AIお絵描きさんと絵を描けるひとの未来を考える

最近、毎日のようにAIにキーワードを指定して絵を描いてもらういわゆる『お絵描きAI』のニュースをはてなブックマークで見かけてました。こういうヤツですね。

要は、希望の絵のイメージをキーワードで入力すると、それっぽく描いてくれるシステム。
ただ、今のところ、導入のハードルがあれこれそれなりには高いことで様子見していたんですが。
LINEでお試しできるようにしてくれた方が現れました。

で、お試しに「モネが描いた東京スカイツリー」とお願いしてみたら。
1回目。

2回目。

こんなのを1分も掛からずに描いてくれました。
キーワードを、もっと密にすれば、もっとちゃんと描いてくれそうです。
こういうのには人間やキャラクターとかには「不気味の谷」がつきものですが、そこまで本気度を求めないイメージイラスト程度なら、もう充分に使えそうです。
軽い動画の背景とか。ざっくりしたプレゼン資料とか。商業ではないような、いわゆる「いらすと屋」で充分なレベルの個人的なニーズなら、そこそこ使えそうな感じ。
ただ。
そうなると、適切なキーワードの選定っていうのか。こういう時にはこういうキーワードが正しいっていう知識も必要そうです。
例えば、さっきみたいに、東京スカイツリーをテーマにしたモネ風の9月の夕暮れの絵をAIに描いてもらうとして。
正確性を求めるならば、背景には、2022年9月には白い満月と夕暮れの太陽は両立できないです。

月齢15程度となる2022年9月12日の月の出の時刻は19時8分。日の入りは17時53分。
こういうことは天文学の基本的なこと(月と太陽の動き)を少しでも知らないと、そもそもジャッジの対象となると判断できない。
というか、例えば「モネ風に描いて欲しい」っていうイメージを持つためには、モネという画家の絵を何点かでも見たことがなくてはならない。
絵を描いてもらうことそのもの以前に、こういう周辺知識がないと、正しい指定自体が出来ない。
何かの需要があったとして、そこにはモネが相応しい、夕方のイメージが相応しい……とジャッジすること自体に、人間性が必要になると思います。
よく、AIが画家の仕事を奪うのでは? という問題が論議されますが、人間ならではの仕事は必ずあると思うんです。自分でも描ける人ならではのAI指定もあると思いますし。
ただ、あることの『匠』であることだけに固執してしまうとやりづらくなっていくのではないかな、とは思います。
これはあくまでも、概念上の例え話なんですが。人間の『匠』なら1時間で10個できる「何か」があるとして。クオリティは個々に100とすると、『匠』の仕事量は1000/1時間と算出できます。一方、AIでは、個別のクオリティは60程度だとしても、1時間に100個出来るかもしれない。すると、仕事量は6000/1時間。人間の6倍となる。
量はパワーなんですねぇ。
で、これから必要になる仕事っていうのは、多分。
とりあえず、基本的なことをプロの観点から『指定』して、そこから『たたき台』程度のものをAIに大量に作らせる。その中から使えそうなモノをプロの『匠』の目で拾い出して、手作業で磨く。
仕事の1から100まで『匠』の手をわずらわせなくてもいい。とりあえず始動の部分の完成度0から10程度の指定はして、そこから完成度50とか60くらいまではAIにお任せして、いろんなモノを量産させる。その中から使えそうなモノを数個選びだし、完成度100まで磨いたり、さらに先の「神レベル」(完成度120とか完成度1000とか)の完成度の部分には十二分に『匠』の天才性と経験則を活かしてもらう。
そんなお仕事スタイルが生まれるんじゃないかなと。
そういうことを考えているので、お絵描きAIが必ずしも、画家の仕事を全部奪うことはないかもな、と。むしろ、上手く使えば今までより沢山の神レベルの絵が描けるんじゃないかな。
今後、絵を仕事にしていく人には、そういう柔軟性も必要になるかもしれない、と、素人ながら思うのです。
まあ、そう簡単じゃないよー、という反論は、沢山ありそうではありますが。

プロの仕事って、2種類はあるみたいで。
大学時代。オーケストラ部の恩師にプロとは何かをお聞きした時「常に8割の結果を出し続けること」っておっしゃっていました。体調が悪かろうとなんだろうと。
それとは別に、天才的な、普通の人には出来ないことをするのも、やっぱり私はプロだと思うのですよ。
AIがお手伝いすれば、もしかしたら、天才にいくばくかの量産性をもたらすかもしれないな、と、ふと思った次第です。
今までなら矛盾していたことですけど。ハイブリッドできるんじゃないかな。