裏世界ピクニック、9巻(小説の方)

「裏世界ピクニック」の9巻発売につき、今までの1〜8巻が読み放題サービス(Kindle Unlimited、auブックパス読み放題、BOOK☆WALKER読み放題)で2024年6月30日まで無料だそうです。
マジで太っ腹っ!
発売記念って事でイベントもやるらしい。どうしても外せない先約があって行けないのがもどかしい……。残念。
この世にはやっぱり不思議ってあると思う。
この作品での不思議な出来事にはそれぞれ『実話怪談』というモデルがあるそうで。現実世界で、インターネットなどで語られた、不思議な体験談の数々。
でも、それは単なるネットのウワサ以上に。やっぱり本当にあったかもしれない。実話怪談とか知らなくても、神隠し的な話とかは単に伝統的な伝承以上に本当にあるんじゃないかと思う。
現実にも時々起きている、急に人が行方不明になる事件。
迷子、事故、誘拐など、人為的に説明が着くのがほとんどだとは思うけど、中には異世界や異次元、並行宇宙のような場所に…ってこと、あるのかもしれない。妖怪や人外の存在とか、実は本当にいるのかもしれない。
あるいは、自分も説明のつかない不思議なことを経験したことがある。あれは何だったのか、何年も経っているのに今でも気になる……。
そんなことを思ったことがある人は、読んでみてほしいな。
マジで面白いから。今ならタダだし!
ちなみに、自分は両方です。宇宙人や妖怪とかは実際にいてもおかしくないと思っていますし、自分も不思議な経験をしたことがあります(詳細はプライベートなことなので控えます……なんてね)。

……というわけで巻を重ねて重ねて重ねて重ねて………いよいよ第9巻!
以下、読んだ感想を。9巻に関してはネタバレできるだけなしです。
9巻での具体的なことは控えて心象だけで語りますと。
一言でいうと、るなちゃんのエヴァンゲリオンをやったような感じ。……あ、うーん、……絶対意味わからないな、これじゃ。
通過儀礼、自分が自分になるためのやらなきゃいけないこと、成人式。なんかそんな感じの巻でした。
るなにとっての。
碇シンジくんのあの時みたいに。
今思うと、8巻が空魚と鳥子のそれだったのかもしれない。
で。
ひとつどうしても気になっているのは、さつきさんのファンガールがこれだけで済んでいるのか? ということ。
なんてったってアルファフィメールの異名を持つあの人だからね。
空魚が葬儀で宣言した「みんなまとめて面倒見る」って本当にできるんだろうか?
他にもいるとしたら……手が足りない気がする。物理的にも、精神的にも。
っていうか、さつきさんとは別の意味で空魚ちゃんも大概にしろって感じだしなぁ……。鳥子も苦労するわけだわ。天然タラシもいいところ。
そもそも論。裏世界の意識は空魚を狙っているのは明白なわけで。どう考えても完っ全にターゲットにされてる。ってことは、裏世界そのものをタラシ込んでるのはむしろ空魚ちゃんの方じゃないか? これ、本人に言ったら絶対怒られる…‥とは思うのだけど。
仮に、好きな人には何らかのちょっかい、接触、コミュニケーションをしたいものだ、というのが真だとする。
だとすると、裏世界に意識があるとして、空魚があんだけ色々とちょっかいを出されているのは、裏世界に惚れられてしまったからだと思うんだよね。……鳥子の方より空魚の方が。
鳥子は勝手に裏世界に迷い込んだりとかはしていないみたいだし。さつきさんを探したりとかで自分から向かっていく事はあったけど。それもさつきさんに裏世界への行き方を教えてもらったからできた事で。
空魚ちゃんの場合は廃墟探検をしているうちに大宮の廃屋に辿り着いてしまい、ドアを開けたら裏世界に着いてしまった……んだったな。
つまり、裏世界への行き方なんか知らないのに自分からドアを開けた。っていうか、裏世界の存在なんか知らなかった。
ただし、ただの廃墟マニアだったわけではなくて、別の世界を求めていた。だから実話怪談には詳しかった。ないはずの世界が実はあるかもしれない、という実証の手がかりになりそうだと思っていたから。実話怪談は、いつどこで何があった、というのが、ある程度だけどたどれるから。怖さよりもその実証性が頼もしかった。
そうなると……ある意味で、空魚は裏世界と相思相愛みたいにも見えてくる。
お互いに求め合っていたんだから。
こりゃ、鳥子は恋敵がめちゃくちゃ強いヤツってことになっちゃうなあ。裏世界そのものが恋敵とも言えるとすればだけど。
空魚自身にタラシの自覚がゼロだから余計に大変だわマジで。
まー、これで自覚があったら相当イヤなヤツだけどね。でも、鳥子が空魚に時々バイオレンスになるのはわかるわ。鈍すぎるよマジで。いい加減、分かれよ……。たまに他の人に無自覚でかっこいいのマジでやめてくれよ……って、なるわな、うわぁ。天然ジゴロの彼女ってマジで大変そう。ご愁傷様です。がんばってくれ。キミじゃなきゃ無理だから。
さてと、この作品世界の枠組みが相当見えてきた巻だったけれど。
発売予告にもあった通りの対裏世界訓練や、小桜さんのもくろみ……なども、続きが気になるけれど。
この話、最終的にどこに辿り着くんだろうか?
