逃げる少女(紫堂恭子 著)

紫堂恭子先生の新作を読みました。

あの、『辺境警備』の『星が生まれた谷』の出来事から2年後らしい。
辺境警備といえば、豆みたいなかわいい兵隊さんとスケベな隊長さん、隊長さんにだけ厳しいけど優しい神官さん、その父上(実は大いなる賢者様)の背高さん、そして、ツンデレの呪術師。
…なのですが。
今回は西カールでも、東カール(シープホーン村など)でも、はたまた王都(エンディミラ・オルム)でもないみたいですね。ただひたすら、訳の分からないまま姿すらも分からない破壊者から荒野や森林を逃げまくる少女ジェスベルと、その子を助ける青年セスのお話。
今作では辺境警備の世界観でも今まであまり触れられていない、旧魔国へとお話は展開してゆくようですが、第1巻は起承転結でいえば起なのでしょう。
お話のキーは今のところ4つ????
この怪奇現象はなんなのか?
この少女は誰なのか?
彼女はどこから来たのか?
どうやって来たのか?
謎が解かれるのはだいぶ先と感じさせつつ、とある人物と出くわしたところで第1巻終了。そうか、彼と出会うのか!
美味しいものはとても美味しそうに、怖いものは真正面から怖く。そしてココロの交流もきちんと描く紫堂恭子ワールドは変わらずそこにありました。ものすごく丁寧に描き込まれた背景が心理描写にも影響している、なんというか、別の世界がそこにある感じがすごく好きなんですよねぇ。ほら、現実でも、日の暖かさにホッとするのか、それとも焼け付くように自分を責めるように感じるのかで、同じ気温同じ湿度同じ日照状況でもその人にとって全然違った意味になるじゃないですか。ああいうところまで紫堂先生はちゃんと描くので。日が照っていても、良い天気だから出かけようってなるか、ショックなことがあったり気分が塞いだりでカーテン締め切りで部屋に閉じこもるかっていうので、全然違うでしょう?
また辺境警備シリーズを(シープホーン村とかグラン・ローヴァとかも)読みたくなったなぁ。
辺境警備の世界でありながらサスペンスティックな新機軸、この先が楽しみです!