最終回であってそうではなかった(コミックフラッパー2012年10月号)

ついに、『ダンス イン ザ ヴァンパイア バンド』が終わってしまった……?
表紙だけ見るとそう思えるのだが……、実は終わっていなかった。
再来月号から(おそらく浜さん主役の)スピンオフを掲載し、春先から第2部をやる、とか。
確かに、ニセ姫との決戦は終結したものの、伏線が大量に残ってしまっている。大増52ページとはいえ、すべて回収しきるのは無理があった。表紙を見たときに52ページで終わらせられるのか、100ページくらいないと無理じゃないかと思ったものだが、それは当たっていたわけだ。ラストシーンもナゾだらけだ。あのヒトは何者なんだか。見たことがない……気がする。


それにしても、現実世界を剽窃したファンタジーとして本当に良くできていたと思う。
人間の身勝手さ・逆に厚い友情といったヒューマニズムや、日本の借金をどうするんだというような話、インターネットの使われ方などなど、妙なリアリティがあった。……まあ、ヴァンパイアの存在自体は、荒唐無稽といえばそうなのだが。
そして質感の高い絵柄、画力がそれを後押ししていた。緩急自在の構成は、読んでいて飽きなかった。あの、高校内教会での最初のバトルシーンから7年も経過したのが信じられない。


ミナ姫とアキラという主従のキャラクターは、本当にしっかりしていた。
二人とも人間を超越した能力の持ち主ではあるが、弱点や人間味もあり。かっこよさと泥臭さが両立していたと思う。だからこそ、読者はつかの間、この物語の中で【生きる】ことができたのだ。自分だったらどうする? と思わされるシーンは沢山あった。


衣食足りて礼節を知る。昔の人は良く言ったものだ。実際、足りないものがあるから、暴動や犯罪が起こる。満ち足りていれば、トラブルなんて起こす気にならない。
ヴァンパイアバンド内では衣食住の保障がされるという設定は見事だった。もちろん、潤沢な資産に裏打ちされてのものだけれど。日本では憲法上「健康で文化的な最低限の生活を送る権利」というのは保障されていることになっている。しかし、現実はどうか。そううまいことは行っていない。孤独死の例を引くまでもなく、本当の意味でこの世界は王国ではない。
また、ヴァンパイアバンドでさえ内紛が起こったのは、もちろん権力闘争のためではあったけれど、心の平安というところまで統治が行き届いていなかったということでもあっただろう。この点、思考実験としても興味深く感じた。


ひとまずの決着はついた。だが、まだ終わらない。本当の最後まで、見届けたいと思う。