とんでもない埼玉!

一度は見ておかねばならない謎の使命感のもと、『翔んで埼玉』の映画版を見てきました。ようやく。他のお客さんのリアクションも面白かった。
元はといえば、『パタリロ!』で有名な魔夜峰央先生が若かりし頃に書かれた3回分の短編連載。
新潟から所沢へ引っ越して漫画を描き続けていた頃の鬱屈とした想いがきっかけだったとか。ただ、3回分のあとで作者様が埼玉県外(ちなみに横浜!)にお引越しされたために、続きを描けなくなってしまったという…なんともこれ自体が冗談のような背景を持つ怪作であります(参考文献は『翔んで埼玉』収録の『やおい君の日常的でない生活』コミックス後書き)。
連載は前述の作者事情により中途半端なところで終わって。いまの時代になってこの漫画が面白い、と、発掘され、映画にもなったという。
あの面白いのに中途半端な作品からよくぞここまで仕上げたなぁと。逆に最後のオチまで描いていなかったから、映画でしっかりとしたシメをつけられたのかもしれませんが。
さて、映画版は流石にあの世界をリアルとして描くのには無理があると判断されたのか、あくまでも「こんな都市伝説が埼玉にはある」というラジオ放送の体で進みます。しかし…最後の最後に、この物語の核心設定である「あくまでもラジオ」の前提がひっくり返されたりもして、どこまでがリアルなのかよく分からなくなってしまってそれもまた面白かった。
都庁が出てくるあたりから結構リアルっぽさが強まってきて、ほんとどこまでが映画なのかと思いましたよ。新宿都庁付近なんて知ってるところばかりでしたし。
昔から、地域性でディスりあうっていうのは何かしらあるものです。それを魔夜峰央フォーマットの大げさな世界観に組み込みつつリアルの事情と絡めるとあんなトンデモになる。千葉との決戦のシーンは本当に圧巻。『パタリロ!』といい、魔夜峰央作品は大げさで舞台っぽい分、かえって2.5次元に実は向いているのかなぁ。
ところで個人的な埼玉県の印象はものすごく突出した何かはたしかになさそうではありますが、それなりに安定安心の県ってイメージが。だいたい、西武線自体がそんな感じで。西武が中心になって駅前開発をすると、良くも悪くもどの駅も同じようなクオリティになる気がします。それなりの施設はちゃんと揃っていてそれなりに便利なんですが、地域性のところに微妙な疑問符が付いちゃう。可もなく不可もないのであまり批判しにくいのですが……。しかしその安定性を完成させるすごさが埼玉県にはありますね。
ニッチな映画なのに結構長くやってると思います。映画館によってはそろそろ公開終了かも。埼玉、千葉、茨城、東京に長く住んでいる人に特におすすめ。テレ玉とかNACK5などリアルに埼玉な描写も濃く、背景を見ているだけでも楽しめました。
……ちなみに、私は埼玉には住んでいませんが、西武線には馴染みがありすぎるので!
あとあの埋蔵金ネタと赤城山って、どう見ても糸井重里さんが昔やっていたあれに掛けてますね。そういうところも面白かったですね。