差違もありますし。


それから、特に気になった画家で、女流画家の田中志奈子という方。当時ただでさえ女流画家は少なかったのです。今でいえば寿退職といいますか、結婚により筆を折ったようですが。やや線は固めに見受けられましたが、筆致は確かな物でした。指の描き方に独特のまっすぐさがあって、面白く感じられました。


それから、これらの作品は当時の人々の体格や生活模様をも伝えてくれているわけです。
単に当時のデッサン技法や技術について学べるだけではなく、どんな人々が居たのかを教えてくれているわけです。
見ていて暖かくなった作品が、第2展示室にあった三味線を構えたおばあさんの作品でした。三味線が大好きだということや、このおばあさんがとても暖かい人柄だということが、まっすぐ伝わってくるようでした。この1枚を見ただけでも、今日、目黒に行った甲斐があったように思います。


この展覧会は12月3日まで。
詳しくは目黒区美術館サイト
http://www.mmat.jp/
にて。