雪が降る人生(みち)を

東京は今朝はえら〜い雪。ドキドキしながら町を歩いていると、口をついて出てきた鼻歌は「雪が降る町を」でした。
多くの人がそうなのでしょうけれど、私にも雪にはいろいろと思い出があります。


亜細亜の常夏の国で幼稚園のラスト1年と小学校の最初の2年間を過ごし、帰国した自分を待っていてくれたのは、夜空を舞い散る白い白い雪でした。帰りの車の中、慣れ親しんだ友人との別れに加え、飛行機の旅で少々疲れていた私を、あの国の気分から吹き飛ばしてくれた。車窓の中から空を見上げ、じ〜〜っと眺めていた記憶があります。
そう、ここは故郷の国であり、自分はまた帰ってきたのだと実感しました。今までの生活に無かったものは、寒さと雪でしたから。
……そういえば、あの日自分は何を着ていたのだろう? ずっと半そでか、あってカーディガン程度の生活だったと思うのだけれど。ジャンパーとかコートとかは無かったはず……? 日本から出国する時に持ち出したとしても、サイズが変わっているだろうし。あの国で冬物はそうそう入手できなかったと思うし。


雪が降る国、日本。
学校は全国的に春休み。いったんは郷里に落ち着いたのですが、父の急な転勤で一家で東京に出ることに。
そして東京でも、何度となく雪を経験しました。雪うさぎや雪だるまを作ったり、雪合戦をしたり。道で転んだり。冷たくて固体なのに、いつのまにかびっしょりになる経験。雪かきをして、ほうきで雪掃除をしているつもりが、ただ単にあたりにまき散らしていただけだったり。
中学入試と高校入試、それから大学入試センター試験の時は、たしか雪が降っていたと思います。受験=雪。考えてみれば、あの頃は未来が白紙でした。雪に足跡を付けるように、一歩一歩歩いてきたんだなあと本当に思います。


八王子の山奥の大学時代、あの地域の天気予報は東京都内ではなく山梨県を見た方が当たるようでした。当然、雪も本当によく降っていました。片道2時間通学では電車やバスが遅れたりすることもしょっちゅうでしたが、一生懸命に動かしてくれる交通機関職員の皆さんには頭が下がります。
交通機関といえば、自分の成人式の日もまた相当な雪でした。その時には小学校時代の町から引っ越していたのですが、それほど離れていなかったので前の区の成人式へ行きました。しかし、鉄道がのんびりのんびり動いていて。当然式には遅刻するし、足もともぐちゃぐちゃ。振袖は着ないで洋装で出席したのですが、振袖を選択した旧友たちは大変そうでした。でも、雪のおかげで再会の暖かさがより身に染みてうれしかったのを覚えています。


でも、21世紀に入ってから、東京では冬にはあまり雪が降らなくなった気がします。
今まで、人生の折々で雪を経験していただけに、ちょっと物足りないというか、寂しさを感じていましたが。
今日は子供のころのように雪が降っています。
寒いし、交通機関は乱れるし、服や靴もびっしょりになるし、雪かきもあったりして大変ですけれど。
雪が降ると気持ちがしんなりします。町も静かになります。


今日は、雪な気分。白い気持ちでゆっくりと過ごしたいものですね。