完全に利他的な愛は、存在するのだろうか?

アガペ 1 (MFコミックス)

アガペ 1 (MFコミックス)

アガペ 2 (MFコミックス)

アガペ 2 (MFコミックス)

最近気になる漫画……。「アガペ −犯罪交渉人 一乗はるか−」という作品。(どういうわけか、掲載誌「コミックフラッパー」ではあるサブタイトルやロゴが、コミックスでは使われていません)
作画の石黒正数氏は、この「コミックフラッパー」でシュールな読み切りギャグ漫画を描いていたので、ここまでシリアスな話を描いていて最初は驚いたのですが。今ではだいぶ慣れました。まあ、原作のある漫画ですから、作家さん本来の作風から離れることもあるでしょう。
始めは連載だけで満足してて、コミックスを買う気は無かったのですが、立ち読みで見返してみたらえらい伏線の数。これは今後の話を追うためには買っとかないと分からない、ということに気が付きました。特別に好きな絵柄でもないのに、妙に気になる話です。

漫画ゆえに出来るストーリーという感じがしますが。女子高生・一乗はるかは5年ぶりに再会した父を、たまたま乗ったバスのバスジャックの犯人に殺されてしまいますが、犯人を説得(? といっていいのだろうか)することに成功、投降させます。目の前で父親を殺した犯人を「もう頑張らないで」と赦したその人格から、警視庁のネゴシエーター(犯罪交渉人)としてスカウトされ、女子高生ながら凶悪犯罪の交渉人となります。地位は巡査部長。
犯罪交渉人としての3つの方法……『完璧に理論化された交渉テクニック』『人生の機微を知り尽くした「落とし」・「吐かせ」』そして、『人質同様、犯人をも本気で救いたいと思える「愛・アガペ」』……これらのそれぞれのプロ3人により、特ゼロというネゴシエーターチームが結成されたという筋書きです。

そしてこの三者三様の個性を生かした交渉が、様々な事件で行われる……と、普通ならこうなるところですが、そうは問屋が卸さない。詳しくはコミックスで、ですが、はるかというキャラクターそのものの謎へ迫って行く展開で見事に読者を裏切ってくれました。事件簿物でありがちな「様々な事件での主人公の活躍」というラインに行かなかった。
連載の最新号を読んでもまだ、この話で問われている「アガペはあり得るか」という所には明確な答えのような物はありません。(掲載誌の5月号が発売されている現在、コミックスには3月号掲載分まで収録されています)

今後の展開では「四角い月」というのが一つの重要なキーワードのようです。そして、正方形の下に線を引いたマークも。コミックスのカバーデザインや、フラッパー2005年5月号の作中の絵画にも使われていますが。「四角い月」と「一乗はるか」と「アガペ」のつながりはまだまだ見えてきていません。連載1年が過ぎてこれからが本番という感じ。まとめて読まないとつながりが見えづらいのは結構つらい物がありますね。(フラッパーって月刊誌だし)

特筆すべきは絵柄のシュールさ。特にフラッパー2005年5月号掲載分では本領発揮というところ。目立つ連載じゃないのに妙に存在感があります。
さて、コミックス2巻では細かい遊びがあります。ヒントは「イカ焼き・ホットドッグ・たこ焼き・天丼・ハンバーガー・蕎麦・箱入りピザ・くし焼き・大きなおむすび・アイスクリーム・寿司・お好み焼き?(オムレツかも)・鯛焼き」という所。探すの大変だった。深い意味はなさそうですが、漫画ってこういう遊びが効くところも面白いですね。作者さんの好物なのでしょうか?