コンピュータシステムの基本からのPostScriptの説明

今週の大仕事は、週末にあるDTP検定(II種)の対策講座です。うちの学生さんで、DTPの授業を前期に履修して小冊子作成課題を作った人がメインの対象です。やったことがないと辛い話ですし。

月曜から金曜日の3時間×5日間で、広い広いDTPのお話を一気に説明しなくちゃいけません。
といっても、CG検定と違って、教科書外のお話が余り出ない試験なので、その辺は助かります。
DTPの現場の状況をシミュレートして、このトラブルの場合はどうするのが適切か、とかやります。


パソコンが使えれば受かる試験じゃないのも特徴的です。折丁やそこからできる台割表(書籍全体のページの組み方表)などは、手を動かして紙を折ってみて、はじめて納得できる部分も多いですね。あと、カメラの基礎知識なども必要だったり。日本語としての組版ルールや、校正記号なども出たり。色の三原色の話(CMYK)とかも。
つまりは、そういったデザイン・印刷の基礎知識とともに、コンピュータを印刷物を作成する道具として使える広範囲な知識、判断力、が必要な試験です。15時間で消化するのは無謀なのですが、何とかやっています。


なお、3時間もぶっ通しで聴くのはつらいので、90分で休憩入れています。話す方もつらいし。
それから、できるだけ手を動かし、頭を動かして、視覚とか声でも理解できるようにしてあげたいと思っています。なかなか難しい。
公式みたいに暗記する物は少ないのですが、ワークフローの流れやデザイン的な思考回路を構築しておかないと合格できない。


今日のメインとしては、コンピュータシステムの基本から入ってPostScriptの説明です。さっきまでやっていました。


まず、分解して中が見えるようにしたパソコン、ふたを外したハードディスクなどを見せて、電源からマザーボードにつながって、ハードディスクに電力が供給されて、CPUがここにあって、メモリがささっていて、とかグラフィックカードがささっていて、という部品の接続のお話をし。

それから、Mac OSDTP三種の神器PhotoshopIllustratorQuarkXPress)のマニュアル本をそれぞれのアプリケーションに見立てて、ハードディスクとメモリのはたらきを説明しました。


ハードディスクは机の引き出し、メモリは机の上とはよくいわれます。


Macの電源を入れると、机の引き出し(に見立てた段ボール箱=ハードディスク)からMac OSが呼び出され、机の上に本が開かれる。(OSが読み込まれた、の意味)さらに、Photoshopを使いたいので、机の引き出しからPhotoshopを取り出して机の上に広げる。さらに、画像加工をしながらレイアウト作業をするために、Illustaratorを取り出して広げ……とやろうとして、机が狭かったので、これ以上広げられない。(メモリ不足)そこで、大きな机を追加したり(容量の大きなメモリを足す)大きい机に交換すると、余裕でIllustratorをも開けます。さらにQuarkXPressもいける。


さて、メモリを交換したので大きな作業ができます。そこで、大きなポスターを作って、それを保存しようとしたら、今度は机の引き出し(に見立てた段ボール箱=ハードディスク)が狭すぎたので、保存できない。メモリは通電中のみデータを持っておけて、ハードディスクは電源を切ってもデータを覚えていてくれるから、保存という作業=メモリ上(机の上)で作った物を引き出しにコピーしてしまう作業、が必要ということ。でも、容量が小さいハードディスクならば、保存できないということも起こってしまう。
この場合は、引き出しを増やしたり、もっと大きな机の引き出しに交換すればいいですね。ハードディスクの増設や換装というわけですね。


それから、もっと写真を青くしたいとか人間がPhotoshopで指示を出すと、CPU(コンピュータの脳みそ)が色を計算して、100%に青く(シアンに)するとこんな感じです、と作ってくれる。CPUの処理速度が速い程、DTP作業も速くできますが、高いパソコンになってしまうので、予算と機能を考えてパソコンを選ぼう、ということですね。


ところで、先程見たように、マザーボードのグラフィック機能でパソコンの画面に描画させると、場合によってはマザーボードが大変な思いをするので、グラフィック専用カードを買ってきてマザーボードにつないであげると、分業できて楽に快速になるということがあります。このように、作業は、部品ごとに分けてあげれば楽ができる。この考え方からうまれた印刷の為の仕組みがPostScriptです。


印刷物に載せる物は、文字と画像です。文字のためのPostScriptがPSフォント。画像の為のPostScriptがEPSです。
授業でWebの仕組みを習った時にやったように、ものを画面に表示するだけならば、解像度72dpiという品質があればこと足ります。マックの画面上では荒いものでOK。
一方、印刷用にはたびたび授業でやったみたいに、高画質な写真などでは300dpiのきめ細やかな画質が必要です。文字もきれいに出せた方がいいわけです。
で、マックの側には、画面表示の為の荒っぽいフォントを入れておき、そのフォントを指定した時、印刷するとこの印刷用PSフォントを使いますよ、と設定しておきます。PSプリンターは賢く、PSプリンターの中にもコンピューターが入っていて、文字フォントをインストールしたりできる。こっちのフォントは高品質にしておく。そうすると、画面にものを表示するという仕事と、デザインした物を印刷するという作業を分けてあげることで、全体が楽になる。
同じように、画像の場合は、EPSに画像を変換すると、1つのファイルの中で、画面表示のための荒っぽい画像と、印刷用の細やかな画像の2種類ができます。で、EPS画像の印刷指令をPSプリンターに出すと、PSプリンターはきれいな方の画像を読み取って印刷してくれます。ただし、もしもこのとき、間違ってPSではない普通のプリンターに印刷指令を出してしまうと、画面表示のための荒っぽい画像しか印刷してくれません。商業印刷の世界では、PostScriptに対応したシステムを持っていることが大前提なので、このことは問題になりませんが、注意は必要です。


……というお話。それから、台割表と折丁の関係の確認、印刷物のレイアウトの基本や、それに応じたラフスケッチの描き方などをやりました。中綴じの場合の折丁と台割の考え方は慣れないと難しいので、教科書の台割表から、4種類の白紙を折って重ねて模型を作ってみたりしました。
このように、アナログとデジタルが交錯するのが、DTP検定における一つの特徴。この試験をきっかけに、マックやパソコンを好きな人が増えるといいなと思います。