カレーなる思い出

のっけからおやぢギャグだが、カレーうどんの思い出である。
中学3年の吹奏楽コンクールが終わり、11月末の文化祭での演奏会を終えて、ようやく受験勉強に本腰を入れた冬。
家ではさっぱり集中できない自分の味方は、自転車で15分くらいのところにある公立図書館だった。
部活に熱中しすぎて塾に通う暇がなかったので、受験勉強は学校の宿題と通信教育、それから当時始まったばかりだった専用のコンピュータでの自習教室。
だもんで、自分で反復学習あるのみ。やらなきゃしょうがないものがそこにある。*1
日曜日の朝になると、親から昼飯代500円をもらい、自転車を飛ばして開館の9時から自習室へ。
13時ごろまでその日のノルマをこなしての最大のお楽しみは館内食堂。カレーうどんと、自販機の缶ジュース1本で500円ジャスト。
日曜日の週1回しか来られないし、ウチではカレーうどんを作る文化が無かったので、あの自分の世界が狭かった頃には貴重なる味だった。
ちょっと変わっていたのは、カレーなのに仕上げにナルトとワカメが入っていたこと。
最初は違和感がすごかったけれど、うどんと考えるとアレは正解。わかめとカレーとうどんはアリである。
多分、特別な麺を使っているとかは無かったと思われるのだが、しっかりとコシのある太麺、茹で上がりもちょうどよくそれなりに量もあり、スライスされた豚肉もしっかり入っていて。あとやっぱりダシの味もする濃いめのカレー。今でも他でカレーうどんを食べたとき、スープが薄いと違和感があるくらいだ。
ともあれ、昼過ぎにここでしか食べられないカレーうどんをありがたく頂戴して、あとは18時ごろまでその日の課題に取り組んだ。
閲覧室を長く占領してしまって少しばかり申し訳なかったな、と、今では思わなくもないのだが。閲覧室がかなり広かったので助かった。
なんだかんだで図書館で8時間勉強、帰宅して夕飯など済ませてからちょっとだけ勉強。
12月から1月の毎週日曜日、冬休みに入るとほぼ毎日がこんな生活だったと思う。コンピュータの自習教室も図書館の少し先だったし、ともかく家ではあまり勉強してなかった。
あんなドタバタ受験勉強でも(しかも3年生12月の期末テストの結果が壊滅的でかなり泣いた。都立高校受験は内申点が命…)なんとか第一志望の都立高校に受かった理由は、地元図書館の食堂のカレーうどんが美味しかったからだと今でも思っている。
そういえば。別にカレーうどん屋というわけじゃなくて、ごく一般的な食堂だったわけだから、多分、親子丼とかトンカツ定食とかのメニューもあったはずだと思うが。
他のメニューの味は覚えていない。本当にオーダーしなかったのかもしれない。
あの食堂のスタッフのおばさまは淡々と作っていらしたけれど、本当に今でもあの味には感謝している。
たまに前夜のカレーが余った日にカレーうどんにチャレンジしてみるが、あの味には至れない。
ごく普通のカレーうどんなのに、めちゃくちゃ美味しかった。
今となっては、コツとかレシピとか、そういう問題ではないような気もするのだった。

*1:この頃こなしていた課題は、某進⚪︎ゼミの『合格への100題』。選りすぐりの100問×5教科の500問を冬休みの短期間にクリアするもの。重要ポイントが絞られている良問ばかりで、効率的に中学3年間を復習できる優れた問題集だった。付録の進行表にマークしながら進めていくと文字が浮かび上がってくるというナイスな仕掛けあり。単純な自分にとっては起爆剤だった。あとは都立高校の過去問で個人的な模擬試験。これもなんだかんだで邪魔が入る家では時間を計って取り組むことができなかったので、図書館は本当にありがたかった。