探検の末に空魚と鳥子が裏世界に溶け込んでしまって終わり、とか、そんなつまらないオチはないだろうし。
『向こう側』の親玉の意識との対話……のようなイベントがこの先に待っていそうな気はする。
でも、本性が戦国武将な空魚のこと、単なる対話で済むとは思えず。
最終的には裏世界そのものを乗っ取りそうな気がするんだよな。例えば、まともな人間の意識を持ったまま、自力で裏世界へのゲートを作る能力を身につけてしまったりだとか。それくらいはやれるようになりそう。
鳥子は鳥子で、例えばDS研の患者さんを治せるようになりそうな気がした。
るなは…‥できることの可能性が大きすぎてまだわからない。今回の大活躍は本当に驚嘆しました! キミ、本当にすごい子だよ! 自信、持ちなよ!
まあ、全部、完全になんとなくだけどね。
この小説がRPGでクリアレベルが45〜50、レベルマックスが99だとしたら、今回、空魚も鳥子も少なく見積もってレベル30くらいまでは来てしまったんじゃないか、っていう感じはした。3話入りで1冊だったけど、1話目で既に。なんというか、裏世界のプロとしての貫禄のようなものを感じたので。ファミコンドラクエ3でいうところの、バラモスを打倒してのアレフガルド発見のあたりまでは来ていそうに思った。あれもある意味で裏世界に落ちる話だし。
だいぶ前の巻で、小桜さんを花に変えたようなこともあったし、やっぱり空魚ちゃんは裏世界の王にいずれなれそうな気がする。あんなの、普通の人には出来ないからな。多分、鳥子にも出来ない。さつきさんレベルじゃないと。あとは別の意味では辻さんとか?
裏世界の王……それが本人の望みかどうかはわからないけれど。全てを探索し尽くしたら絶対つまらないしなあ。
ただ。
もしも空魚と鳥子、それからるなや小桜さんたちの活躍で、将来的に裏世界の制御システムができたりとかの無害化に成功したとしたら。
この小説の世界から不思議が無くなることにもなっちゃうなと。
これ、何も本作に限らずあることで。レベル99になってしまった後のRPGでは、もうやることがなくなった感覚。
まあ、そこまでは無理でも、自分の力の限界まで来てしまったあとの虚しさ………みたいなもの。
それが来たらこの子たちはどうするんだろうなと。
そこまで果てが浅い世界ではなさそうだけれど。
やることがある状態が続くことを求めるあまり、レベル99をリセットして最初からやり直すゲーマーの人がいたりするけれど。そういう裏世界ジャンキーにはなってほしくないな…。
さつきさんがああなっちゃったのは、多分、たった1人で無茶な冒険の末、レベル99以上を求めてしまった成れの果てじゃないかと思ってる。
空魚にはせめて正気の人間でいてほしい。マジで。じゃないと作者さんが物語を綴れなくなっちゃいそうだし(メタ発言)。丸々1冊が異言の小説になっちゃったら、現世で読める人はいなくなってしまうから。見てはみたいけど……実際問題、売れなくて困るだろうな。
鳥子と小桜さん、るながアンカーであり続けられますように。前巻の膝枕事件って、あれはるながアンカー役だったもんなぁ。るなは懐の深さに誇りを持っていいよ! 贖罪は分かったから、もうこれ以上の無茶をしないで、元気を出してほしいな。本当にご自愛くださいよ。
さてと。
前巻では鳥子、今巻はるなのバックグラウンドがかなり掘り下げられた。
空魚も前に振り返ってはいるみたいだけど、あの「赤い人」事件のこと、もう少しきちんと解明しておいた方がいいような気がしている。
あれ、どう考えても裏世界案件だし。
無意識に灯油を用意させられて、それが不思議なことでもなんでもなく当然のことだと思っていて、あるタイミングが来たら火を用意して着火しようとまで思っていた……。
いや、絶対おかしいから、それ。
それから、普通の人にはドッペルゲンガーはいないからね。空魚には当然でも。
普通の人になれって話じゃなく。空魚が特殊な、なんというか【そういう人】なのはわかるので。
ただ、逃げずにもう少し解明はしておいた方があとあと良いような気がするってだけ。特殊なのはもうどうしようもないしそれはそれでいいから。
彼女は自分自身にもファーストコンタクトをやっておいた方がいい。心の奥の事情が他の人には説明できなくても、鳥子(超重要!)と読者(さらに重要!)にだけは共有してくれたらいいからさ。
読者としちゃそう見える。
鳥子と出会う前の記憶があまりないって言っていたのも気になるし。バディが見つかって人生がハッピィです、っていうシンプルな話とはとても思えないから。
人の気持ちが分からないというか、前巻から語られている恋愛や家族愛への疑問っていうのも、普通の人とは違いすぎる。
これは特殊な家庭環境だったからっていう育ちの問題だけだろうか? 本人の素養にも思える。
もしかして、空魚は裏世界から生まれて来た人間なのでは? 霞ちゃんとは別の意味で。
ううう、このストーリーについては書き始めると尽きないけれどこの辺でいったん筆を置きます。
いやもうマジで、9巻、本当にすごい世界でした。
具体的なネタバレを控えても感想がこの分量ですからね。
次巻には空魚についての話も改めて期待したいです。
彼女は本当に何者なんだろう?
何故、怪談(というより実質的に裏世界)に対して同担拒否になっていたんだろう?
こんなに主人公に謎が多い作品も珍しいわ。
というわけで、繰り返しますが今ならタダだから。不思議に出会いたいそこのアナタ、とりあえず1冊おためしを……!
P.S
コミックス版も楽しいですよ!