第71回 毎日広告デザイン賞入賞作品展

「第三部 広告主参加作品の部」を見てきました。
会場は、銀座の老舗デパート「松屋銀座」の7F、デザインギャラリー1953です。会期は2004年5月17日(月)まで。入場無料。なお、サイトでは、前回の入賞作品が見られます。
http://macs.mainichi.co.jp/design/ad-m/index.html

新聞広告って、時々面白いものが載っていますね。今回は、それらのピカイチを見て来られました。全部面白かったんですが、中でも気に入ったものをご紹介します。
なお、全ての広告についての著作権は、その制作者の皆様にありますが、ボディコピーと思われる部分のみテキストを引用(「」内)させていただきました。


*「これからのニッポンを(改行)背おっていく骨だから。」(味の素 ほんだし)=最高賞
新聞2ページ分を堂々と使った見開き広告です。今回の一番良かった賞を受賞しました。
この広告自体は見られませんが、一応、味の素の広告サイト。
http://www.ajinomoto.co.jp/cm/index.html
基本色はセピアで、中央に背骨に見立てた組み体操をしている子供たちが写っているものです。一昔前と比べて、身体は大きくなったのに、カルシウムが不足している子供たちを憂い、魚の骨も丸ごと使った「ほんだし」で、丈夫な子供に育って欲しい、と言う物です。
実際、ご覧になるとお分かりになるかと思うのですが、もうこれはアイデアと迫力の勝利でした。説得力があります。


*「朝のリレー」(ネスカフェ)=優秀賞

詩人・谷川俊太郎さんの名作「朝のリレー」を素材に、さわやかな青で仕上げた全面広告。これは中吊り版を電車で見かけたことがあります。テレビCM版はこちら。
http://jp.nescafe.com/tvcm/morning.html
この詩、小学校の時に感動して、横につなげたレポート用紙と割り箸で巻き物を作って、縦書きで書き写して持ち歩いていました。だから、こうしていろいろな人にこの詩が知られて、素敵なビジュアルに仕上げられて、とても嬉しかったです。朝の一杯はネスカフェでってことですね。実際、あのコーヒーはおいしいと思います。量を間違えるとにがい目に遭いますが(笑)。
さわやかな青で、詩によって商品のメッセージを伝える。優しい手法です。こういうのも何か得したようで、いいですね。詩を一編鑑賞できるのですから。


*「京女の新しい風。」(京都女子大学)=準部門賞

京都女子大学では今、学部学科の新設や公募推薦入試を実施しているようです。最近、短期大学から大学に改組したり、学科の新設をしたりと、大学界ではいろいろな動きがあるようですが、この学校のもその一つでしょう。この広告は見られませんが、サイトはこちら。
http://www.kyoto-wu.ac.jp/
この全面広告は、テキスト部分の使い方が非常に印象的でした。「風」がテーマなので、一行一行の文章の配置を風のように波立たせて、その風の吹く先に空を希望を持って見つめているような女子学生の写真があるんです。
そのテキストも全部同じサイズで、ではなく、内容によってサイズを変えています。学部学科の紹介は大きく書き、細かなデータ(就職実績など)は小さな文字で。かなり芸が細かいです。
テキストでもここまで「絵」に出来るんですね!


*「森はなくせない、明日のように。」(コスモ石油)=準部門賞

ピンナップで、アルバム調にパプアニューギニアの焼き畑農業の様子が写真で語られた全面広告です。そして、コスモ石油は焼き畑から稲作へ、農業を転換するための支援活動をしているのだそうです。この広告は出ていませんが、この事業についてはこちら。
http://www.cosmo-oil.co.jp/kankyo/com/newspaperad02.html
これはアルバム調の紙面構成も見事ですが、コピーがしなやかです。毎日を必死で生きているのはみんな一緒。でも、森林環境を守りながら豊かに生きて行けたら、その方がいいわけです。明日のために、残したい緑があるということが、言外からも伝わってくるあたたかな広告でした。


*「日本←→オーストリア(改行)なんと0円!」(チロルチョコ)=準部門賞

これはユーモアたっぷりに大きく出たチロルチョコの全面広告です。「チロル割」って書いてありますが....。この広告についてはこちら。
http://www.tirol-choco.com/cm.htm
これはもう、上記のページでご覧になってください。よくあるでしょ、航空界社のCMで「何々割」っていう割引。あれを模した懸賞の広告です。そりゃ、当たれば0円でしょ。この堂々さがいいです。迫力あります。それに、よく見るとコレ、飛行機もチロル仕様なんですよね。


*「人は伝えたい、だから、(改行)NTTドコモ」(NTTドコモ)=企画賞

03年の文化の日に、NTTドコモ毎日新聞の紙面のあちこちを占領しました。そして独自にコラムを書いて、色々な文化人の作品を紹介しつつ、メッセージを伝えてくれました。これは内容が内容なので、特にリンクは張りませんが、興味のある方は図書館などで2003年11月3日の毎日新聞朝刊を探してみて下さい。
これは、個々のコーナーのコピーが良かったです。以下、順不同ですが。
「伝えたい想い、音楽家は楽譜に託した」("川の流れのように"の楽譜)
「伝えたい想い、画家はキャンバスにぶつけた」(ゴッホの"ひまわり")
「伝えたい想い、マンガ家は1コマごとに吹き込んだ」(手塚治虫の"火の鳥"他)
「伝えたい想い、脚本家は電波に乗せた」(作品不明のシナリオ)
「伝えたい想い、作家はペンで語った」(作品不明の生原稿)
「伝えたい想い、映画屋はフィルムに焼き付けた」(作品不明の映画フィルム)
「脚本家」「作家」「映画屋」のは、展示カタログでは文字が小さくて何の作品のか読めませんでした。実物を見た時にメモしておけば良かったですね。申し訳ありません。
しかし、記事との連動といい、コピーのセンスといい、この企画は面白いです。こういうのが好きな人...スタンプラリーをついついコンプリートしてしまうような方々...には、たまらない作品となったことでしょう。

会期終了が迫っていますが、16日(日)は夜8時まで、17日(月)は5時までやっています。良ければ行ってみて下さい。また、多分、後日、最初に紹介した公式サイトでも見られると思います。