「ブログの機能とその可能性」(有限会社ジオデシック 取締役 栗田伸一氏)

有限会社ジオデシックは、Macintoshの日本れい明期のころから、Mac関連本をはじめとした情報関係の一般向けの書籍を執筆してきた、主に書籍制作の会社だそうです。欧米では「パッケージャー」と呼ばれる企業があり、企画や執筆をしてその本を出版社を探して売り込むというタイプの出版形態があるそうですが、日本では下請けとか編集プロダクションになってしまうそうです、こういう仕事は。
Macれい明期のMIT訪問のエピソード、日本で初めてのMacintoshユーザグループ(JMUG)設立、日本で初めての日本語によるMac本出版のいきさつ、マルチメディア大流行時代の苦労話など、一人のMacユーザとしても興味深いお話が伺えました。
どうもパソコン新技術のれい明期に何かと関わる会社のようで、Blogがはやり始めた頃のいきさつ、データベースとしてのブログのあり方をまとめた「Blogの力」という本も執筆されています。

ブログの力―Blogの可能性に気づいたユーザーたち

ブログの力―Blogの可能性に気づいたユーザーたち

ブログを続ける力―Blogを続けるのに必要かつ大事なこと

ブログを続ける力―Blogを続けるのに必要かつ大事なこと

これらの書籍についてのお話もありました。私はまだ未読ですが、講演で『ブログは日記ではなく、日誌である』という言葉には、なるほどとうなずかされるものがありました。日々の学びのデータベースとして蓄積し、また、過去の日付けにも書き込んだり、検索しやすくしておくこと(タグ付けや検索システムを利用する)で無限の可能性のあるデータベースになるということです。年代学、時系列エントリ集としてのブログの可能性です。


それから、建築家・秋山東一氏と組んで出版した「Be-h@usの本」のお話も興味深かったですね。

Be‐h@usの本―セルフビルドする木の家、インターネット時代の自立知的住宅。

Be‐h@usの本―セルフビルドする木の家、インターネット時代の自立知的住宅。

秋山氏のサイトは昔からお作りになっていましたが、更新作業の煩雑さやサイトの陳腐化などである種の限界が来ていました。そこへブログという技術がやってきた。本を出すことをきっかけにして、サーバを立ち上げてブログ「aki's STOCKTAKING」が始まりました。
紹介文によれば、氏は

Linux」のような「オープンソース」の概念を建築の世界に初めて導入して、新しい住宅システムのしくみを公開し、今までには存在しなかった新しい集まりのネットグループCITROHAN.netを運営されています。

とのこと。講演でもこのような概念が紹介されていました。家の作り方メソッドをオープンソースにし、ネット上に情報を蓄積する。ちょっと知ってる人が学びにきて、ついでに知っていることを置いていく、この繰り返しで技術は無限に発達していく可能性があるわけですね。

感想

もともと、世の中の知識はある意味でオープンソースだったわけです。大昔は。
例えば、縄文時代に効率的な貝の拾い方なんてのがあったとしたら、その知識は多分、ムラ(集落)の中で共有されていたんじゃないか、と思うのですが……。
しかし、世の中が発達していって、だんだん「流派」「門外不出」みたいな壁ができて、現在のような企業時代になってもそれはある意味受け継がれている。企業のための技術や知識であって、民衆のためではない。
そこを原点に返り、生活者のための技術・知識というスタイルを作ろう、という動きなのが、クリエイティブ・コモンズオープンソースといったことなのかもしれません。


それと、ブログはデータベースである、ということや、過去エントリーの活用などは目から鱗でした。まずは自分のための記録なのですから、何年も前のことを書いても良いわけですね。はてなダイアリーも過去日記書けますし。
講演でもおっしゃられていましたが、私も、儲けるためのブログとかの書籍は多いですが、もっと知の活用という方面が議論されてもいいと思います。