あずけてみなければ分からない時代に。

はてな紹介の「経済羅針盤」、見ていました。この番組には以前、私にもメールで取材があったんですよね。はてなアイデア人力検索はてなで他のユーザーさんの人助けをさせていただいている立場からして、はてなの使い勝手の感想をアレコレお寄せしました。番組には紹介されていませんが、取材段階でそれなりにお役に立てていただけたのではないかと思います。


さて、近藤さんの寝起き顔から始まり、ダイエット日記で引っ張ってみたり、社長インタビューを徹底したり。色々工夫がありました。でも、やはり、使い始めてみないと、良さが分からないところがあるものです。
多分、人力検索はてなあたりも……一度使ってみないと、分からないモノだと思うし。「良い答えがもらえるの?」「人に聞くのは恥ずかしい」とか。結構、使えると思うんですけどねえ。
はてなダイアリーもしかり。キーワードリンクをうるさいと思うか、楽しいと思うか。書いている立場からすると、見た目ほどうるさくはないのですよね。思わぬリンクが貼られて面白かったり、辞書になっていて便利だったりします。
そういうところは、何となく任天堂のゲームに似ている気がします。グラフィックスよりもゲーム性に凝っている作品が多い分、遊んでみないと面白さが分からない、っていうか。


まあ、web2.0とかって言うから難解さとか抵抗があるんで。「三人寄れば文殊の知恵」のでっかい版サービスが、インターネットのあちこちで安く(あるいは無料で)受けられるようになって来てるよ、というのが私の認識。多分、それほどまちがってないと思うんですよね。集合知も、googleも、ロングテールも、ブログも、SNSも、みんなこれで説明できると思います。
画面の向こうにも、それなりに信頼できる人がいる事を信じること。たいていの人は善良な市民なんです。


昭和の頃までは、ある意味で「英雄」が多かった時代だったと思います。だれかヒーローがいて、それに引っ張られるようにして時代が動いて行った。そういう現象がスゴく多かったんじゃないかと思うのです。
平成になって、15年以上経って、ようやく「市民」の時代になって来たと感じています。今の時代に求められる資質は「独裁」とか「オレに付いてこい!」じゃなくて、「皆の意見を聴いてみたい」だと思う。それでいて、しっかりとした羅針盤がある人。そういうのが今の時代に求められるリーダー像なのではないかと思うのです。


そういえば、はてなと関係ないですが、スタジオジブリ宮崎駿監督の息子さんの吾朗監督の映画の作り方をジブリの公式ブログで拝見していて、技術的骨格はジブリイズムでいながら、こうも違うものかと……。絵コンテを切るところから壁に貼って公開制にしていた吾朗監督の方法論は、ある意味オープンソース的な感じで。まだ「ゲド戦記」は見に行っていませんが、映画の創り方自体はこれから映画を作ってみたい人には、一つのケースとして参考になりそうでした。
ヒーローがいなくなったときに、引き継いだ者ができることって、そのヒーローが遺した物をみんなでよってたかって集め直して創る事ではないか? カリスマ性は落ちるけれど、メッセージは伝わり続けて行くのではないか? と。そう思えるのです。
別のケースですが「大長編ドラえもん」の藤子・F・不二雄先生没後のスタッフに依る原作を読んでいても思えるのですよ。面白さでオリジナルを越える事が出来ていないとは思うけれど、その分、メッセージ性の強い作品が増えた気がして(伝えようと思いすぎて、ユーモア的レベルが下がり、生真面目に濃くなりすぎているきらいもありますが。ユーモアは天性のものが必要だと思います)。


サッカー日本代表の監督交代劇を見ていても、二人の監督の手法の違いでそれを感じました。
最終的には個人技を重視したジーコ監督。
走る事、早い判断を求めつつも、作戦は選手同士で考えて行くことを重視するオシム監督。
お二人とも基本的には選手に任せるスタイル。でも、ベクトルが異なります。
奇しくも、中田英寿選手が引退する直前に「サッカーは一人では出来ないんだね」と悟るように語ったと言いますが、そういう事かもしれません。


「インターネットは知恵の銀行だ」と近藤さんは語っていましたが、どの銀行でもあずける時にはそれなりにリスクを覚悟しなくてはなりません。
リターンされる利子は、リスクに見合った物になるかどうか、やってみなければ分からない。弊害ももちろん予想されます。
しかし、考えてみれば「やってみなければ分からない」の繰り返しで人類は進化して来たんです。


サルからヒトに進化するとき、多分一番決断が要った段階は、「木から平地へ降りるとき」だったのではないかと想像しています。次が火を手にしたとき。そして、知恵をコミュニケーションする「言語」が生まれ、ヒトは戦いと対話を繰り返してここまで来てしまった。
全部、「やってみなければ分からない」だったと思うのです。
最大の失敗は二度の世界大戦。そして、環境破壊。リターンの割にはリスクが大き過ぎ、それらは、経験してみなければ分からないところもありました。アスベストを発明したヒトは、病気になる事まで考えていなかったと思いますし、フロンガスの発明で、まさか南極のオゾンホールの原因になるなんて思ってもいなかったでしょう。
しかし、そういった「大きすぎるリスク」が判明したとき、話し合いを行い、然るべき処置や意見を吸い上げるシステムが整備されていたら? 今ほどの大問題にはなっていなかった気がするんです。


これからも色々と問題は起きて行くはずです。しかし、これまでとは違う可能性が出て来ているのが「web 2.0」だと思えます。ようやくにして、不特定多数の意見集約システムらしきものが出来つつある。この動きが、人類の知的進歩に伴うリスクを少しずつ下げて行けるのではないかと思えて仕方がありません。


今の時代は、問題があれば「三人文殊」で直せるようになって来ています。他人を信じて、あずけてみる勇気と決断力が、今の時代の処世術になって来ています。
あとは、ヒトとしてそれなりの誠意と責任感を持って、始めてみることが何より大切な気がします。もちろん、先に始めているヒトが、あとのヒトのために、参加しやすい状況を作る努力を怠ってはなりません。
(その意味で、この番組ではネット専門用語を一切使わずに話して欲しかったと思いました。ちょっと難度が高い部分があったので……。はてなブックマークについてとか。)